終戦のローレライ(2) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749718

感想・レビュー・書評

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  • ローレライの回収に成功し、《彼女》の正体であるパウラとフリッツの関係、そして2人の過去が明かされます。そこは想像を絶する世界で、単一民族の歴史しか知らない日本人にとっては思いもよらないものでした。けれどそれを知ることによって、フリッツが何度となく口にする「恐怖が支配する世界で生きてゆくためには、自分自身が恐怖になるしかないんだ」との言葉の重みがひしひしと伝わってくることになりました。彼らが生き延びるための道はそれしかなかったのです。
    わたしには、単にフィクションの世界だと割り切れないのです。本当にこんなことがまかり通っていたとしてもおかしくない、戦争とは人間を狂気の沙汰に追い込んでいくものなんだと思うのです。
    そんな中、征人は大人たちの無力さ、脆さに戸惑い腹を立てます。大人たちは、軍人だから、戦争だからという理屈にしたがっているだけで、自分の行動に何ひとつ確信を持てずにいるのではないか。征人は考え、怖れずまっすぐに大人たちに伝え、自分の守るべきもののために行動を起こします。パウラという守るべきもの、自分の命と引き換えにしてもいいと思えるものが見つかった征人は、矛盾するかもしれませんが決して命を無駄にせずこれから必死で生きていくと思います。
    フリッツにあっても、パウラを人間として扱ってくれるこの艦の乗組員と言葉を交わし、戦いを乗り越えるうちに、人間的な感情が戻りはじめてくるようです。だけど、彼らの行く末は困難を極めこのまま平穏無事にラストを迎えることは出来ないでしょう。だから、余計にフリッツの彼らに対する気持ちの変化が嬉しいのに何だか切なくなってしまうのです。

  • まだ前半を読み終わったところだけど、登場人物それぞれがいい味を出していて、その男っぷりに惚れてしまう。
    最終兵器ローレライを回収後、しつこいアメリカ人に攻撃を受けつつも、絹見の思い切った戦略で、見事回避。
    後半も楽しみ。

  •  そもそもこの物語を読み始めたときには、「ローレライ」を回収するという物語かと思っていたが、この巻でそうそうにローレライは回収してしまった。そして追手の目をかいくぐりながらローレライを運んでゆく展開。登場人物のそれぞれの過去が丁寧に語られてゆく。

  •  本巻は第2章・第3章を収めている。
     私はこの小説が原作となった映画「ローレライ」を見ていないが、潜水艦の構造などはやはり映像で見たほうが分かりやすいかなと感じる。文章からは緊迫感や戦闘シーンなどは読み取れるのだが、いかんせん細かいところになるとイメージがわきにくい。挿絵でもあればまた少し違うのかもしれないが。
     本編を読むと、誰のための何のための戦争だったのだろうかと改めて思う。戦争責任とはそもそもどういったもので、誰が負うのか?それがただ巻き込まれた国民が負うべきものなのか?
     ただ、この第二次世界大戦の引き金になったナチスの台頭には、第一次大戦で莫大な賠償金を課した側にも遠因があるようにも思う。
     本巻は戦争責任について考えさせられた。

  • 「ローレライ」の秘密とその“力”が明らかにされた、文庫第2巻。

    作中日時、1945年7月30日午前…。
    学校で習った“史実”を知っているだけに、物語がこのあとどういう方向に進むのか、非っ常~に気になるところ。

    ★4つ、9ポイント半。
    2014.10.12.了。

    フィクションである。
    “ローレライシステム”も、完全にファンタジーである。

    しかし……

    作中の“強制収容所”の描写にはそう大きな脚色が加えられているわけでもない、という程度の歴史認識はある。

    ならば……
    同じく作中の

    “生命の泉”は?
    “白い家”は?

    荒唐無稽ではあるが、ありえそうな気も……。
    実在するのか?しないのか?

    ……おそるおそる、調べてみよかな。

  • 2004年(第1回)。第8位。
    確かに潜水艦といえば海の中で、湿気むんむん、気温も高いのだろう。トイレはくさいわ、どこもかしこも機械音でうるさいわ、大変な環境である。
    兵器ローレライの全貌が明らかに。フリッツ兄妹のドイツでの過去も明らかに。戦艦モノとはいえ、女子がいないとね~ そして淡い恋心・・・。しつこいアメリカ人に追われる伊507。ここでも潜水艦の修理完了とともに犠牲になった乗組員が。昭和20年7月30日。

  • 昔読んだ本

  • 遂に明らかになったローレライ。到底無理と思われた回収から、「しつこいアメリカ人」との死闘。そして、究極の状況で明らかになる人間性。読み応えのある前半だったが、これから終戦にどう関わっていくのか。エノラ・ゲイが広島へ向かうまであと1週間・・・

  • とうとう「ローレライ」の正体が明らかに。
    圧倒的な潜水艦戦闘の描写。
    謎の男フリッツ少尉の過去。
    時に1945年7月30日。
    原爆投下まで1週間。
    「ローレライ」は終戦にどう関わっていくのか。

  • やっと面白くなってきた

著者プロフィール

1968年東京都墨田区生まれ。98年『Twelve Y.O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年刊行の2作目『亡国のイージス』で第2回大藪春彦賞、第18回日本冒険小説協会大賞、第53回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2003年『終戦のローレライ』で第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞を受賞。05年には原作を手がけた映画『ローレライ(原作:終戦のローレライ)』『戦国自衛隊1549(原案:半村良氏)』 『亡国のイージス』が相次いで公開され話題になる。他著に『川の深さは』『小説・震災後』『Op.ローズダスト』『機動戦士ガンダムUC』などがある。

「2015年 『人類資金(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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