新装版 天璋院篤姫(下) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062756853

感想・レビュー・書評

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  • 島津家の分家から島津宗家の幼女となり、13代将軍家定の御台所となった篤姫。家定亡き後も大奥3000人の女中を見事統率し、幕末の動乱のなか最後まで徳川家の再興を願って婚家に尽くした。政治の駒になり時代に翻弄されながらも、ちから強く生き抜いた女性の運命を、宮尾登美子氏が流れるような美しい日本語で描きます。武士顔負けの篤姫の潔い生きかたは、ドラマも良いですが、ぜひ原作の文章で味わっていただきたい。

    女性が自分の道を決められなかった時代です。身分の高い家に嫁いだ若いむすめが、未亡人となったのちも嫁として姑としてもんもんと苦悩するなんて、なんとも陰湿な話になりそうですが、やはり宮尾登美子氏の文章は面白く、主人公のやるせない思いとか可哀想なほどの健気さが、何一つ実を結ばないまま彼女を取り巻く状況にうわぁぁぁっと押し流されていく様子がありありと感じられるうちに、いつのまにか物語に惹き込まれてしまいます。

    見どころは小説の終盤、篤姫が、実家薩摩とたとえ敵になっても徳川家を守るという使命感で腹をくくる場面かと。

    このことは菅野美穂主演の「大奥」では、徳川家に嫁ぐ前までは想いを寄せあった幼なじみが江戸城開城のおりに迎えに来ても、生涯を通して故郷薩摩に戻ることは無かったというシーンに表されていますし、本書では、薩長が江戸城に攻め入る噂を聞きつけて恐れおののく女中たちに向かって、自分は実家と婚家が戦火を交えようとも徳川家を離れはしない。「これが真の女の道であることはいまさら申すまでもないことじゃ」と言い放つ件に集結されています。ここまで篤姫が凛々しいと、読者もひと昔前の女性は気の毒うんぬん言う気も失せ、彼女の意志の強さにひたすら感服することになるでしょう。

  • 本の方が詳細ですが、好みは大河ドラマの方が好きです!

  • 篤姫、激動の時代を生き抜いたんですね。
    そして篤姫が嫌っている徳川慶喜、なんだかかわいそうになりました。
    大変な時期に将軍になったのね、と。

  • 天璋院篤姫の真骨頂が描かれている下巻は、日本の分岐点幕末明治維新の中で、篤姫がどのように生き抜いたかを激しく読むことができる。
    篤姫の歴史的意義を考えさせられた。

  • 関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40074915

  • 宮尾登美子先生の書かれた長編小説「天璋院篤姫」の上巻、下巻を約3週間で読み終わりました。大変 面白く、 毎日夜1時間から2時間の読書が楽しみになりました。
    先生が大変多くの資料を集めて、綿密な調査の上に書かれたということに大変感動しています。
    私の感動ポイントは下記です。

    (1)この小説の構成がすばらしい。
    幕末から明治維新にかけての 小説ですが、将軍の御台所として女性の視点から、大奥からの将軍家の状況を見ていて、時代の史実に忠実に従いながら 篤姫の心の内をまるで本人が思ったかのごとくに 書く作者の手法に大変感動しました。
    この小説の構成が大変良くて、6節で構成されています。それらは下記です。
    上巻は
    ①まず薩摩を出る時の話
    ② 将軍の嫁入りする前後の話
    ③第13代将軍家定の子ができるかできないかという 跡継ぎの話
    下巻では
    ④自分の頼みとする家定が亡くなる話
     第14代将軍家茂の嫁さんとなる、天皇の妹、 和宮 が降嫁する話
    ⑤ 徳川幕府が崩壊した時の混乱 ぶり
    ⑥最後に篤姫の余生の話
    どの節も 次のページが楽しみ な構成でした

    (2)現代にも通じる武士道がテーマで素晴らしい
    薩摩の出身の 天璋院篤姫は男だから武士ではないが、 武士道を 最後まで保った女性だったということがよく分かりました

    その武士道 を育んでくれた お付きの女中の描写があって、今泉家では 菊本 、 鶴丸城 、江戸城で幾島、 さらに江戸城で 滝山とか 唐橋などが篤姫との確執や各種の軋轢がありながらも、篤姫についていく。幕府崩壊後は重野 が残って、その問わず語りに 武士道の精神を教えられ 教えたりするということです。

    別の観点で言うと 篤姫は嫁いだ先が自分の全てであると思って、幕府崩壊も自分の故郷である 薩摩からの援助申し出に対して 首を縦に振らず、自分は徳川家に尽くし、今後の徳川の復興のために 第16代将軍となるべきだった人の養育に全力を捧げる。
    そして自分が死んだら 徳川菩提寺である上野寛永寺に葬ってくれと遺言を残す。 更に、第15代徳川慶喜に対する嫌悪感は続いていて、その家系のものとは絶交し、今後の 嫁さんは 薩摩から入れよということを遺言として残したということで やはり 1人の武士だと思いました。

    特にこの時代に照準をあわせながら、実は第二次大戦後の日本の男たちに武士道の欠如があり、気概のある男がいないということに作者は鐘を鳴らしていたとも思います。

    (3)幕末史の理解が進み、明治以降の近現代史に興味がわいた
    自分が今まで、読んでいた西郷隆盛とか松平春嶽を主人公とした時代小説はあくまでも男の視点から表の状況からの話だったが 、この著作により大奥からみた状況を時代背景として、出来事を合わせることにより、理解が進んで自分の知識となりました。
    幕末の徳川家将軍であった徳川家斉、徳川家治、徳川家茂そして 徳川慶喜 、さらに 第16代の将軍とならなかった徳川家達の関係が色々な事件とともによく理解できました。

    そういう中で私の心の中で変わったところは
    ①島津斉彬に対する少しの失望
    篤姫は 薩摩の島津斉彬の養女になって、第13代将軍家定の御台所として嫁ぐわけですが、その斉彬の野望のために、家治には子供ができないと見越して、次の将軍には徳川慶喜を盛り立てて 将軍としてやらせなさい、 つまり政略結婚をさせたことことの是非がどうだったのかです。

    ②慶喜に対する失望
    天璋院が、徳川慶喜を徐々に嫌いになっていく様についてすごく面白かったです。
    既存の知識では 徳川慶喜は大変立派な将軍だったという思いでした。しかし、この本を見て篤姫 と同じように自分も評価を変更しました。

    (4)篤姫の統治管理が素晴らしい
    篤姫の行動規範が大変参考になりました。
    これらはまさに現在のビジネスの状況においても同様なことが言えると思います。
    ①自分の方から アクションを起こして行動
    「泣こかい、跳ぼかい、泣くよっきゃひっ翔べ」という薩摩のことわざがある。
    自分が苦しい時には泣くのではなく、物事にチャレンジして向かって行けと、そうすれば、道は開けるということを 教えています。篤姫はこれを地で行ったのではないかと思います。
    ものごとが、膠着してなかなかうまくいかないような時には、自分の方から率先して相手と交渉するとか、相手に向かって行って自分の方から アクションを起こして行動することです。待ってばかりだと機を失います。
    結果的に相手と仲良くするとか、事態が打開することになるので、大切だということを教えられました 。

    ②運命を受け入れ、上司に仕え、部下を統治する
    女は嫁いだ先の目上のものにしっかりと仕えることが第一の道である。
    しかし、奉公人にもよく目をかけて上手に治めていくことがそれと同じくらい大事なことだということです。
    上長をフォローし、部下を統治する心構えということが伝わってきます。

    ③一方を聞いて 沙汰をするな
    もう一つ 大事なことは一方を聞いて 沙汰をするなということです。
    当事者 2人がいる場合にどちらか一方からの話だけを聞くだけで、対応するのは良くない。必ず両方から話を聞いて対応を図るということが学びになりました。

    ④意識して相手をたてる
    篤姫が 和宮 に対して気をつけたこととしては、どんなに京都方と 諍いがあっても、このときだけは、自分の方は我慢して相手の言うことを立てるということが大事だと決断したこと です。篤姫の勇敢さを感じました。



    以上が感想です。
    追記すると、東京に行った際には 篤姫の墓所は上野の寛永寺に葬られているということですが、そこも含め、いろいろな篤姫 ゆかりの地を回るワンデーツアーをぜひやってみたいと思うようになりました。
    また、鹿児島では、篤姫関連の史跡の見学ができればと思っています。
    素晴らしい本を書いていただき、ありがとうございました。

  • 主人公の心のさまや、女性からみた視点の描写は、宮尾さんらしく、とても素晴らしかったのだが、歴史に詳しくないので、ついていくのに必死でした。

  • 結構読み応えのある文章で読み終わるのに時間がかかった。下巻は14代将軍への代替わりから晩年まで。ほとんど詳しいことは知らなかった天璋院篤姫だが、大変な生き方だったんだ。私ならとても耐えられないわ。まあ、コミュニケーション不足は多々見られるけど、この時代じゃしょうがなかっただろうとも納得する。実際はどうだったんだろうねえ・・・

  • 彼女の名前しか知らなかった「天璋院篤姫」
    自分の運命を受け入れつつもこんなにも力強く、賢明に生き最後まで「徳川の女」としてその生涯を全うしたのは、この人だけではないでしょうか。
    養女として、御台所として、そして1人の女として
    篤姫という人物が生き生きと映し出されていて、とても面白く読めました。

    読了してから数日経っていますが、こんなにも心に残る書籍は久しぶりです。出逢えてよかった!

  • 下巻は13代将軍から代替わりするあたりから始まり、公武合体、皇女和宮を嫁に迎える話に続く。天璋院の姑としての心構え、振る舞いに敬服する。時代考証に諸説あるとは思うが、一本筋の通った方だったのだろうと思う。

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著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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