- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062759557
感想・レビュー・書評
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『灰色の北壁』
【全体】
ホワイトアウトの真保さんの短編集「3」作品です。いずれの部隊も装丁の通り「山」です。この山の描写が迫真に迫ります。読者に向かって吹雪がたきつける臨場感のある小説です。
【物語】
①山岳救助隊
40代半ばの山岳救助隊です。学生時代、山岳部に所属です。友人/ライバルと冬山に挑み、遭難します。彼らは1名の山岳救助隊に助けられました。
山岳救助隊が若い登山家に語った一言とは・・・。
②登山家
世界で名高い山の登頂に成功した2名の登山家が主人公です。2名のいずれも登頂を証明するための写真を撮影します。
同じ山頂ならば、その写真の光景は類似するはずです。しかし、そこに「差異」がありました。どちらかが真の山頂ではなかったことに。。。真相は?
③父親
息子が遭難し帰らぬ人間に。妻にも先立たれた父親は、3回忌に息子が挑んだ山にトライを試みます。
50代の父親にとっての冬山は、訓練したとはいえ想像以上に厳しいものでした。しかし、彼はそれが心地よくもありました。
父親は、息子が挑んだ冬山に一つの「誓い」をたてて登ります。その誓いとは?
【読み終えて】
物理的な山は見える存在です。無になることができる環境です。一方で、精神的な山(壁)は見えない存在です。精神に向き合うとき同じく無になります。
いずれの山も上るか?降りるか?は決めるが自分です。
また、どのルートを選択するか?も同じく自分です。
「3」作品を通じて、見えない山(目的、課題)にもっと出会いたいと思える自分に気づきました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
羆は二つの話が同時進行してるみたいに見せてそうじゃなくてって手法が好きだったな。やっぱ夢破れた男がその後どう生きていくかって話も好きで。
灰色の北壁はこれもまた凄い話。どっちも男らしいな。
最後の息子を失った父の話ね。生きるってことをまた考えさせる話でした。
実際にそんな山登ったことないらしい著者だけどそこはやっぱ取材がしっかりしてんですかね、何が楽しくてと思ってた登山にちょっと興味を持ちました。 -
新田次郎文学賞を受賞した本格的な山岳ミステリー集。
ミッドナイトイーグルやホワイトアウトなど、雪山というと冒険・アクションというイメージがあるが、この灰色の北壁は、ミステリー満載。3作の短編が収録されているが、どれをとってもとてもおもしろく引き込まれるので一気に読める。 -
3作の短編で構成されている山岳小説集。
1.黒部の羆
2.灰色の北壁
3.雪の慰霊碑
どれも熱く山を愛する山男のMな物語でした。
短編作品なんですが繊細に構成されていて長編作を読んでいるみたいによかったです。
最初は山用語が多くわからないところがしばしばありましたが
そんなのは関係なく心で分かち合え!的にさえ思えた(笑) -
短編だけど、久々にぐっと心に響きました
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真保祐一の描く男と山。
山、また登りたくなりました。
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私は知らなかったがホワイトアウトを書いた著者が
実は山の経験がないのに評価されたことに歯痒さを覚え
自ら登山の経験を経て書いたという小説
三編合わせて傑作と言うべき出来になっていると思う
良いときの横山秀夫のような、男たちのドラマがある
三編とも、出てくる男たちは傷ついた後、尚も熱く血を滾らせる
そして冷たい山へ向かう
読むだけで熱い気持ちが高ぶる小説
でもそれだけじゃない、この著者らしい綿密な取材によるリアルと
意表を突く話の展開(得意のパターンもあるけど)
まだ真保 裕一を読んだことがない人に勧めたい一冊 -
2008/1/20 アシーネダイエー甲南店にて購入。
2013/6/7〜6/10
第25回新田次郎賞受賞作。図らずも、五年積ん読状態で有ったが、その間にすっかり山好きになったことを思えば、良いタイミングで読めた。「黒部の羆」、「灰色の北壁」、「雪の慰霊碑」の三編。どれも甲乙つけ難いが、やはり表題作がベストかな。また、読み返したい短編達だ。