- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062766302
作品紹介・あらすじ
重松清のすべてがここにある。渾身の長編小説
平凡だけど、幸せな日々だった。これからもずっと幸せでいられると信じていた。
丘の上の遊園地は、俺たちの夢だった――。肺の悪性腫瘍を告知された39歳の秋、俊介は2度と帰らないと決めていたふるさとへ向かう。そこには、かつて傷つけてしまった友がいる。初恋の人がいる。「王」と呼ばれた祖父がいる。満天の星がまたたくカシオペアの丘で、再会と贖罪(しょくざい)の物語が、静かに始まる。
感想・レビュー・書評
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上巻を読み終えた感想は、「すごい」でした。
正直、第七章までは、「あれ?これ散々風呂敷広げてるけどちゃんと収集つくのか?ちゃんと盛り上がるの?」って不安に駆られましたが、第八章から重松清さんが本領を発揮し始めます。(第八章まで300ページくらいかかります笑)
主人公シュンの幼馴染、雄司が優しくて、作品の良心だなって思います。
特に雄司が悲しみについて、語るシーンがストンと落ちてきて、ここを読むだけでもこの作品に出会えて良かったなと感じました。
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悲しみは、二人いれば何とか耐えられるんじゃないか。
悲しみを分かち合うとか、半分にするってことではなく。同じ悲しみを背負ってる人がそばにもう一人いれば、押しつぶされるぎりぎりのところでも耐えられそうな気がするんだ。
絶望とは希望をなくすことじゃない。もう誰ともつながれなくなること。
誰かのためにとか、誰かと一緒にとか、そういうのを全部奪われちゃうことなんだ。
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非常にいい場面で下巻に続いていて、この先がものすごく楽しみです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
癌ので亡くなる設定と、出てくる女性達にあまり共感出来ず。ただ、やっぱりどんどん読み勧めたくなる。行った事の無い知らない場所でも、読んでいるだけでそこに自分もいるような気持ちになる。
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テーマは「ゆるす」こと「ゆるされる」こと。
友情、家族愛、背負ったもの、そして生と死。
本書は電車の中では読んではいけません。
上巻です。
過去に炭鉱の町として栄えていた北海道の北都という町で育った小学生の幼馴染の4人「トシ」、「シュン」、「ミッチョ」、「ユウちゃん」
ストーリは、この4人が名付けた「カシオペアの丘」に遊園地を作りたいと夢を語るところから始まります。
30年後、トシとミッチョは夫婦となり、トシは市役所の職員としてカシオペアの丘の赤字遊園地の園長。
ミッチョは小学校の先生ながら、遊園地の手伝い。
さらにトシは車椅子の生活です。
車椅子生活になった背景は前半では語られず、何かあったと思わせる展開。
シュンは東京で家庭を持ち、奥さんと小学生の息子と暮らしていますが、ガンと診断され余命宣告。
ユウちゃんは東京でテレビの仕事。幼女殺害事件の取材でこの遊園地を訪れるところから、この4人が再びからみあっていきます。
炭鉱の町だった北都を今も牛耳るシュンの祖父の会社「倉田」
過去、炭鉱事故で下された決断と悲劇。
炭鉱事故の犠牲者を見殺しにした祖父をゆるせなかったシュン
シュンが突然転校していった理由。
シュンとミッチョの大学時代の関係。
と、4人の過去、背景が徐々に明らかになっていきます。
いろいろ重い過去が、ガンの進行とともに語られていきます。
幼女殺害事件の取材でしりあった「ミユ」さんがとてもいい味出しています。
そして、やはり何か過去を持つ女性です。
下巻に続きます。 -
「ゆるしたい相手を決してゆるせずに生きていくひとと、ゆるされたい相手に決してゆるしてもらえずに生きていくひとは、どちらかが悲しいのだろう」
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下巻へ
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そうだったな。僕だってそうだった。学生時代は、おとなの存在など目に入らなかった。背広にネクタイ姿で会社に通うことが、ちょっと考えればなによりもリアルなはずの未来だったのに、それを自分と結びつけることはなかった。身勝手なものだった。人より図抜けた才能や強烈な野心があるわけでもないのに、ひととは違う人生を歩むんだと決めつけていた。ずうずうしかった。甘かった。若かった。すべてをまとめて、要するに、生きることに対して傲慢でいられたのだと思う。
まだたっぷりと残っている手付かずの未来を前に、今日をむだづかいしているような恋人同士の笑顔は、いつの時代の、どこの街でも変わらないのだと思う。
そんな日々は、いつか終わる。僕はそれを知っている。だが、いつか終わってしまうんだと知らないからこそ、いまがいとおしくなるんだということも、おとなになればわかる。
ゆるしたい相手を決してゆるせずに生きていくひとと、ゆるされたい相手に決してゆるしてもらえずに生きていくひとは、どちらが悲しいのだろう。 -
赤字続きで閉園間際の遊園地の園長トシとその妻ミッチョン。がんで余命幾許もないシュン。妻の不倫相手に愛娘を殺された川原さんと関わる雑誌記者のユウ。幼馴染の4人が再び生まれ故郷に集い、友人の死に向き合う。暗い内容に嫌気が差しそうになったが、一方で家族や友人たちへの愛がしっかりと描かれており、下巻でどう決着するのかが楽しみになった。
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重松清の真骨頂。
しつこいくらいにお膳立てを整えた、さあ下巻。