新装版 ムーミンパパ海へいく (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769389

作品紹介・あらすじ

かわいいムーミントロールとやさしいママ、おしゃまなミイにすてきな仲間たち。毎日が平和すぎてものたりないムーミンパパは、ある日一家と海をわたり小島の灯台守になります。海はやさしく、ある時はきびしく一家に接し、パパはそんな海を調べるのにたいへんです。機知とユーモアあふれるムーミン物語。

感想・レビュー・書評

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  • ムーミン一家が島の灯台に引っ越しする。この灯台はムーミンバレーパークにもある。ムーミンパパは家長として存在感を示そうとして空回りする。ここは古さを感じる。

  • 夏だ、海だ、ムーミンパパも海へ!という明るい話を期待・・・
    することもなく読み始めたが期待以上(??)に暗い。

    のっけからパパは不機嫌。
    夏の火事を心配し、コケに発生したボヤをママとムーミントロールが
    勝手に消したことに起こって不機嫌になる。
    やってきたモランをママが怖がらないといって不機嫌になる。
    で、島へ行く。
    灯台の鍵がなく、途方にくれる妻と子を前にして、
    面倒だからと隙間に入りこみ、寝る。
    寝て起きると事態がよくなることもあるから、といって。

    灯台に入ってもうまく灯台に火をつけられずにおかしくなるパパ。
    どうも不在のかつていた灯台守もおかしくなったようだ・・・。

    閉ざされた空間で親子3人(とミー)。
    うまくいかない仕事に不機嫌となり、
    どんどんおかしくなっていく父親・・・・って、「シャイニング」!?
    死と生の狭間にある島って、「LOST」?
    もっと悪いことに、お母さんもおかしくなっていく。
    薪を割って自分のまわりに壁を作る、台所の壁に描いた絵の中に逃げる。

    ムーミントロールは、心地のいい空き地を見つけたものの蟻がいっぱい。
    ミーに相談したら、ミーは油で蟻を虐殺。
    ひどいじゃないか、というムーミンに対し、ミーは
    「あんたはわたしがそうすることを知ってたくせに。自分をだますのが上手ね」と鼻で笑う。

    何この後味の悪さ、(まだ途中だけど)。

    ただ、どうしようもなくなったとき、ママが
    「なんだか危険が近づいてくる気がするのよ」
    「いますぐピクニックへ出かけないとなにがおこるかわかったものじゃないわ」
    と岩礁へと舟を出す霧雨の中のピクニックのなんとも終末感漂う心地よさ。
    ああ、世界の終わる日はピクニックしたい。

    そして、モランを灯台に近づけないため、毎夜、カンテラをもって砂浜におりるムーミン。
    最後、カンテラがなくても、ムーミンが会いにきてくれたことを喜び踊るモラン。
    コミュニケーションがとれるわけではなく、一方的なものでムーミンは理解できないけど、
    モランがすごくうれしそうでいい。この場面で電車の中で泣きそうになる。
    (五十の親父が!)

    ミーと漁師の関係について、ヤンソンさんが珍しく地の文で書いている。

    おたがいに相手をそういう人間だとみとめ、好意をもちながら、しかもおたがいに無関係という関係だったのです。おたがいに相手を理解しようとか、相手に印象をきざみつけようとか、めんどうなことを考えなかったのですが、それも一つの生き方ですよね。(142ページ)

    やっぱりヤンソンさん、いい。孤独バンザイ!

  • 家族で灯台のある島に移り住む話。
    思っていたより壮大な話だった。
    ふんわりした言葉で不思議なことが次々起こる。
    独特の世界観。
    最後の解説を読んだ時、深い話だなあと思った。

  • この巻は日本語がしんどかったなあ…
    やっぱりミイのキャラが好きだ。

  • 相変わらず不思議空気があり、わかりにくい…

    ただ後半のムーミントロールの変化と成長、パパとママの変化は興味深かった。
    ミィは嫌なヤツに見えて、1番まともに物事を見ていて、助太刀してくれる。特にムーミンたちはメルヘンな思考だが、ミィは読者も含めて切ってくれる。ちょっと好きになる。

    いつもモランに対する扱いが酷くて同情してたのだが、今回のムーミンが振り払ってくれた。だが、ムーミンとの交流によって、モランが冷たくなくなった、ということはみんなが避けなければモランは恐ろしい存在ではないということ?それはとても悲しいことだ。

  • 穏やかなムーミン谷から一家を脱出させることで、トーベの作品で重要な位置を占める「スクルット」たちにすることに成功している。

    スクルットを書かせると彼女は本当にすごい。読んでいてとても居心地が悪い。だって彼らは自分の世界しか持てないから。誰かと居場所を共有できない。そんな彼らのほとんどをトーベは肯定的に語る。どんなに利己的でも否定しない。「そう思うのは当然ですよね。」というスタンス(笑)
    そんなトーベだからこそ、最後には全員が居場所を得る。それが彼女の哲学。

    好奇心が強く恐怖に対して向こう見ずなパパと、自分のうちに入ってくる者への慈愛に溢れるママの子どもである、ムーミントロールにしかモランは救えなかった。

    そして、全ての秘密を知りつつも必要以上に干渉しないミイにしか漁師は理解できなかった。誰よりも灯台の中で孤独に過ごしたママにしか漁師を灯台に招けなかった。同じ重責を味わったパパにしか漁師と対等に帽子を交換し、結果役目に復帰させることはできなかった。

    確かに、苦い、けれども味わい深い、ママの入れるコーヒーのような作品。角砂糖を8個も入れたら台無しである。読んでよく分からなかったらしばらくしてからまた読んで欲しい。漁師の2杯目のコーヒーは砂糖をそんなに入れなかったのではないかな。

  • 外からの脅威ではなく、ムーミンパパの内面から起こった不安。今までのムーミンシリーズにはなかったことから始まった物語です。暗示的で、難しいな。

  • 再読。せっかくムーミン谷で平和に暮らしていたのに、尊敬されたがりなパパの自己満で灯台のある無人島に引っ越すことになったムーミン一家+いつのまにか養女になったミイ。しかし新生活は思うようにいかず、毎度大人げなく自己中なパパは勝手に怒ったり八つ当たりしたりやりたい放題、のんびり屋のムーミントロールがまさかの反抗期で別居、優しいママまでがホームシックのあまり壁に描いた絵の中のムーミン谷に現実逃避してしまい、ムーミン一家は家庭崩壊。その中でミイの誰のご機嫌も取ろうとしないマイペースっぷり、独立心の強い自由人ぷりが光ってます。観察眼の鋭さも。

    やっぱりパパは尊大できらい。現代日本ならモラハラで離婚になると思う(苦笑)。ムーミントロールは弱いところもいっぱいあるけれど、最終的にモランを改心させるなど、たまに良い仕事もするし、欠点長所含めていたって普通の男の子だからいい。

  • 登場人物が少なく、まわりは海という限りのある場所で、息苦しさをも感じるような時間が流れていた。ラストシーンは感動…

  • ムーミン谷の十一月を先に読んでしまいました。
    ムーミンパパ海へいくで、ムーミン一家が引越しをしてしまったからなんですね。
    ムーミン谷では、仲間たちが待っているけど、冒険すきの彼らたちは、きっともう、戻らないんでしょうね。ああ、人生だなぁっと思ったところ、転勤で、知らない土地に移り住んだことを思い出しました。ただただほんわかな楽しいお話だけでなく、人間味溢れたお話に共感出来るなぁと納得した一冊でした。

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著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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