富子すきすき (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772259

作品紹介・あらすじ

夫の吉良上野介が内匠頭に斬りつけられた日から歯車は少しずつ狂っていった。赤穂浪士の討ち入りで上野介を喪った富子。あの事件で得をした者など誰もいない。建前や武士としての体裁なんて関係ない。世間が何と言おうと、私にとってはたった一人の優しい夫だったのに。妻から見た「松の廊下事件」とは(表題作)。武士の妻、町娘、花魁、辰巳芸者…凛として背筋の伸びた、江戸を生きる6人の女性たち。

感想・レビュー・書評

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  • 誰しも思うことがあるだろう「あの時もっとこーしていれば」「もっと強気で自分の意見を言っておいたら」「妥協するんじゃなかった」みたいな気持ち。後悔先に立たずというような忸怩たる思いを描いた短編集。なんともまぁホロ苦い部分に筆を切り込んだもんだなぁと思う。

    その時はその時の色んな事情で選択した行動だし、後悔してもその時点には戻らないのだから・・・、と俺は普段の生活では上記のような思いを抱かないような生き方を目指している(目指しているだけで、実際は後悔と忸怩で溺れる位の今までなんだけど)。

    ここの作品に出てくる彼らも、場面場面で持ってるカードをしっかり選んで出しているはずなのに、後で考えると出すカードの順番が違ってたように思えてしまう。その苦さを俺自身の経験に照らしてしまって、なんとも苦い読後感を喉のあたりで感じてしまう。

    市井人情物の宇江佐さんの作品で、ここまで苦い作品を集めているのは稀有かも。ただ決して凡百のハッピーエンドじゃない人情物を書いてきた宇江佐さんだからこそ、苦さも味だとかみ締めて飲み込めたんだろうなぁとおもう。

  • 吉良上野介の妻を主人公にした表題作ほか、江戸を生きる凛とした男や女を生き生きと描いた短編集。
    お気に入りは、「堀留の家」と「面影ほろり」。100%ハッピーエンドではないところに、宇江佐さんの巧さと深い優しさが見受けられる。人は必ず誰かと繋がっている。それはとても大切なことと改めて思う。

  • どれも、いいですね。藤太の帯の話、木場の子どもの話。が好きです。

  • L
    藤太の帯…俵藤太の百足退治を描いた帯を身につけた娘たちの話。「俵藤太は平将門の首を取った武将ですが、龍神のお姫様から縋られて百足退治に乗り出したこともございます」…この一文に記憶が…と思ったら確か「陰陽師(夢枕漠)」に出てきたんだった。あの情景が思い出されてより身近な帯(笑) たかが帯じゃねェんだよ
    堀留の家…親に捨てられた子供たちを親に代わって15歳まで育てている鎮五郎夫婦。その堀留の家の出身の弥助の身の上話。宇江佐節!
    富子すきすき…あの事件のその後。表題にするほどだったかな。
    おいらの姉さん…花魁と幼馴染の男の話。この手の話はよくあるものの、最後のしめ方がスッキリ。
    面影ほろり…一番宇江佐節全開。8歳の子供が粋。スカッとする。
    びんしけん…子供達に手跡指南をする浪人小左衛門と、転がり込んだ盗賊の娘お蝶。

    やっぱりハズレなし。

  • 宇江佐さんは、好きな作家さん。宇江佐さんらしい優しい物語でした。が、短編ということもあり、物足りなさも。

  • 短編集。
    ハッピーエンド的なお話は少なめです。

    表題作は赤穂浪士の討ち入りを吉良家サイドから描いたものですが、出来事を淡々と時系列にならべただけのカンジがして、ページを多く割いている割にはイマイチでした。個人的には。

    他のお話は、宇江佐センセの実力全開の人情モノ(各話ともちょっと短め?)で、心にグッときます。

  • 6つのお話の短編集です。

    表題作の『富子すきすき』は、吉良上野介の妻目線で描かれています。
    いやーなイメージの吉良上野介が、ここではちょっとお茶目です。
    宇江佐さんマジックですね。
    ヒーロー視されている赤穂浪士ではなく、敵側を敢えて描くところが面白いです。

    他の作品も、健気ながらも肝の据わった女性達が登場しています。
    花魁、盗賊の娘…。ちょっとカッコいいです

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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