- Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062772631
感想・レビュー・書評
-
普段あまりSFは読まないけど、面白かった。
宇宙での出来事よりも地球での出来事の方が圧倒的に詳しく書かれているし、書かれている宇宙での話は「火星への有人飛行に成功した」という事実から連想されるような華々しさからは程遠い。
政治や技術、社会と、話はどんどん広がっていくが、結局著者が描き出したかったのは、人と人のつながりだったのではないかと勝手に想像してみる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
正直よくわからなかった。片道二年?かけて火星に行く話。政治とか思想がからまって複雑。でもビジュアルという思想は面白いと思った!
-
2036年の物語。(25年したら再読しようか)
読んでいて、divisualという発想がなかなか面白かった。
また、最近ちょっと話題になっている監視カメラについて、「特定の者だけがその内容を見ることができる危険性」(例えば警察であるとか)についてのコンセプトもなかなか面白かった。
監視カメラの内容はすべてネットに公開してしまい、誰でも顔検索ができるようになっている社会の物語なのですが、25年後、いったいどうでしょうか?? -
ものすごくよかった。面白かった。ドゥマゴ文学賞を受賞した、平野啓一郎の超長編作。
初の有人火星探索計画、アメリカ大統領選挙の理論戦、男女の不義、戦争と貧困の問題。よくもこれだけ詰め込んだなあと感心するくらい要素が多岐に渡っている。けれどひとつに芯のところでまとまっていて、いい。飽きない。文庫で650ページもあるけど、飽きなかった。
分人主義については、以前平野啓一郎さんの講演会に行った時にお話を聞いた。人はそれぞれ、それぞれの人に対して分人を持っている。分人が集まって個人になっている。キャラを作ってるとか、猫をかぶってるとか、どれが本当の自分かとかじゃなくて、ただ自然にいくつかの分人が自分の中にある。分人主義は、そういう考えを肯定した近未来の価値観として描かれる。分人主義を支える、SFらしいツールもユニークだった。 -
近未来SF作品だけど、ストーリーの中心は、人間が複数持っているディビジュアルという、いろいろな人に対しての違う顔に、アイデンティティがある話。中途半端なSFにストーリーで、全くついていけなかった。
-
「真実」から疎外されることへの不安が高まる社会で、それでも可能なコミュニケーションのあり方とは何か。他者の部分〔=分人〕とコミュニケーションし続けること。そのとき「全体」〔=個人〕を措定する必要はない。「自分の知らない顔〔=真実〕」があると怯える者は「全体的コミュニケーションの不可能性という絶望」を感じる。だが、全体性への渇望に決別できる者には「部分的コミュニケーションの可能性という希望」が与えられる。それが分人主義 dividualism の真髄だろう。
分人 dividual
散影 divisual
無領土国家 -
近未来SFという難しい舞台・道具と、もうすぐ露になる問題の予兆を丁寧に取り扱ったいい小説。
個人(in-dividual = 分けられない)と分人(状況に応じた人格の緩やかな統合)の考え方、リバタリアンとコミュニタリアンの軸足の違い、名誉と希望など、小説というフォーマットでこそ向かい合いたい問題だ(あえてテレビにするならNHKの特集か)。
近未来SFは、調べずに描くと絵空事になるし、調べて描くとリアリティは増すけど(娯楽としての)小説ではなく新書みたいになってしまうしバランスが難しいところ。火星有人飛行の実現性はともかく、監視カメラの検索エンジン・インターネット版や人格の分断使い分けは「ほぼ今日明日の問題」と思える。
ただし、欲張り過ぎ詰め込み過ぎで消化不良ぎみ(作品がand/or私が)。
AR(拡張現実)の認知面の話しとAI(人工知能)のまぜ具合とか、それだけでお茶碗三杯くらいおかわりできそうなトピックがぶちまけられている感じ。 -
220ページくらいからおもしろぃ
それまではけっこう斜め読んだ。
にひが買ってきてくれた一冊。 -
私には理解できない小説でした。正直。
「火星でいったい何が」の文句に騙されました。
ってか私の読解力の無さに尽きますが。
しかし、まぁ芥川賞作家さんは、やはりエンタメ路線には寄れないんですかね。なんか壁を感じるなぁ、この作家は。
「別に火星じゃなくともよかったんでないの?」