ラバー・ソウル (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778466

感想・レビュー・書評

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  • 活字だから出来る、活字でしか出来ないエンターテイメントのお手本の様な長編。

    主人公の醜悪な容姿と行動が何度となく強調されるものの、映像として相対化されないため、読者は己の内から醜さや嫌悪を引き出さざるを得ない。しかし負の感情は構成上の仕掛けによって最終的な行き場を失い、憐憫や感傷と綯交ぜとなり身悶える。これが胸を掻き毟るような読後感の正体ではないだろうか。

    嫌悪感を煽るだけ煽っておいて最後に反転させ読者の胸に突き刺さす。ある種の自家中毒を呼び起こすその構成には、巧妙と呼ぶに余りある底意地の悪さを感じる(褒めてます)。

    とはいえ清々しいほど自己中で倒錯したストーカーの心象描写だけでも読み進めながらニヤニヤが止まらず、純粋なサイコスリラーとして完結して欲しかった気持ちも。

  • 最後のどんでん返しがすごい。そして涙。傑作でした。重要な狂言回しがいます。

  • すっごい読後感!
    途中で、何故か「オペラ座の怪人」のイメージがチラついた。
    これ以上は書けません!
    とりあえず、ビートルズのラバー・ソウルを聞いてみよう。

  • 最終章まで読んで欲しい。

    モデルをストーカーする醜い男。
    その行為はどんどんエスカレートしていき…

    中盤までは、確固たるドロドロとした感情が読者を支配するが、
    最終章のわずか数十ページで、全く別の感情が沸き起こる。

    「明日」をもたらす存在の大切さ、
    外見と心の美醜はイコールとは限らないこと、
    そのことがなぜか微かな希望さえ抱かせる。

  • 3日ぐらいかけて読もうかなぁ~と思ってたのに、止められずハイスピードで読了。初めから・・・騙され続けてしまいました。ストーカーの異常なまでの思い込みに気味が悪くて・・・ずーっと、そういう目線で読み続けて最後に「え?そうなの?」て、暫し呆然。思い込みの激しいのは自分だった(笑)これは、ある意味「純愛」と言っていいんじゃないかしら。気味悪いからの切ない気持ちに一気に持って行かされた。何とも言えない読了感。読友サン、勧めてくれてありがとう!偏見から来る思い込みが怖い。それを1番知ってた彼が悲しいです。

  • 640ページという中々のページ数で、本の厚みという意味では少々読みづらかったが、内容は大変読みやすく、最後まで飽きずに読めた。

    実の親からですら目を合わせてもらえないほどの顔というのは一体どんなものだろうか想像つかなかったが、そのような環境で育って、ちょっとでも自分の空間に入ってくれた女性にストーカー行為をするというのは分からなくもないが、読んでいて怖かった。

    最後は、鈴木誠に笑ってなんでも話しあえる使用人の金山さんという存在が居て良かった、実は純粋でとっても心の綺麗な人で良かったというスッキリした終わり方で気持ちよかった。
    人は見かけで判断してはいけないということですね。

  • なんて醜く気持ちの悪い男!
    なんて悲運で清純な女!
    と、こんな風に思わせるように綿密に計算されていたなんて!ところどころ、女の言葉遣いに引っ掛かりを感じたのはこのためだったのか。
    容疑者Xの献身よりも、心情を慮れる。

  • 誰もが目を背けるほど醜い男が、最初で最後の恋をした。
    美女と野獣のような美しい話ではなく、歪んだ独占欲からストーキング行為へ
    その果てに、彼女の周囲にいる男達に危害を加えてゆく…?

    最後まで読んで、ようやく分かる。彼と彼女への見方がガラリと変わります。

  • 幼い頃から友だちもいない。誰からも抱きしめられたこともなく、愛された記憶もない。
    大好きなビートルズの評論が認められ、それをきっかけに社会への扉が開くことになる。
    わずかだけれど変化が訪れた鈴木の生活にさらなる変化が訪れた。
    絵里と出会ったことで 生きている時間のすべては絵里のために費やされるようになっていく。
    生まれてきたことに意味を見出せなかった鈴木にとって、死ぬことに意味を見つけられたのは幸せだったのだろうと思う。
    生きてきた時間、自分の人生に価値を与えることができた。
    鈴木には何物にも代えがたい大切な宝物だったというもの理解できた。
    けれど、読み終わったあとに込み上げるやり切れなさはどうしたらいいのだろう。
    物語には哀しいほどに純粋な心と、語りつくせない「誰かに必要とされること」の幸せが詰まっている。
    ふとこんな言葉を思い出した。
    音楽を愛する人に悪い人はいないと。
    魂の美しさは悲しいことだけれど外見からは見ることが出来ない。
    間違った選択をしたかもしれないけれど、これほど深く人を愛せた鈴木の幸せにひとかけらの嘘もない。
    そう思わなくては哀しすぎる物語だった。

  • 推理小説として圧巻の出来!
    警察調書と鈴木誠の独白を織り交ぜる構成によってストーリー進行していく

    この構成のために何も解けないままラストまで読み進むことに。 
    全部がひっくりかえって 最後に見事に落着と。 

    生きること・愛すること に係る哲学を期待すると消化不良になるけど、
    推理小説としての サスペンス感を期待するなら傑作。

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著者プロフィール

昭和25年生まれ。昭和57年に徳山諄一との岡嶋二人名義で第28回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。平成4年に『ダレカガナカニイル……』(新潮社)で再デビューした。代表作に『ラバー・ソウル』(講談社)など。

「2020年 『平成ストライク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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