たけくらべ・山椒大夫 (21世紀版・少年少女日本文学館1)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062826518

作品紹介・あらすじ

短い生涯のなか、女性らしい視点で社会を見つめつづけた一葉。あふれでる西洋文明の知識を駆使し、数々の格調高い作品を残した鴎外。西洋人でありながら、だれよりも日本人の魂を愛した八雲。日本が新しい時代に踏み出した明治期を代表する三作家の傑作短編。

感想・レビュー・書評

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  • 収録作品
    樋口一葉 『たけくらべ』
    森鷗外『山椒大夫』『高瀬舟』『最後の一句』『羽鳥千尋』
    小泉八雲『耳なし芳一』『むじな』『雪おんな』

     このシリーズ好きなんですよね。最後の頁の全巻の広告を見ると他のも読みたくなってしまう。
     この中で一番読みたかったのは樋口一葉の『たけくらべ』でした。高校の時の教科書に載っていたのだけれど、なんか物語に入りきれなかった気がして、再チャレンジ。で、早速、本を開けると、あれ?“円地文子訳”って書いてある。ジュニアだから現代語訳してくれている訳ですね。ちょっと出鼻をくじかれた気がするけれど、まあ、いいっか。確かにこのほうが、物語の世界がずっと分かりやすい。
     明治初期の江戸情緒、吉原辺りの様子、その辺りに住む子供たちのグループ闘争、淡い初恋、やがて道が分かれ住む世界が変わって行くときの切なさ……などが明治の吉原辺りの生きの良さ、艶やかな色彩と共に繰り広げられる。ただ、ちょっと一文一文が長くて、物語にあまり起伏がないので、つい集中出来なくて、読み飛ばし気味でした。もったいない。
     森鷗外の作品で一番心に残ったのは『高瀬舟』です。
     京都の罪人が島流しを言い渡されると高瀬舟に乗せられ、大阪へ廻された。ある日、高瀬舟で罪人を護送する役人が“弟殺し”の罪で、護送される罪人が明るい笑顔でいるのを不思議に思い、罪人に訳を聞いた。その罪人が言うには、「自分は生まれてからずっと働いても働いても食べていけたことがない。なのに、牢獄ではちゃんと食事が与えられた。それに島流しされるにあたって二百文頂いた(当時の掟で島流しされる罪人に与えることに成っていた)。それは自分が今まで懐に入れて持っていたことがない金額で、島についたらこの二百文を島でする仕事の元手にしたい。」ということである。それを聞いた役人は、自分はその罪人が喜ぶ金額とは桁違いの給料を貰っているけれど、女房と子供を養い、自分たちの思うような生活をしていくには、いつもギリギリで追われている。人は食べていけないと「食べていけたら」と思うし、蓄えがなければ「蓄えがあれば」と思うし、蓄えが少なければ、「もっと蓄えがあれば」と思い、どこまでいっても踏みとどまれない。二百文を有難がっているその罪人がこの人間の欲に踏みとどまらせてくれたと気づく。
     また、罪人に「何故弟殺しの罪を犯したのか」という事情を聞くと、弟と身を寄せ合って貧しい生活をしてきたが、病気になった弟が自分のことを気遣って、首をカミソリで切って自殺しようとしたが、上手く切れず、死にきれず苦しんでいて「兄さん手を貸して下さい」と頼まれ、手を貸すと、上手く頸動脈が切れてしまって殺したことになってしまったのだという。「安楽死に手を貸すのは罪なのか」ということにをこの時代に問うている。深い作品です。
     小泉八雲のは、元は英語で書かれていたのを、翻訳されてます。英語でも読んでみたいと思いました。


    • goya626さん
      「神の国ギリシア」なるほど、日本の八百万の神の感覚ですね。「日本の面影」は、昔のよき日本の姿が描かれているのでしょうね。ふむ、読んでみたい。
      「神の国ギリシア」なるほど、日本の八百万の神の感覚ですね。「日本の面影」は、昔のよき日本の姿が描かれているのでしょうね。ふむ、読んでみたい。
      2021/07/21
    • Macomi55さん
      とても、良かったですよ。レビュー書いてますが、ハーンが最初に日本に来た時の新鮮な感動が書かれているのです。
      とても、良かったですよ。レビュー書いてますが、ハーンが最初に日本に来た時の新鮮な感動が書かれているのです。
      2021/07/21
    • goya626さん
      ほう!
      ほう!
      2021/07/23
  • なんか原作と違う気がする。
    子供向けだからかな?

    森鴎外 
    ■高瀬舟 お金が入ってきても、自分にはとどまらず右から左に流れていく二人。片方は現状に満足し、片方は多くの欲望を持つ。現状に満足している人は取り扱うお金が少なく、欲望を持つ方は多くのお金を手にしていた(が手元には残らない)。足るを知るものは幸せに気づきやすい。
    殺人とは何か。たとえは病気の人がいて、もう耐えられない。早く楽になりたいとしたとき、その人を殺すのは凶悪を含む殺人なのか。必要悪と考えられないか。私なら(自死できない状況であれば)殺してほしい。
    ■山椒大夫 母子姉と弟と下女で父を訪ねて旅に出るが、人売りにつかまり奴隷となる。弟は脱出するが姉は途中でなくなってしまう。弟は目の見えなくなった母に再会する。

    小泉八雲
    ■耳なしほういつのはなし 耳痛そう。
    ■雪女 最後の妻の告白がしんどい。幸せからくるゆるみが怖い。

  • 「たけくらべ」は現代語訳ですが、それでもわからない語句がたくさんあったので、行間の説明はとても役に立ちました。
    大人でも、このシリーズで一通り名作を読むといいと思いました。中学生くらいにこういうシリーズを読んでいればと悔やまれます。

    表題作の「たけくらべ」目当てでしたが、森鴎外の短編「羽鳥千尋」が最も印象的でした。実在の人物の実話を元に書かれています。羽鳥千尋の思いの深さ、無念さに涙が出てしましました。

  • たけくらべ/何となくタイトルから「藪の中」みたいなものを想像していたが全然違った。たけっていうのは少年少女たちの浴衣の丈のことかなぁ?

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著者プロフィール

森鷗外(1862~1922)
小説家、評論家、翻訳家、陸軍軍医。本名は森林太郎。明治中期から大正期にかけて活躍し、近代日本文学において、夏目漱石とともに双璧を成す。代表作は『舞姫』『雁』『阿部一族』など。『高瀬舟』は今も教科書で親しまれている後期の傑作で、そのテーマ性は現在に通じている。『最後の一句』『山椒大夫』も歴史に取材しながら、近代小説の相貌を持つ。

「2022年 『大活字本 高瀬舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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