古事記 (21世紀版・少年少女古典文学館1)

著者 :
  • 講談社
4.17
  • (7)
  • (7)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 122
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062827515

作品紹介・あらすじ

日本にまだ固有の文字がなかった八世紀初頭に成立した『古事記』は、漢字の音と訓を利用して、神話や古くからの言い伝えを書き表した日本最古の書物である。国の成り立ちを説いた歴史の書にとどまらず、古代の人々の想像力にみちた豊かな文学性を感じさせる。とりわけここに収めた「上の巻」には、イザナキ・イザナミの国生み、天の岩屋戸、スサノオの八俣の大蛇退治など、日本神話としてなじみ深い話の数々が、飾り気なく力強く描かれている。ここには、日本人の心と行動すべての原初の姿を見つけることができる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古典を小中学生向け、少年少女古典文学館シリーズ。監修が司馬遼太郎、田辺聖子、井上ひさし、文章はそれぞれの巻で名作家たちが担当するという贅沢なシリーズ。
    古事記の文章担当は橋本治。三部ある古事記のなかで、上巻(天地創造から、神武天皇の登場まで)が入っています。
    たしかに「古事記」と言われて有名なのはこの上巻の部分かもしれませんね。イザナミとイザナギ、ヤマタノオロチ退治、オオクニヌシの冒険、海幸彦と山幸彦の争いなどなど。
    あとがきでは、この上巻を「まだ人間が一人も出てこない、神様たちだけの物語」としています。もちろん物語には”人”は出てくるのですが、日本の神話における”人”は神様が地上に降りてきて、人間のように暮らして、人間のように争い、人間のように恋をする。世界の神話には「人間を創った」というお話があるけれど、日本の神様は人間を作らない。だから日本では歴史と神話に明確な線引はない。
    この内容は非常に納得でした。
    神様は人間社会にも当たり前にいる。人間は神様の子孫そのもの。これが日本の神話で歴史書の根本なのですね。

    訳註もとても充実しています。
    言葉の語源や、出てくる物の意味は、私も初めて知ったものが多いです。
    少し笑ってしまったのが男女関係の所。「すぐその場で愛し合いました」「すぐその場で夫婦になってしまったのです」うん、これは少年少女に分かるかなーー。
    さらにヒコホノニニギの命からコノハナサクヤヒメへの求婚について、「『結婚したい』ということは、当然のことながら、『美しいから一晩だけ一緒に寝たい。一度結婚してみたい』という意味で、『一生連れ添う妻にしたい』とはお思いにならなかったのです」と書かれているのが、うん、男の本音はっきり言ったーというのと、これ少年少女に分かる?とも思う(笑)。

    こちらの「古事記」上巻部分は、神話として終わっています。
    中巻、下巻になるとだんだん人間同士のドラマや争いになりますね。
    長い長い年月が一応まっすぐに繋がるお話しって、最初の頃のこの世ならざる神話の世界に自分が一生懸命合わせようとする、読者としての感覚が楽しんですよ。巻を追い年代が過ぎるごとに「その感覚人間としてわかるわ~」になってしまい、物語が読者に合わせてくれるというのは有り難いんだけど、私ががんばって物語に着いてゆくから、そっちから来てくれなくていいよ、という読書感覚になるんです。「古事記」の中下巻なんて今から何千年も前なのに「人間として分かる」と感じられるのは十分すごいことなのですが。

    もちろん「古事記」中下巻も人間ドラマとして面白いし、古典の授業でも習う場面も多いので、こちらの「古事記上巻」の続きを少年少女版で出してほしいなあとは思います。

  • 懐かしい本です。橋本治君がなくなってしまって、遺品整理をしています。子供たちに読んでほしいと思って、ずっと昔に同居人が購入した本です。
     名著です。少年少女に読ませるだけではもったいない。例えば、岩波文庫の古事記は、アマテラスが生まれる前にくたびれてしまいますが、この現代語訳だと眠くなりません。すらすら、お話として読めるように訳してあるからでしょうね。いろんなところに、橋本君の芸の細やかさが仕込まれていて、大したもんだと思います。

  • 解説がたくさん載っているので古典文学初心者にとっては、歴史の勉強にもなり読み易い。
    「古事記」上、中、下の3巻の上の巻の分のみ。

    日本はイザナミが最初に淡路島を産んで次々と国土ができていった。神々は人間は作らない。

    あとがきに「神様は人間ではない。しかしいつの間にか、神様は人間になっていく」と。

    神様は完璧な存在と思っていたが、人間と変わらず人の良い方、意地悪な方、やんちゃな方という神様もたくさん登場して親近感が湧く。
    先祖を辿れば近所の人も皆親戚のような気がしてくる。

    子供の頃絵本で読んだオオクニヌシノミコトがウサギを助けた話やヤマタノオロチの話もある。

  • 初めてちゃんと読んでみた。知っている話も多かったが、なかなか面白かった。このシリーズを読破しようと思う。

  • アマテラス大御神→高天原。ツクヨミの命→夜の国。建速須佐之男命→海原。それぞれ支配。

  • 面白かったというより、興味深かったです。古事記を読むのは初めてだったけど、なんとも人間味溢れる神様たちにびっくりしました。なるほどなーと思うところもあれば、えっ?!と思わず読み返してしまうところもあり…笑
    もっと詳しく読み深めてみたいなと思わせるお話でした。
    でも神様の名前はどうしてあんなに長いのか…(T_T)

  • 古事記を誰にでも分かるように書き直した少年少女のための本。神様しか出てこない本ですが、どの神様も神様らしくない。怒るは殺めるは自分勝手だは、その人間臭さにつっこみどころ満載です。子供向けとは思えない素敵な古事記入門書です。

  • 面白かったです。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

橋本治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×