- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062850506
作品紹介・あらすじ
台風のくる二百十日に、東北の小さな山村に転校してきた高田三郎を、子どもたちは、伝説の風の子「又三郎」だとして、親しみとおどろきをもってむかえた。宮沢賢治の代表作のひとつ『風の又三郎』をはじめ、『洞熊学校を卒業した三人』『気のいい火山弾』『ねこの事務所』『虔十公園林』『からすの北斗七星』『よだかの星』『ふたごの星』など、自然や星空をテーマにした作品の数々。小学中級から。
感想・レビュー・書評
-
『詩・高原』
光る山だたぢゃい
=岩手の高原を感じるままに記した詩…だと思う。
『風の又三郎』
どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみもふきとばせ
すっぱいかりんもふきとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
強い風の日にやってきた転校生。赤毛の真っ赤な顔にまん丸で真っ黒な目。子供たちは「あいつは風の神様の又三郎だなぃ」と思います。
子供たちの元気な様子、季節を変え、人々に変化をもたらせる風が連れてくるものと、連れて行くもの。
躍動感のあるお話でした。
『洞熊学校を卒業した三人』
洞熊学校の方針は一番争いです。
生徒の、赤い手長蜘蛛と、銀色なめくじと、顔を洗ったことのない狸は、卒業しても争い合っていました。
=端から見ると馬鹿らしい争いを繰り広げて自滅する人たち。まあ自分がその状態だけど気が付かない人は(私も含めて)多いんだろう。
『気のいい火山弾』
ただの黒い石かと思われた「ベゴ」という渾名の石はみんなに馬鹿にされても気にせず鷹揚にしていました。しかしベゴは学術的にとても価値があったのでした。
『ねこの事務所』
猫の事務所には、所長と、書紀猫たちと、窯猫がいました。
所長猫と書紀猫たちは窯猫を汚いと馬鹿にしています。
しかしその様子を見た獅子は怒ります。「こんないじめして学術に意味なんかあるかヽ(`Д´)ノ!」
『虔十公園林』
虔十(けんじゅう)は、木や風や子供たちを見ては嬉しくてしょうがありません。
村の人達は、そんな虔十をちょっと足りないやつだと思っていました。
いつも親やお兄ちゃんの行くことを聞く虔十ですが、一つだけお願いがありました。「杉の木を植えて杉林を作りたいなあ」
何年何年も達ち、杉はなかなか大きくなりませんが、虔十は大切に管理して、近くの学校の生徒達の楽しい遊び場になっています。
=ちょっとじーんとしてしまった一作。
まさに”デクノボー と呼ばれ”のような虔十ですが、誰がなぜやったのかは忘れられても、やったことは優しい気持ちとして残っている。
『からすの北斗七星』
カラスの軍団は山がらす軍団と戦争をします。
カラスの大尉は嘆きます。
ああ、憎むことのできない敵を殺すような戦争がない世の中になればいいのに。
『よだかの星』
ネットである動物の写真を見て「え?トカゲ?鳥??」と思った。その動物の写真の題を見たら「よだか」だった。…君だったのか!!
他の生物たちから醜い醜いと追い立てられ嫌われるよだかは、もうこの世に居場所がなく、遠く遠く高く高く星の世界を目指して飛んでいきます。
『ふたごの星』
星の館に住むチュンセ童子とポウセ童子は、晴れた夜には一晩中銀笛をふく役目をお仰せつかっていました。
大鴉と赤蠍の喧嘩を収めたり、悪い箒星に騙されて海の底に連れて行かれてしまったり。
でもいつも行いの正しい双子の童子のことを空の王様はちゃんと見ています。
今夜も銀の笛の音色が聴こえます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
純粋で、痛々しいケンジさんの世界。
醜かったり、少し頭が足りなかったりする人は、どこまでも純粋。
実際は、そうとも限らないのだけど。
ある意味、理想郷と言えます。 -
少年と村の子供たちとの心象風景を
現実と幻想の交錯として描いた秀作の物語です。
どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ
ある風の強い日…
谷川の岸の小さな小学校に、不思議な少年が転校して来ました。
地元の子供たちに少年は、「風の神の子 ではないか?」
という疑念とともに受け入れられたのでした。
さまざまな刺激的行動の末に、学校を去っていきました。
どっどど どどうど どどうど どどう
風は まだやまず、窓ガラスは雨つぶのために曇りながら、
また がたがた鳴りました。 -
にほんごであそぼをふと思い出して、懐かしくなった。
昔の言葉で会話文が進んでいくので、ちょっと難しいところがあった。 -
ヨルシカの曲が好きで手に取る。
「風の又三郎」→「又三郎」
「よだかの星」→「靴の花火」
気象や星を用いた描写の難解さと美しさは
教科書ではあんまり共感できなかったけれど
改めて読んでみると
その奥深さといくつもかけられる願いに気付かされる。 -
宮沢賢治らしい本です。