- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062880008
作品紹介・あらすじ
顕微鏡をのぞいても生命の本質は見えてこない!?科学者たちはなぜ見誤るのか?世界最小の島・ランゲルハンス島から、ヴェネツィアの水路、そして、ニューヨーク州イサカへ-「治すすべのない病」をたどる。
感想・レビュー・書評
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考えることについて考える
分類することを統合すること
一人の人間は 考えもずっと続いている どこかに区切りがあるわけではない詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
理系エッセイ。
福岡伸一さんの著作は内容自体の知的な面白さだけでなく、文章自体もうまいので読み物として楽しめる。
93〜の細胞は互いに空気を読んでいる、の章が特に面白かった。
8〜12章はラッカーとスペクターのエピソード。STAP細胞以来話題の実験結果捏造の話。
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27
誰もが経験的に知っているこの不思議な知覚について、意外なことに生物学は未だ何の説明もできていない。視線とは何か。それはどのように捉えられるのか。
72
つまりソルビン酸は、微生物にとってはその生命活動を止めてしまう毒として働きます。人間にとっては加工食品の消費期限を伸ばしてくれる便利な薬として働くことになります。とくと薬は表裏一体とはこういうことなのです。
82
私たちの大便は、だから単に消化しきれなかった食物の残りカスでは無いのです。大便の大半は腸内細菌の死骸と彼らが巣くって言った消化管上皮細胞の剝落物、そして私たち自身の体の分解産物の混合体です。ですから消化管を微視的に見ると、どこからが自分の体でどこからが微生物なのかは実は判然としません。ものすごく大量の分子がものすごい速度で刻一刻、交換されているその界面の境界は、実は曖昧なもの、極めて動的なものなのです。
94
「君が皮膚の細胞になるのなら、僕は内臓の細胞になるよ」
98
この細胞ここが世に名高いエンブリオニック・ステム・セル、すなわちES細胞である。(略)ES細胞は(略)ありとあらゆる細胞になることができる。 -
[塩見図書館長より]
著者の福岡さんは青山学院大学教授の分子生物学者です。「科学者たちはなぜ見誤るのか?」が本書のテーマです。われわれの人生の本当のところは科学では分からない、と著者は言いたいのです。イタリアのヴェニスにある絵画を巡り、せき立てるようなミステリアスな筋立てです。研究室から旅へ、アメリカからイタリアへ、その大きなスイングがエキサイティングです。 -
複雑なものを複雑なまま捉えたいという最近の欲求の一方で、ちっぽけな自分が解釈できる(分けられた)何かを「見たい」という願望は消えない。そんな時に手に取った一冊。
目が良いから見えるものがあれば、目が悪いから見えるものもある。
大抵のことは空目かもしれないけど、そう思いながら夜空を眺めたり細胞を眺めたりするのは、それはそれでワクワクする。趣味としてなら。
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生物を分解して理解する分子生物学でも動的平衡で存在する生命のなぞは解き明かされないが、着実に発見は続く。しかし答えを急ぐあまり捏造の誘惑に負けてしまうことも。科学研究の面白さと生命の神秘、飽くなき探求心を持つ科学者の悲哀が詰まったエッセイでした。
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分子生物学の先生が生命現象について平易に語った書。タンパク質やがん細胞など一般人にも耳馴染みのある言葉をはじめ、人間を構成する様々な要素を説明します。科学知識一辺倒ではなく芸術作品などからも思索を拡げていきます。
生命はより詳しく調べようと細かく分けていってもそれだけでは正しい理解に至らない。周囲との動的な相互作用への視点が大切。そんなことを言っている本かな、と思いました。再読したくなる本です。 -
ベストセラー『生物と無生物のあいだ』に次ぐ、福岡ハカセの講談社現代新書第二弾。
前作と同様、講談社の月刊誌『本』の連載(2008~2009年)を纏めたもの。
今回は、「パワーズ・オブ・テン(10のn乗)」、「世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからない」をテーマに綴っている。
本書で詳細に語られる、1980年代初頭の米コーネル大学を舞台に起こった、がんの発生メカニズム発見に関わる捏造事件は、近時のSTAP細胞の事象に繋がる、科学の世界の「治すすべのない病」を象徴している。
また、本書でも、話題は、村上春樹の『ランゲルハンス島の午後』、ヴィットーレ・カルパッチョの絵画、須賀敦子の作品と、生化学から次々と広がっては戻ってくる。
様々なことを知る喜びを感じさせてくれる一冊である。
(2013年1月了) -
「北斗七星は、しかしながら、視力が、ある程度悪い人にだけ見える星座である。もう少しだけ解像力のよい眼をもつ人が見れば、北斗七星の、柄の真ん中の星はひとつではなく、二つの星であることが見える。ミザールとアルコル」
素人でも頭が爆発しない程度の理系的トリビアと、科学者というものの実態に迫るルポ、そしてそれらを装飾する文学的な表現を組み合わせると、本書のような飛ぶように売れる本になる(結論)。
いや実際、著者の文学的センスはかなりのもので、思わずそれのネタを一本小説に書こうとしてしまったぐらい(ガン細胞についての記述)。こうやって、普段組み合わされない領域を組み合わせられる人、ちょっと陳腐に言い換えれば、文系と理系の才を組み合わせられる人ってやはりすごく貴重なのだなと思う。 -
ヒトの不思議、地球の不思議、宇宙の不思議。この世は不思議でいっぱい。星がみえるのなら、潜在意識もあながちトンデモとはいえないのかなぁ。