最高に贅沢なクラシック (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 69
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881616

作品紹介・あらすじ

オーケストラ、極上ワイン、人生の贅沢を語り尽くす痛快無比の音楽論。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は冒頭で「学生食堂でご飯なんか食べていたら、プルーストはわからないよ」と言って大顰蹙を買った学生のことを引き合いに出して、返す刀で「電車に乗って通勤している人にはクラシックはわからない」「トヨタ車に乗って満足している人にはクラシックはわからない」と言い切ってしまう。

    裕福な生活の中で作曲され、裕福な暮らしの人に供された音楽は、そのような環境で楽しまなければわからないという訳だ。
    そんな視点から香港・オーストリア・イタリア・ドイツ・フランス、そして青森県の六ヶ所村の音楽ホールと、オーケストラ/オペラとレストランについて語った一冊。

    常に上から目線で語り下ろす口調はあとがきで書いているようにわざと嫌味で書いており、それは大成功を収めてページを繰る度に「そういうお前は何様のつもりだ」と思わずにいられなかった訳だが、書かれた内容なさておき、著者の言いたい「贅沢なクラシックの味わい方」は読み取れた気がする。

    その上で、著者の様に世界中のオーケストラを聞きまくって見えてくる風景も当然あるとは思うが、それはいささか品がないようにも思えた。
    年に数回、各地の演奏を聴くのもいいが、地元のオーケストラ(でもオペラ団でも劇団でもよい)の水準を知りつつも長くそれを支援し続けるのも贅沢な味わい方じゃないだろうか。

  •  うーむ、なんというか単なる一俗人の好みの披露、という感がぬぐえない(著者はそうではないとあとがきでも再主張しているが、それはちょっと違うのでは?と反論もしたくなる)。が、音楽通史として読めるし、なるほど面白いという点も多く、楽しめた。確かにいんちきくささがある、というのは納得できる。が、フォローではないが、もう少し客観的な記述でも良い。個人的にはこれくらいガンガン個人的主張がされて、潔いとすら思うが・・・。色々複雑な思いに駆られる。

  • 読んでいて何度も、村上龍の文章を連想した。「本物」を求めて時間と金をかけて移動する、美食について書く……ということ以上に、たぶん「芸術」を受容するということについての態度そのものに、通底するものを感じたからだと思う。

  • 久しぶりに星ひとつの最低評価をさせてもらいました。

    偏見偏向がひどく、自らを貴族に擬し自慢たらたら、庶民や東洋を愚弄するような話ばかり。

    電車ののっている人間にはクラシックは分からない。
    トヨタ車に乗っている人間にはクラシックは分からない。
    香港の嘘くささ。
    マカオでクラシックを聴く場違い。

    などなど冒頭からこんな調子。

    金持ち自慢と西洋至上主義の差別的言動をよくぞ本にしたもんだと思う。

    成り上がりのスノッブらしい金満主義で、著者のお里が知れます。
    読んでいて最初はムカつき、そのうち呆れ、最後は著者の痛さに目を覆うばかりでした。

    講談社もよくぞこんな著作を現代新書に選定したものです。

  • 豊かさの中で生み出されたクラシックは、豊かさの中にいなければ肉薄することができないという、良識の中ではなかなか語られなかったが真実に近いことを具体例と経験から説いている。旅行記として読まれた方も多いのではないかと思う。
    豊かさと浪費は違う、という指摘はもっともだと思う。

  • クラシックは基本的に豊かな人の音楽であると主張する著者による世界各都市でのクラシック体験とホテル、レストラン、酒、街、車についてのうんちく集。日本の真面目なクラシックファンが怒ることを承知で書いている露悪ぶりが楽しめた。消費ではなく、浪費のすすめとしても筋が通っている。

  • 痛快無比。贅沢な感覚を身につけ・・・られるかしら。

  • 図書館で借りた。

    著者曰く、「要約しにくいこと」を書いていて、「感覚的に」納得してもらえればよいことを述べている。音楽に関する旅日記のような体裁とも言えそうであった。

    贅沢を知っているか知らないかによって、ある作品が理解できないということがある、ということが一番最初に書かれている。クラシックの作曲家で国の財政を傾かせるほどの贅沢をしたり、貧しい生活を送ったのはいいワインを飲んでいたせいだったりするケースを聞くと、現代の裕福ではない人間はそんな人の感覚には近づけないのも理解できる。

    本の内容としては、本物の音楽を聴ける場所を探すようにして、香港、オーストリア、イタリアなどが紹介されていく。各場所のいいホテルやいいレストラン、オペラハウスや当地のオーケストラの品評がなされている。

    お金のある人を僻む癖がある場合は読まないのがベストだと思う。ただ、貧すれば鈍するとはいうけれど、そんな中でも贅沢というものを知っておくことは必要だという感じの主張には頷きたい。

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著者プロフィール

1965年、東京都生まれ。慶應義塾大学教授。著書に『クラシックがしみる!』『問答無用のクラシック』『コンヴィチュニー、オペラを超えるオペラ』『オレのクラシック』『クラシック批評という運命』(いずれも青弓社)、『クラシック魔の遊戯あるいは標題音楽の現象学』(講談社)、『世界最高のピアニスト』『生きていくためのクラシック』(ともに光文社)、『痛快!クラシックの新常識』(リットーミュージック)、『これからを生き抜くために大学時代にすべきこと』(ポプラ社)、編著に『クラシック知性主義』『絶対!クラシックのキモ』(ともに青弓社)、共編著に『クラシック・スナイパー』シリーズ、『クラシック反入門』(ともに青弓社)、共著に『クラシックCD名盤バトル』(洋泉社)など。

「2016年 『クラシックの秘宝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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