げんきな日本論 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883917

感想・レビュー・書評

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  • 日本史において、普通に出てくる数々の「キーワード」、社会システムの変換点を表す「時代」、そういうものとして当然と受け取っていた日本の歴史が、いかに特殊なものであったのか、どうしてそうなったのかを膨大な知識量を背景に対話方式で展開していく本であり、それぞれの論点はかなり興味深いものでした。
    歴史の純粋な考察でもなく、裏付けもないので、信憑性があるものではありません。ですが、対談の中で新たな解釈が生まれていく躍動感と熱量を楽しめると、面白く読めると思います。

  • ・日本の歴史を多角的に分析。歴史的にみて天皇制が無くなるかもしれないタイミングはいくつかあったが亡くならなかった理由など非常に興味深い。このような解釈もあるんだね。視野が広がる

  • 『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』(ともに講談社現代新書)と同様、橋爪大三郎と大澤真幸の二人の社会学者が、日本史についての解釈をおこない、現代にまでいたるこの国のありようを解き明かそうとしている本です。

    著者たちの日本史の解釈は、専門の研究者から見れば大胆にすぎるのではないかと思われる箇所もありますが、日本社会の歴史的な形成過程を明らかにするという問題設定から日本史を読み解くという本書のスタンスは、歴史研究においてはあまり見られないアプローチのしかたで、おもしろく読みました。

  • 日本論というよりは日本史でした

  • 碩学の二人の対話は巧みなプレイヤーのジャズのように,お互いのフレーズを巧妙にアレンジしてさらに深い点にのめり込むといった,読んでいてぞくぞくするような場面が続出.例えば,幕藩体制の定義で,戦国時代が平和の裏に伏流している という表現は通常の歴史書には出てこない.さらに幕藩体制の政治原理に朱子学を持ってきたがうまくいかず,儒教と仏教をうまくミックスした という説.江戸時代の武士の正統性を何に求めるか苦労したこと 等々.非常に楽しく読めた.

  • 二人の非常に知的で好奇心溢れる対談が読むことができた。
    改めて日本という国の特異性が浮き立つ議論だと思った。

  • (橋爪)なぜ、まったく権限のない天皇や、中央政府をこの際なしにして、ヨーロッパみたいなほんとうの封建制にならなかったのだろう。いつまで経っても、律令制の外見はそのまま残って、中央政府のパフォーマンスはほぼゼロ。それで、人事だけやっているわけです。(p.130)

    (大澤)天皇とカミとが別々にいれば、おまえはカミから見捨てられたとか言って、天皇を打倒することができます。しかし、天皇とカミがつながっているとそれができない。天皇を否定することは、カミごと捨てることになる。カミごと捨てるには、もっと上位の普遍性を持った宗教なり、理念なり、法なりが必要ですが、それがまったくない。そういう状況だったからこそ、日本は「古代化」を進めなければならなかった、ということでしょうが、ここまで話してきたように、その「古代化」は、そのオリジンの中国のモデルをずいぶんと歪めるかたちで進行した。(p.135)

     中国人は科挙という制度をつくって、官僚に地位を与えたとき、文字以前の、人間のプリミティブな層を、政治的には排除して、そういうものを機能させない世界をつくった。
     日本人の場合は、その文字以前の、どこからともなくやってくる超越的な声みたいなものが、結構あとまで利いていて、僕らはふだん意識しないけれども、なおその圏内にいる。これがカタカナを住まわせる場所として、今でも機能しているのではないか。(p.157)

     トップの意思は、変数Xみたいにして、そこにどんな内容でも代入できるようにしておかないとならない。しかし、それでは、国レベルにせよ、組織レベルにせよ、政治は機能しないので、トップの意思を代行する実効的な決定を下す人が側近にいる。摂関政治型のシステムは、こうしたやり方の理念型ですね。(p.179)

     一揆はたいてい、土一揆とか、徳政一揆とかみたいに、債務をなくしてくれ、税率を下げてくれみたいな要求が多い。ボストン茶会事件みたいな、根本的な反抗の原理を持っているわけではない。あくまでも条件闘争です。農民の側からすれば、領主に年貢を取られる理由はないはずなのに、納めない、とまでは言わないんです。一見、反体制運動のように見えるんだけれども、本当うの反体制には絶対にならない仕組みになっている。農民は必ず領主に対して、納税の義務があるという、負債の感覚を持っていて、それを前提にした上で、負債を小さくして、と要求するだけ。(p.256)

     安定しているがゆえの、幕藩体制の究極の歪み。領土はもう絶対に、拡大できない。でも統治にあたっている武士は、戦闘者集団である。戦闘なき戦闘者集団問いう矛盾が、幕藩制のベースにある。でも250年あまり、決定的な破綻には至らずにやってこられた。それがちょっとした外圧で大きく変化したのも、もともとごまかしていた弱点を抱えていたからだと思います。(p.325)

     日本の近世社会は、職業の流動制がかなり高くて、社会学用語で言えば、社会異動の可能性が結構あるんですね。身分制のわりには。そもそも士農工商で商が一番下なのですが、商人が軽蔑されたり、自己卑下していたかといえば全然そんなことはない。商人こそ、むしろ、成功するチャンスもかなりあった。
     だからこそ、文字を学ぶことに意味があるわけです。文字を学んでいれば、成功し、裕福になる可能性が高まる。識字率の高さは、近世の幕藩体制がいかに社会異動の可能性を内蔵していたかを、証明していると思うんですね。(p.411)

  • 「ふしぎなキリスト教」の社会学者二人が日本の歴史に語り合った内容をまとめた本。
    歴史の流れに従って書かれているけれど、それぞれの時代の中での天皇の位置づけの変遷が興味深い。
    「あさきゆめみし」だとか「世に棲む日日」を最近読んだっていうこともあるけれど。カミの子孫であったり、お飾りであったり、神輿にのせられたり。
    学生の頃、歴史の授業で習った単語が出てくるけど、そういった点を線で結ぶ作業もしないとな。

  • おもろい。
    この島に住んでいると当たり前だと思うことが、意外と世界的にみるとマイノリティな事のオンパレードなんだなって。

  •  元気と言えば、「元気ですか~」のあの赤いマフラーをした萌える闘魂が浮かんでくる。とはいっても本書にあの人は登場しない。日本人のルーツと価値観や行動様式はどうなのかと言ったことを探っていくことで「二十一世紀を生きる日本人、元気の源」を見ていこうという趣旨で書いたそうだ。



     読んでいくと不思議に思っていたことが次々と出ている。日本の土器は、世界で一番古いのか、大きな古墳が造られたのか、貴族なるものが存在するのか、など。



     新書の割には分厚いが、読み進むのに苦労はしない。『歴史上の出来事を、社会学の方法で、日本のいまと関連させるsディかtが出掘り下げた」とあるので、カビの生えた歴史にはならない。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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