老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883979

感想・レビュー・書評

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  • えらい人はこれ以上新しいものを作る意味をどう見出しているんだろう。

  • 「人口減少社会」なのに「住宅過剰社会」というのは確かに不思議である。今後、空き家は増えて、住環境もおいていく。その現実を突きつけられる。このような社会の中で、いかに生きていくべきか、を考えさせられる。

    そのためには、自分たちの無関心もやめるべきだし、行政の都市計画・住宅政策も転換して行かねばならない。いずれにせよ、最近、この「住」という話題には関心があり、もっと学ぶ必要性を感じている。

  • メモ
    ・湾岸エリアは眺望の陣取り合戦。
    ・公共施設、教育、医療、福祉系施設などの施設も、人口減少、財政難により、統廃合され、現在より広域エリアを対象とせざるを得なくなるなるでしょう。
    ・「週間東洋経済」によれば、首都圏の鉄道網を持つJR東日本ですら、黒字なのは全70路線のうち18路線しなかく、52路線が赤字。赤字ばかりの地方都市では、自治体が税金で路線維持のために支援している場合が多いですが、このまま支援を続けられるかは疑問であり、近い将来、路線の廃止が相次ぐ危険性が懸念される。
    ・長期的に見ると、低蜜に拡大した郊外の住宅は、住宅単体としての話はさておき、周辺のまちを含めた住環境として見た場合に、今のように暮らしやすいままであるかは極めて未知数。
    ・「30年一括借り上げ」サブリースは、サブリース会社が損をしない仕組み、ビジネスモデル。羽生ショック。
    ・都市計画の規制緩和のあり方の抜本的な見直し
    ・大都市のまちのスポンジ化。中心部は古く、その周辺は新しい。日本の都市計画や住宅政策が、住宅供給を市場原理に任せたままで、これまで作ってきたまちの新陳代謝を生み出そうという意識や意欲が不足していた。
    ・難問だから無理だと言って思考停止するのではなく、やらない理由ばかりを見つけるのではなく、将来世代に今よりさらに良い遺産として引き継いでいけるように、知恵を出し合うことが真に求められているのです。(いいこと言うなあ!)
    ・ドラマ金曜日の妻たちへ、の舞台ともなった町田市は、高度経済成長期に開発された郊外のおしゃれな新興住宅地として注目を浴びました。その時代のあこがれとなるような良好な住宅地であっても、現在の居住者の寿命が尽きる時期から一気に空き地が増える危険性がある。
    ・2025ねん頃、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる。2035年頃には、団塊世代の死亡数が一気に増えると予想される。この時期に放置されるケースが多いのでは…
    ・住宅地の行く末は、団塊世代の死後、相続する子ども世代(団塊世代ジュニア)がどのように取り扱うかにかかっているといっても過言ではない。(なるほどー。)
    ・住宅の終末期にババ抜きが始まる。空き家の維持管理費、解体費用を誰が負担するのか。自治体が行政代執行を行う場合というのは、よほどのケースのみ。
    ・分譲マンションの居住者が亡くなった後、相続人は相続したマンション住戸に住まなくても、固定資産税や管理費等を支払う義務が生じる。そのため、マンションを相続しても自分は住まずに賃貸にする場合も多い。…相続人全員が相続放棄した場合、管理組合は相続人財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があり、最終的には相続財産管理人が、その住戸の処分をすることになります。しかし、この申し立てには、数十万もの予納金に加えて、司法書士などの申請代行費も必要となり、たとえ物件を売却しても、管理費滞納分すら回収できない可能性もある。高齢化した管理組合にこのような難しい対応ができるのかという問題もある。今後、相続放棄される住戸が急増していくと、仮に相続財産管理人の選任という難しい手続きや対応ができない場合、管理費が徴収できない相続放棄された住戸が増加ひ、マンション全体の費用が不足するなど、維持管理に影響を与えかねない。

  • 2025年以降、東京圏は高齢者が激増し生産年齢人口が減少していくため、地方圏より相対的に貧しくなっていく。

  • 自分の問題意識にピタッとはまった本でした。

    自分が今住んでいる町は、たぶん僕が死ぬまで、今と同規模の町としてきちんと機能すると思うんですが、自分の実家がある市は、このままいくと、僕が死ぬ頃には、市としての機能が相当衰えていると思うのです。

    都市が都市として機能するために、住宅から考えることは、とても意味があることですし、考えやすいと思います。
    より多くの人に、この本のような視点をもってもらいたいものです。

  • 「15年後には3戸に1戸が空き家に!」「再自然化」する空き家、スラム化する分譲マンション、漏水・破裂する水道管???日本が都市部も周辺部も壊れていく・・・。何とかしなければ!

  • 長期的に考えてどこに住むかという選択がますます大切になってきますね。所有から利用という選択も進んでいくように思います。

  • さもありなん・・というデータが示されていた。

  • 都市計画に関する法律に関しては全く知識がないところではあるが、法規制をもって街をどのようにゾーニングしていくかということに関心があったので手にしてみた。
    集落が無尽蔵に広がるとそれに併せた道路・上下水道などのハード整備が必要となることから、一定の法規制は必要であると私は思うが、権限移譲により市街化区域の線引きが県から市に委譲されたことにより、一部問題が生じてしまった事例も紹介されている。
    世帯数は増えているとはいえ、今後人口減少傾向にあるのだから、コンパクトシティを目指すのが良いのではないかと個人的には思うのだが。
    そんなことを考えさせていただけた一冊。興味がある方は手に取ってみてください。

  • 私たちは人口減少社会なのに、住宅過剰社会という不思議な国に住んでいると著者は言う。
    湾岸エリアのマンション群や、再開発と称してノキノキ立ち並ぶビル群を見ると、これだけの建設物が人口減少時代に必要なのか?いつも疑問に思う。

    そのカラクリについて本著は詳細に述べている。
    一つには住宅建設業界が土地取得費や建設費といった初期投資が短期間で回収できるために事業性を確保しやすく、住宅を引き渡し後の維持管理の責任も購入者に移るため事業リスクが低いことによるという。(そして常に作り続けないと収益を確保できないビジネスである。)

    結局は住宅を供給する産業がある限り、住宅は造られ、商品を仕入れて売る、その利ざやで儲ける仕組みは、基本的に八百屋と変わらない。違いはその商品特性であり、売られてからの商品ライフサイクルや波及効果、社会的なインフラの必要性といったところだ。
    特に問題なのは、住宅が現在のように野放しに社会的インフラも整っていない地域に虫食いのように建てられ、その居住地整備(道路、水道、ゴミ収集、学校 etc)に税金が投入されざるをえないことだ。
    無駄な住宅供給が止まらない理由は、住宅産業だけではなく、人口増加させたい自治体、土地で儲けたい地権者などの思惑も絡む。

    住宅を購入する者は、こう言った供給側の思惑の裏を読み、その土地の将来を見据え、町全体の持続可能性を冷静に考えて居住地を選択していかねばならないだろう。
    が、どれだけ人々に選択権があるのだろうか。
    自分の属性(仕事や出身地)に縛られる部分は多いだろう。

    自分たちの街への問題意識を持つことを解決の一つとしているが、新しい街ほど地域への帰属意識を形成することや住民同士の交流を図るのは難しい。
    一住民として、何ができるか、その範囲はとても狭いように思える。

    読み終わって、絶望的な気持ちになる部分が多く、それだけこの問題の根深さを感じる。
    防衛できることはあえて住宅を「使い捨て」することかもしれない。
    これだけ過剰な住宅供給があれば、安い中古住宅も増え、住み替えももっと容易な社会になるだろう。

    ただし流動性は政府の思惑で阻まれる可能性はある。人々を土地に縛り付けておくために、住宅ローンを低金利で組ませ、ローンに減税措置を取り、一見優遇されてお得に見せる。

    将来的には地方ではなく中央政府が都市計画をもっとコントロールする社会になるかもしれない。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。1996年、大阪大学大学院環境工学専攻修士課程修了後、ゼネコンにて開発計画業務等に従事。その後、東京大学大学院都市工学専攻博士課程に入学、2002年、博士号(工学)取得。東京大学先端科学技術研究センター特任助手、同大学大学院都市工学専攻非常勤講師を経て、2007年より東洋大学理工学部建築学科准教授。2015年より同教授。共著に『白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか』(学芸出版社)、『都市計画とまちづくりがわかる本』(彰国社)がある。

「2016年 『老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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