- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062883979
作品紹介・あらすじ
私たちは、「人口減少社会」なのに「住宅過剰社会」という不思議な国に住んでいます。
住宅過剰社会とは、世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が右肩上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼畑的に広げながら、住宅を大量につくり続ける社会のことです。
空き家が右肩上がりに増え続け、15年後には3戸に1戸が空き家になってしまうにもかかわらず、都市部では相変わらず超高層マンションが林立し、郊外では無秩序に戸建て住宅地の開発が続いています。
多くつくられ過ぎた分譲マンションは、入居者が減ってしまうと、管理が杜撰になってゆき、スラム化などの治安の悪化を呼びかねません。戸建ての空き家もまた害虫などが住みつき、周りの住環境を悪化させてしまうでしょう。
かたや、住宅地が無秩序に広がると、それだけ新しい水道などのインフラや公共施設が必要になり、そのために多額の税金が費やされます。
このままでは私たちが「まち」に支払う税金の負担がかさむ一方で、住環境は悪化の一途をたどるという末路が待ちうけるのです。
最近、自分の「まち」が住みにくいと感じることはないでしょうか?
住みにくいと感じるとしたら、それは実は、住宅過剰社会が生み出しているのかもしれません。
【本書の内容】
第1章 人口減少社会でも止まらぬ住宅の建築
1.つくり続けられる超高層マンションの悲哀
2.郊外に新築住宅がつくり続けられるまち
3.賃貸アパートのつくりすぎで空き部屋急増のまち
第2章 「老いる」住宅と住環境
1.住宅は「使い捨て」できるのか?
2.空き家予備軍の老いた住宅
3.分譲マンションの終末期問題
4.住環境も老いている~公共施設・インフラの老朽化問題
第3章 住宅の立地を誘導できない都市計画・住宅政策
1.活断層の上でも住宅の新築を「禁止」できない日本
2.住宅のバラ建ちが止まらない
3.都市計画の規制緩和合戦による人口の奪い合い
4.住宅の立地は問わない住宅政策
5.住宅過剰社会とコンパクトシティ
第4章 住宅過剰社会から脱却するための7つの方策
感想・レビュー・書評
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住宅過剰社会の問題は影響範囲が広いので、皆が理解を深め議論しないといけないテーマですね。人ごとではあり得ません。
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2019.08.20 ショッキングな内容。わかってはいるが、改めて突きつけられるとかなり焦る。このままでは都市は崩壊してしまう。厳しい現実だ。
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・空き家のタイプ4類型:賃貸空き家、売却用空き家、二次的住宅、その他空き家
・2023年には5戸に1戸、2033年には3戸に1戸が空き家
・全国の空き家の52.4%(429万戸)が賃貸住宅。サブリース -
日本は空き家も老いた住宅も右肩上がりに増加し続けている。しかし、タワーマンションや地方郊外での新築住宅は増えている。
これは新築住宅に対して積極的に支援してきた日本の長い歴史が関係していると述べる。(経済危機のたびに、税金を投入して住宅ローン減税を行ったり、固定資産税等の税制上の優遇処置を拡大するなど。)
最後に筆者の思う方策が書かれてるがどれも抽象的すぎて記憶に残らないのが残念。
海外の例でアメリカデトロイトで2003年にランドバンクが設立され、放棄される空き家を管理している例があげられていた。 -
自分の住んでいる街の様子をずっと見ていて漠然と感じていたことをきっちり説明してもらった気分。このままでは絶対まずいことも、だからといってすぐ解決できる問題でないことも、
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住宅ではなく、住めない空き家が過剰なのではないだろうか。問題意識には同意するが、ミクロ経済学的な視点がもう少し前提にあれば、建設的なインプリケーションにまで到達できると思うのだが
【感想】
大学の研究者による本なのだが、ややイシューを洗練させ切れていないというか、ホットな問題トピックをつらつら並列で書いているような本。ジャーナリスティックな書きっぷり。新書で、手広く問題を取り扱いたいからだろう、と思える。やや言葉の選び方、現象の描き方がミスリーディングチックに思えた。例えば、再三「日本は人口が減少しているのに、住宅が作られ続けているのはおかしい(問題)」と語られるのに違和感がある。確かに、その文を読めば、なんだかおかしいような気がするが、このセンテンス自体がミスリードであると思う。もう少し現象を正しく記述するなら、「一部の人気の地域には住宅が増やされ続けている。一方、人気の無い地域からは人が減り続け、元の住居は放置されている」ということである。これは長年言われ続けている現象「都市への一極集中」「田舎の過疎化(建物放置)」とほぼ同義だと思う。それを、あえて俯瞰して眺めることで、別の問題を浮き彫り?にしたいという事だろうか。ただ、そのマクロ的視点を持ち込んで、どのようなインプリケーションが生まれるのか?私には掴みきれなかった。
「住宅の供給過剰」という言葉もミスリーディングに思う。正しくは市場に流通しない持ち手も不明な空き家がたくさんある一方で、新しいマンションや住宅が作られ続けている、という事だろう。市場に出てきていない、もしくは買い手がつかないような空き家・家はそもそも経済学上「供給」されていないに等しい。それらを含めて「住宅」として括ってしまうのは、現象を誤認しているように思う。問題の本質は「空き家」や「古い家」が市場供給されていないことではないか。研究者であれば、ではいかにそのマーケットデザインをするのか、政策デザインをするか、という話があるかと思ったが、そのような記述は少なかった。どちらかというと、ルポ的な記述が中心である。「建設業界はどうしても短期的な利益を追い求めて、家を建て続けてしまう。」「需要があるからといってタワーマンションを建て続けている、それで付近の景観が悪くなっている。」「不動産は『負』動産になってきた」などのような悪い現象の記述に文を割きがちである。本書を読むと、どうしても今の住宅企業や、自治体が都市計画・条例を整備していないのが悪いように感じてしまう。ただ、彼らはきちんと自己利益の最大化をはかっているだけなので、それを外から批判してもインプリケーションは弱い。もう少し、当たり前のミクロ経済学的視点があれば、面白くなるのになぁ、と思った(研究者の本に期待するコトとしては) -
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小論文・進路コーナー -
SDGs|目標11 住み続けられる まちづくりを|
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https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685762 -
2021/04/12