真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884259

感想・レビュー・書評

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  • 得たもの:
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    日本的な人事慣習として評判の良くない「長期雇用志向」「年功序列型賃金制度」について、「イノベーションを産むために必要な人事制度」という方向性の目線を得ることができた。
    企業人事を考える上でいたずらに社内での昇格降格を激しくすれば良いと言うわけでもないと言うバランスの良い感覚を持つ一助になったように思う。

    内容:
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    感想
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    読んでいる時は「ふむふむ」と納得しながら読めた。

    (1) アメリカがイノベーションを生み出し繁栄したのは軍事産業のおかげ

    (2)日本の「終身雇用」的な人事制度はイノベーションに必要な

    「長期の濃密な人間関係」

    を築く上では有効であり、必ずしも時代遅れで廃止しないといけないというようなものではない。

    (3)アメリカは株主利益を偏重するがゆえに四半期(超短期)業績主義によってイノベーションの力はむしろ落ちている。

    (4)日本の停滞の原因は金融政策の失敗と、(3)のアメリカ型ガバナンスを導入したことによってイノベーションが生まれなくなってしまったからだ

    (5)日本は長期目線でイノベーションを生み出す「老舗企業」を増やすことを目指すべきだ

    このような感じかと。

    確かに、

    「アメリカ型の超短期業績主義のガバナンス=イノベーションを生んでいる」

    と短絡的に結びつけていたのでそれについては目線を変えることができた。

    ただ残念なのは、そうは言っても現状、アメリカや中国の企業がどんどん売り上げを伸ばしていて、日本企業が売り上げを伸ばせていないのは事実なので、それに対して日本がどうしていくのかと言うアイデアがあまりなかったのは残念。

    なんでもアメリカの経営を真似したら日本も良くなると言うことじゃないと言う目線を与えてくれた本であると思う。


  • うすうす、そうじゃないかなーと言葉にできずに思ってたことが、明確な根拠をつけてバシバシ書いてあって、まさに膝を打つってかんじだった。

  • 失われた平成の30年が、どれだけ間違った方向へ進められていたのか・・・中野先生の視点は「鋭い!」と感じさせられます。
    失われた30年を取り戻す「令和」に時代を作れるのか?
    早々に世代交代を望みたいと思います。

  • 自分は大企業側の人間なのだが、確かに入社した90年代から少しづつ研究開発が近視眼的になってきて、成功確率だとかリスク評価だとか訳の分からない算数を駆使して不確実なことを避けるようになってきた。こんなことでイノベーションなんか起こるわけがないのだが、その変化と経営陣がコーポレートガバナンスを叫び始めたり、業績評価にROAを取り入れたりしだした時期が重なる。著者の分析は概ね正しいと思われる。
    でも日本人は何か手本がないと何もできないのですよ。太古の昔から。「発展途上国メンタリティ」、まさにその通り。であるからして、バブル崩壊後に自信を失ったリーダー層がアメリカを手本にするのは必然だし、それに味をしめた特権階級層が益々その路線を突き進んだのも必然のように思われる。当時進むべき道が他にあったのか。仮にあったとしても日本人には見つけられなかっただろう。残念だけど。

  • ■メインテーマ
    アメリカのベンチャー企業やいのへに関する恐るべき実態と根の深い問題とは?

    ■著者の主張
    共同体的な組織や長期的な人間関係からイノベーションが生まれるのだが、ベンチャー企業などの短期的で流動化した市場環境を推奨する動きが日本にはある。

    ■学び
    何百年も生き残っている老舗企業のサバイバル力に目を向けるべきだが、日本企業は地味で保守的な印象を生む。だから多くの人は、突然現れた勢いがあるベンチャー企業に目がいってしまいそのイメージにより、イノベーションは日本では生まれにくいとなったのだろう。

  • 第一章 日本でベンチャー企業を増やすには
    あるコンサルタントの提言/アメリカの国家戦略?/自分の頭で考える/ベンチャー企業を増やしたいのか、イノベーションを促進したいのか/なぜ、シリコンバレーだけなのか/なぜ、外国人の起業を優遇すべきなのか/なぜ、「英語実戦力の抜本的強化」「(企業の)英語公用語化」が必要なのか
    第二章 起業大国アメリカの真実
    アメリカにおける開業率の低下/大停滞に陥っていたアメリカ/起業という幻想/生産性が低いベンチャー企業/アメリカのベンチャー企業振興策/ベンチャー・キャピタルが生まれた背景/ITも軍事政策の産物
    第三章 ベンチャーキャピタルの目利き術
    ベンチャー・キャピタルの投資判断/世界一シビアなベンチャー・キャピタル/リスクをとるということ/リスク計算の罠/ベンチャー・キャピタルの判断基準/人を見るということ
    第四章 最強の起業家は誰か
    大企業からイノベーションが生まれない理由/大企業におけるイノベーションの理由/硬直した組織がイノベーションを起こす/起業家国家
    第五章 オープン・イノベーションの本質
    あらゆるイノべーションがオープン・イノベーション?/クローズドな日本企業?/イノベーションが消える/オープン・イノベーションの問題点/クローズド・オープン・イノベーション/イノベーションの源泉/長期雇用/個と共同体
    第六章 なぜイノベーティブな企業のほうが負けるのか
    長期の競争vs短期の競争/IBM復活のからくり/「人工知能の父」の嘆き/国の成長力が弱まる/クリステンセンの嘆き/新自由主義と金融化/金融化がイノベーションを阻害する/金融化の産物としてのベンチャー・キャピタル
    第七章 なぜ日本経済は、いつまでも停滞から抜け出せないのか
    マイケル・ポーターの心配/短期主義をもたらした構造改革/洗脳された官僚の影響/ROE包囲網/敗戦工作の歴史/アメリカではの守/平成不況の真の原因/根の深い問題

  • ■ひとことで言うと
     日本的大企業の価値観こそ、イノベーションの源泉

    ■キーワード
     ・アメリカ経済は40年以上停滞
      →アメリカはもはや企業大国ではない
     ・イノベーション=不確実=計算不可能
      →イノベーションへの投資=不確実性への資源動員
       →矛盾の正当化が必要
     ・イノベーションへの投資には強い権限、営利目的の超越、価値観の共有が必要
      →日本的大企業で育まれやすい価値観
     ・オープン・イノベーション=標準化⇔差別化
      →競争力の低下
      →クローズド・オープン・イノベーション(限定された関係の中でのオープン・イノベーション)を目指せ

  • シリコンバレーは軍事政策の産物、米国のベンチャーキャピタルは金融業、オープンイノベーションは短期利益の追求など日本で蔓延する米国礼賛を否定しドナルド・ドーアが絶賛した日本的経営の復活を啓蒙する書。米国は四半期資本主義だと糾弾し、それに追従する日本政府の経済政策である構造改革こそが現在の低迷を招いている元凶と批判する。締めは例によって新自由主義とグローバリズムの否定になります。レーガン、サッチャーで新自由主義の先駆者であった、アングロサクソン国家が、トランプ大統領を誕生させ、ブレグジットに向かったのは決して一般大衆が愚かだった訳ではないのだな。

  • 富山氏、赤羽氏を一刀両断していて痛快

    オープンイノベーションは個人的にお遊びだと思っていましたけど、やはりそうなのですね

    データ、ロジックで完膚なきまでに通説をひっくり返すロジックに舌を巻きます

    ただし、じゃあどうすれば?
    という提言がないのが残念なところ
    言いたいことはわかるけどもう昔には戻れないじゃん
    将来について考えようぜ、と

  • 涙出そうになった。
    最近回り回ってMMT(現代貨幣論)と遭遇し、「お金」に関する認識を180度変えさせられた上で、これを読むと本当に涙が出そうになる。
    なんていうか、元々古典的素養教養がない上に、こっちがいい、あっちがいい、これを知らないとバカだ?という情報商材屋的なものにも大いに振り回されて、結果何も残ってない…的な現状に「いったい私は何をやってるんだ…?」というモヤモヤの答えがここにあった。

    刊行当時にも気になっていた1冊だが、MMTを理解していなければやはり金融関連のことが理解できなかっただろうから、今読むのが私にはちょうどよかったのかもと思う。遅いけどねぇ~。

    この「リアリズム」「当たり前」の軸感覚を養う教育というのが、自分の軸の無さ&揺れ加減を顧みてもすごく大事と思う。「正しい痛い目」には早めに出会っておくに限る。また「正しい痛い目」にちゃんと誘導してくれる大人との出会いも大事ね。自分がそういう大人になれていってるといいんだけど。

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著者プロフィール

中野剛志(なかの・たけし)
一九七一年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。九六年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。二〇〇〇年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。〇一年に同大学院にて優等修士号、〇五年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ベストセラーズ)など多数。

「2021年 『あした、この国は崩壊する ポストコロナとMMT』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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