生物学の歴史 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062922487

作品紹介・あらすじ

『われはロボット』『黒後家蜘蛛の会』などのSF作品やミステリーで世界中に読者をもつアイザック・アシモフは、作家であると同時に、ボストン大学医学部の教授を務め、生化学の研究者として多くの一般向け科学啓蒙書も著している。
本書は、アメリカの自然史博物館が出版したAmerican Museum Science Books という叢書の1冊として刊行された。
生物学は、生命についての関心から始まり、古代より長い歴史を持つが、博物学や医術、遺伝学や化学のあいだで揺れ動き、自然科学の一分野として体系がまとまり大きな進歩をとげたのは、20世紀に入ってからだった。特に20世紀後半の分子レベルで生命現象を捉える研究は日進月歩である。
こうした、長く、広範、複雑な生物学の歩みを、一人の著者が簡潔にまとめあげるのは至難の業だが、アシモフの博学と文才はそれをなんなくこなしている。
生命と非生命の境目はなにか。人類は生命の謎にいかに取り組んできたか。いま最も熱い学問分野の基礎知識を整理した、恰好の生物学入門書。

〔原本:『生物学小史』(「アシモフ選集」生物編1)、1969年、共立出版刊。 原著:A Short History of Biology, 1964〕

感想・レビュー・書評

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  • 紀元前からの生物学の歴史をこれでもかと詰め込んだ教科書的な本です。1960年ごろにアメリカの自然史科学博物館の企画で書かれ、その後、全訳されアシモフ全集の一角に埋もれていました。2014年に講談社学術文庫から一冊の本へと変わりました。
    生物学の進歩は目覚ましいものがあり、分子生物学以降は正直なところ、物足りないものがあります。シッダールタ・ムカジーの「遺伝子」で補うといいと思います。とはいえ、逆に言えば、それ以前生物学の歴史をこのように一般にも簡単に読めるようにまとめた本は希少で、生物学に興味を持つ人ならばぜひ読むべき本です。
    また、当時の時代背景なのか、何箇所か日本人をわざと省いたのではないかと思えるところがありました。戦後といえど、公正に評価してほしかったところです。

  • 生物学の知識がほぼ皆無だと、読破は難しいかもしれません。苦戦した一人としての感想です。

    生物学と一口に言ってみても、人間、動物、植物、化石、寄生虫、ウイルスと様々な種類があります。生物学について興味がある方でしたら、自分が何に一番心を惹かれるのかを探すには良い本だと思います。

    個人的には、解剖学が面白かったです。昔、動脈は空気の管だと考えられていたそうですよ。

  • その名の通り、生物学の歴史。人類による科学研究の大河を体験できる。オススメ!

  • 頭には残りづらい。。。

  • 生物学の知識が得られるだけでなく、生命にまつわる論争や発見の歴史が物語としても興味深い

  • 古代から1960年代初頭までの生物学の歴史を、思想と事実、観察・実験技術、理論の変遷から語り尽くした本。
    前成説/後成説、進化、機械論/生気論といった思想の変遷が、実験・観察・解釈のみならず研究テーマの設定に強く影響を与えることが見て取れる。

    特に古代から中世にかけては、誤った理論を信奉する学者と実際の対象を観察する実務家が分離していることが、発見のスピードを妨げているように読めた。一人で学者も実務家もやるような人物が現れたときに、新たな観察から理論を更新するという現象が見られた。例えば、解剖学は好例である。また、ド・フリースが、農夫が知っている現象に自らの実験で行き着き、メンデルを再発見したエピソードもこの例である。

    新たな概念や計測技術の出現により、過去から何度も議論された問いに対する説明原理が精緻化していく。分解ができると予測や制御ができるようになる。このパターンが随所で見られる。また、一度新たな説明原理が奏功する例が出ると、その説明原理を他の対象にも援用するということも繰り返し見られるパターンである。

    観察と理論の両輪が重要となる。外科医が消毒したゴム手袋とマスクをつけるようになったように、それまで気にかけていなかった因子が原因になっているかを実験検証することで、行動を変化させたり制御したりして、アウトカムの成功率を上げたり、予測精度を高めることができる。

    見事な実験が生物学を一歩進める事例も豊富に紹介されている。特に、サンガーによるアミノ酸配列決定法の開発は、ペーパークロマトグラフィを計算機としたアルゴリズムと提案としても解釈でき、興味深い。


    あと、生物学の諸分野の間の関係がよく説明されていると思った。

    アシモフが生化学の教授であることを初めて知った。

  • ‪生物学の歴史を、社会情勢、他分野の研究動向、技術発展と結びつけながら通観した一冊。進化論前夜までは文句なし☆5。後半は駆け足になっててややつらい。絶対的なボリュームが多いからしかたないのかな。あと、訳者が意図的にやったのだろうけど、文章がどこまでも直訳的で、人によっては読めなそう‬

  • 有名なアイザック・アシモフが書いた生物学の歴史の本。
    相変わらずアシモフの守備範囲の広さに驚かされる。しかし、やはり本職はSFや化学なのか?それらについて語った本と比べると、多少物足りなかった感は否めない。古い本でもあるし、純粋に生物学の歴史を学びたかったら、今はもう少し適した本があるかもしれない。

    本題とは関係ないが、化学や物理と同じく、生物学の歴史においてもアリストテレスの名が登場したことに驚いた。アリストテレスと言えばアレキサンダー大王の家庭教師も務めたこともある人物だが、一体どれほど多才な人物だったのだろうか。自然科学の他にも政治学など、人文学の面でも多大な貢献をしている。彼が生きていたのは約60年だったそうだが、よくこれだけのことが成し遂げられたものだと感心する。恐らく彼は、「全てを知りたい」という知的好奇心の塊だったのではないだろうか。

    今はアリストテレスの説にも間違いが多々あったことが分かっているが、それでも彼が多くの学問の扉を開いた最初の人物であることは永久に評価されることだろう。

  • 図書館で新着棚を見ていたら、アイザック・アシモフというSF作家(名前だけは知ってるが作品はなにも読んだことがない)が書いた『生物学の歴史』があり、カバー裏をぴらっと見たら「人類は「生命の謎」とどう向き合ってきたか。…(略)…SFやミステリー作品で知られる生化学者・アシモフが博識と文才を存分に発揮し、その長く複雑な歩みをやさしく描き出す。」などと書いてあったので、借りて読んでみる。

    原著はなんと50年前(1964年)に出たもの。それが1969年にアシモフ選集のなかの『生物学小史』として訳され、45年後のこの夏に文庫になったらしい(図書館の蔵書検索をすると、この古いほうの本もあった)。

    そんなに古い本はどうかなーと思ったけど、50年前の、分子生物学がブイブイいわせはじめたあたり(この本の最後の2章は分子生物学にあてられている)までの歴史を、古代や中世の生物学の話から書きおこした内容は、なかなかおもしろかった。

    生物学に限らないのだろうが、今も現役で使われている用語の多くは「ギリシャ語で、○○という意味のナントカ」として名付けられているのが多く(たとえば、動脈という語は"空気の管"という意味のギリシャ語に由来するとか、ペプシンは"消化すること"という意味のギリシャ語に由来するとか)、それと△△さんが発見したから△△ナントカみたいな名付けもわりとあって(クレブズ回路はクレブズさんで、ゴルジ体はゴルジさん…等)、そうか、これは人の名前だったのかと思ったり、よく観察してそのはたらきをつかんだ名付けをしてるなと思ったり。

    そして、現代にいたるあいだの、とくに宗教とのタタカイというのか、「生きてるものは神がつくりたもうた」という信仰が今よりずっとずっと強かった時代に、それでも生物の体はこうなってるし、進化はこうなってきたはずだと調べてきた人たちがいたところに、強くうたれた(ガリレオの「それでも地球は回る」のように)。

    やはり革命のような社会の激動が起こると、かつての権威はゆらぎ、新たな価値観や考えが浸透するきっかけになるんやなーとも思った。

    ▼ビュッフォンの死んだ翌年起こったフランス革命は、ヨーロッパを深刻にゆさぶった。変革の時代がやってきて、その間に古い価値は粉砕され、決して回復しなかった。絶対的な権威として王と教会を容易に受け入れることが次々と各国で消え去っていき、初めは危険な異教であった科学的な説を提案することが可能になってきた。(p.69)

    (ビュッフォンは「のん気で、保守的で用心深いフランスの博物学者」(p.68)で、44巻の百科事典を書いたそうだ。)

    生物学では必ず習うはずの「メンデルの遺伝の法則」も、1860年代にメンデルが発表した当初は注目されず、いちどは埋もれ、後にそれが同時期に別々の3人に再発見された(かれらは自分の研究を1900年に発表した)という話にも、歴史を感じる。

    アシモフには、『化学の歴史』という本もあるそうで、これも読んでみたいと思う。

    (11/26了)

  • 生物学の歴史概観。
    その時の人の解釈が、新事実の発見や道具の発展により覆され、新たな意見への反論があり、検証があり、定着する。
    その積み重ねが「今」をつくる。
    全体を見渡すためのまとめとしても、初心者むけのガイドラインとしても優良。
    知識がなくても読みやすい。

    私は科学が苦手なので、二十世紀の分子の話あたりになるともうよくわからないし、それ以前だって「なんか教科書で見たような気がする」程度にしか知らないことがたくさんある。
    そんなわずかな知識のかけらでも、全体の中の位置を知るにつれ意味をもっていくのが楽しかった。
    言われてみれば当然だけど、言われるまで考えもしなかったことがたくさんある。
    知りたいことも増えた。

    原著は1964年出版。50年前の本だから、もちろん50年前の「現時点」で終わっている。
    「月への到達」だって「だろう」で語られる。
    今生きていたらどんな風に書いただろう、読んでみたいとつい思ってしまう。
    ほぼヨーロッパ(そのうちアメリカ)でことが進むのはまあ仕方ないか。

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著者プロフィール

Isaac Asimov (1920―1992 )。アメリカの作家、生化学者。著書に『われはロボット』『ファウンデーション』『黒後家蜘蛛の会』等のSF,ミステリーのほか、『化学の歴史』『宇宙の測り方』等の科学啓蒙書やエッセイが多数ある。

「2014年 『生物学の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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