三陸の海 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062932240

作品紹介・あらすじ

夫・吉村昭がこよなく愛した三陸海岸が大津波に襲われた。四十年以上も前に体験者の証言をもとに、繰り返しこの地を襲う津波について警鐘を鳴らす『海の壁 三陸沿岸大津波』を著した夫は、この度の大震災を知ることなく逝った。深い縁で結ばれた大切な人々を訪ねる旅は、夫婦の軌跡をたどる旅でもあった。

感想・レビュー・書評

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  • 「三陸海岸大津波」からの流れで。かつて上野発の夜行列車で田野畑村に足を運んだことがある者として非常に懐かしい思いで読ませてもらいました。吉村昭氏と村を繋ぐエピソードの一つ一つがとても印象的。80代半ばにしての津村さんの健脚、健筆にも感服しました。

  • 子どもたちが小さい頃は夏の旅行でよく三陸に行った。田野畑村には行ったことがなかったが、三陸の美しい海の景観を今も思い浮かべることができる。同じ東北に暮らしながら大震災以降未だに行く事が出来ずにいる。地震や津波が怖いわけではない。たぶん多くの人が亡くなった事を直視することが怖いのだろう。しかしそろそろ行って見なければならないとこの本を読みながら考えた。

  • 2011年 3月11日 東日本大震災!
    今でも、あの時、テレビで放映しているシーンは、ドラマ?特写?なんて、、、思える位衝撃的であった。

    この本の作者 津村節子氏が、新婚時代、夫 吉村昭氏と、辛苦を共にしながら通った三陸海岸の悲劇。
    何もない陸の孤島。田野畑村。
    今は、吉村昭文学碑、津村節子氏のの詩碑が、建造されている。
    田野畑村の岬を購入した吉村昭氏が、軽井沢みたいな高原の村と、例えたら、村長が軽井沢に海がありますか?と、、、、本当に、交通にも不便な、何もない村に思いを込めてる。

    無医村のこの村に、将棋面誠(しょうぎめんまこと)氏が、診療所にやって来る。彼も、その家族も、一緒に。
    その妻は、ガンに冒されていたのに、、、、彼は、彼女の死後も、この村で、医師として、続ける。

    何が魅力的であったのか?
    そこの村人達の優しさもあるのだろうが、、、、

    吉村氏が、購入したこの土地に、妻の津村氏は、初めはあっけに取られていただろうが、、、津村氏も、そこはかとなく、この土地に愛着が、あったのであろう。
    本の印税を振り込んでいたことも書かれている。
    現地に行けないのなら、何かに役に立ちたいと、、、、

    我が息子は、この2011年2月末、大学院からトルコへ留学したのだが、トルコでは、日本からの震災の報道は、日本が破壊された如くの報道であったようだ。
    やはり、息子も、トルコで、義援金の募金活動を実行した。
    何かしなくてはいけないという気持ちが、大きかったのは、作者だけでなく、皆同じ思いだったと、思う。

  • 「遍路みち」「紅梅」、夫であり大作家である吉村昭氏追悼の作品、そして「三陸の海」は津村節子さんの吉村文学引き継ぎの作品でしょうか~!2013.11刊行、2015.10文庫化です。二人で東北、北海道を行商した苦しかった新婚時代、芥川賞、直木賞の候補2度、3度の死に物狂いだった頃、そして津村さんが眺めるアルバム、田野畑村8冊、長崎8冊。吉村文学の原点が田野畑村!「三陸海岸大津波」では「3.11」の40年以上も前に警鐘を。吉村氏の「星への旅」も読みたいです。津村節子さんの吉村昭さんへの深い愛が胸を打ちます!

  • 改めて三陸に思いを馳せます

  • 311で被災した田野畑村での夫、吉村昭との思い出語り。

    何も無い村の岬を買ったエピソードなどは、夫に対して愚痴るようなニュアンスがあるように思われ、また他のエピソードにもちらほら文句っぽい言い回しが見られるような気がしちゃいました。

    けれど夫との思い出を細かく記すことができてるところに、夫との強い心の繋がりを感じます。締めの文章は、この本に書かれたすべてのエピソードを思い出しつつのシチュエーションなのかもと勝手に想像して、しみじみとした感動に浸りつつの読了となりました。

  • 作家であり、吉村昭の妻である津村節子により吉村昭と田野畑村との深い関わりを辿る書である。

    かつて、日本のチベットと言われた陸の孤島、田野畑村。吉村昭は田野畑村を訪れ、田野畑村の鵜の巣断崖を舞台にした『星への旅』という小説を書いたことから、田野畑村との関わりが始まる。早野仙平村長と交流する中で記録文学の傑作とも言うべき、『三陸海岸大津波』を発表し、さらには『梅の蕾』という短編を発表する。

    これほど、吉村昭が田野畑村と深い関わりを持っていたことを知らなかった。『三陸海岸大津波』は東日本大震災への警鐘とも取れる大傑作であったが、『梅の蕾』も心打たれる素晴らしい短編だった。『星への旅』は未読であり、近々、読んでみたいと思う。

  • 夫・吉村昭がこよなく愛した三陸海岸が大津波に襲われた。四十年以上も前に体験者の証言をもとに、繰り返しこの地を襲う津波について警鐘を鳴らす『海の壁 三陸沿岸大津波』を著した夫は、この度の大震災を知ることなく逝った。深い縁で結ばれた大切な人々を訪ねる旅は、夫婦の軌跡をたどる旅でもあった。

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著者プロフィール

津村節子(つむら せつこ)
1928年 福井市生まれ。
学習院短期大学国文科卒。
1953年 吉村昭と結婚。
1964年 「さい果て」新潮社同人雑誌賞受賞。
1965年 「玩具」芥川賞受賞。
1990年 『流星雨』女流文学賞受賞。
1998年 『智恵子飛ぶ』芸術選奨文部大臣賞受賞。
2003年 恩賜賞・日本芸術院賞受賞。
2011年 「異郷」川端康成文学賞、『紅梅』菊池寛賞受賞。
日本芸術院会員。
主な作品
『重い歳月』『冬の虹』『海鳴』『炎の舞い』『黒い潮』『星祭りの町』『土恋』『三陸の海』等。
2005年『津村節子自選作品集』(全6巻)刊行。

「2022年 『紅色のあじさい 津村節子 自選作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

津村節子の作品

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