流 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937214

感想・レビュー・書評

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  • 第153回直木賞受賞作。

    何者かに殺された祖父の死の真相を探るロードノベルであり、1970年代後半から1980年代前半にかけての台湾の若者の青春小説だなぁ、と。

    熱くておもしろくて、オーディブルで夢中に聴いた。

    「人は同時にふたつの人生を生きられないのだから、どんなふうに生きようが後悔はついてまわる」
    この小説の言いたいことをぎゅっと凝縮すると、作中のこの言葉になるのだな、と思った。

    後悔はしちゃいけないものじゃないんですよ。
    後悔は必然。成功しようが、失敗しようが必ずあるもの。
    むしろ、後悔こそ、人生のエッセンスだ。

    そんな諦観というか、開き直りというか、やぶれかぶれというか…しかし前向きになれる小説。

    著者の東山彰良さんは台湾出身。ルーツは山東省なのだという。だから、「東山」という筆名なのだそうだ。

    • Macomi55さん
      たけさん
       こんばんは。東山さんの小説は「僕が殺した君と君に殺された僕と」みたいなタイトルの本を読んだことがあります。ストーリーも面白かった...
      たけさん
       こんばんは。東山さんの小説は「僕が殺した君と君に殺された僕と」みたいなタイトルの本を読んだことがあります。ストーリーも面白かったし、私が子供の時代の台湾の町の様子にも興味が持てました。
      この本はロードノベルというところにも惹かれますね。
      2022/06/10
    • たけさん
      Macomi55さん、コメントありがとうございます!
      この小説も台湾の町の様子が詳しく描かれています。読んでいて、まるで台北の街中を疾走して...
      Macomi55さん、コメントありがとうございます!
      この小説も台湾の町の様子が詳しく描かれています。読んでいて、まるで台北の街中を疾走してるかのような錯覚に陥るくらいです。

      「ロードノベル」は少し言い過ぎかもしれませんが、後半は台湾、日本、中国本土と駆けめぐるイメージでした。

      おススメします。ぜひ。
      2022/06/11
  • 1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。
    内戦で敗れ、追われるように台湾に渡った不死身の祖父。
    なぜ?誰が? 無軌道に生きる17歳のわたしには、まだその意味はわからなかった。
    台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。
    歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡。

    中國本土から国民党とともに台湾渡った祖父が殺された。
    台湾を舞台とした主人公葉秋生の成長物語。
    以前、台湾を舞台とした小説を読み、もっともっと
    台湾の事、台湾の歴史を知りたいと思っていた。
    このお話は1970年代から80年代の台湾に投げ込まれたようだった。
    暴力シーンが苦手なので、何かと親に鞭打たれたり、
    喧嘩三昧がヴーーーッて思ったし、
    喋り言葉の「」の中が漢字で書かれ、横に小さな日本語のルビが
    ふられているのも、最初は読み辛くて馴染めなかった。
    しかし、いつの間にか猥雑な街並み…小さな路地にひしめき合うように
    連なる古い商店街や出店。
    そこに入り込んでいたようです。
    賑やかな音や悪臭さえ漂ってきているような感じがした。

    家族や国や戦争。
    とても壮大で複雑。
    どの視点から戦争を描くかによって、全く違うものに見えて来た。
    親日家が多いと信じていた台湾。
    本省人と外省人によって日本に向ける意識が全く違う事を知った。
    台湾・中国・日本…。
    台湾の事、ほんの少し知る事が出来たかな。

  • 『流』
    戦時からバブルまでの台湾が舞台です。
    街の喧騒、タチの悪い輩の喧嘩、抗争の描写を通じて
    当時の事情、社会が見えてきます。
    中国、台湾そして日本。

    台湾を中心として歴史、生活をのぞける小説としての位置づけに加えて、主人公の兵役、受験、恋そしてルーツへの想いの描写が不思議な読了感の世界へ誘い込みます。

    生々しい描写が多いため、嗜好は分かれる小説かもしれません。

    https://twitter.com/rtaka1624/status/1231191777572319232?s=21

  • 台湾は約50年前にはこんなにも荒削りの地だったとは。
    中国、台湾、日本の3国の激動の史実、そこに一人の男の青春ストーリーが落とし込まれている。それは岩が流転するかのような青春だ。
    汗と血の匂いが感じられる行間に、いかなる時も生きていることを讃えようとする作者の姿勢がみえた。

  • 登場人物が覚えにくく戸惑ったが、ぐいぐい読まされてしまった。

  • 台湾についての小説も初だし作家さんも初。
    台湾の時代背景など興味深かったし、日本についての印象なども思っていたのと違ってミステリーでもあり歴史小説のようでもあり楽しめた。
    しかしなかなかサクサク読めず(•ᴗ•; )

  • 「二十年に一度の傑作」という私の敬愛する北方謙三氏の帯コメントを見た。しかし、それを鵜呑みにするほどに、既に私はピュアではない。それはたいていは次の言葉ほどの意味であろう。「久々の傑作。例えば、30年前に私が日本推理作家協会賞を獲った時ぐらいの」。もちろん面白かった。宮部みゆきや桐野夏生や東野圭吾などの選考委員の全員一致という評価に見合う、ドキドキして、ニヤニヤして、ウンウンと唸る作品ではあった。

    台湾専門用語が多いので、読み始めて興に乗るまで暫く掛かるというレビューを幾つか見た。私の場合は違う。ちょうどこの数年間に2回台湾旅行を敢行して、ここに出てくる​萬華​も、​西門町​も、​迪化街​も、​廣州街​も、植物園も、私が歩き通した処だ。今はかなり綺麗になってはいるが、​未だ至る所に個人経営の廟が営まれ、子供しか走れないような路地が闇の奥まで続いている​のを知っている。小説舞台の雰囲気は、捜せばまだ充分存在している。しかし、今だに此処に描かれたような家族の血の絆と生活の汚物や涙が残っているのかは、知らない。

    冒頭が中国大陸から始まったので、話の半分は戦争の話かと思いきや、9割型なんと葉秋生のハードボイルド青春物語だった。そういう意味で今年25年ぶりに公開された楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の「クーリン街少年殺人事件」と、造り方の構造さえ似ている気がする。1945年以降急速に平和泰平の世になった日本と違い、台湾は80年代に突入するこの時代、未だ戒厳令下にあり、監視社会で、しかも暴力は生きるために必要だったのである。

    それでも、この時代はイーグルスを流し、ディスコソングを流すだろう。確かにハードボイルドだが、そこに青春時代特有なのか、東南アジア特有なのか、湿っぽさが加わる。私には、悪い感じはしなかった。

    私が食べたのは、​綺麗な小店のドンブリ一杯のスイーツらしからぬ豆花​だったけど、今でもあの廣州街辺りでは、以下のような豆花売りが歩いているのに違いないと思う。

    その口ぶりで、彼は祖父が他界したことを知っているのだとわかった。それどころか、おそらく死因も知っているだろう。廣州街には早起きで口さがない年寄りがわんさかいる。わたしが豆花を買っている間にも、植物園の方からは年寄りたちの社交ダンスの音楽が聴こえ、日課の早朝太極拳のためにきびきび歩いてゆく郭爺爺を見かけた。
    「でも腐っちゃいけないよ」と、豆花売りはつづけた。「人間本来叫苦境(人の世はもとより苦しいもの)、快醒快悟免傷心(早く悟れば傷つかずに済む)。おれだって子供を亡くしているんだから。残ったのはちょっとおむつの弱い末っ子だけさ。それでもどうにか生きていかにゃならない。こうやって豆花を一杯一杯売ってね。たいした稼ぎもないが、まあ、食ってはいける。それが大事なんだ、そうでしょ?今生の苦しみから逃げてちゃ、あの世で清らかな幽霊になれないからね」(171p)
    2017年10月読了

  • その時代に生きる人の躍動感と人間臭さが文章の行間から味わえる作品だ。
    プロローグから始まってエピローグ迄の中で、話しの軸となる部分が有りそれに幾つかの物語が加わっている。
    祖父の死について犯人を真実を捜していく事に目がいってしまいがちだが、読んでいくにつれこれは一人の青年の成長を描いている作品だと納得した。

  • 台湾版ハックルベリー!‥‥は褒めすぎ?

  • 本筋はミステリー、でもそれだけではなく青春コメディ、ハードボイルド、恋愛の要素もあってイッキ読みしました。
    登場人物の名前が覚えにくいので、初めはキャラクターに入り込めるか心配でしたが、ストーリーが進むにつれて気にならなくなりました。

    台湾の街が目に浮かぶような喧騒や音楽のイメージがけっこう残っています。アクション部分は映画を見たようなスピード感も印象に残っています。

    一般的にはアジアっぽい湿り気と言うんでしょうが、影も強くそれでいて笑えるところがあるのでテンポよく読めました。
    私は台湾に行ったこともなければ、さして興味もなかったのですが、この本を読んで少しだけ台湾の歴史を知ることになり、台湾の土地柄や住む人に興味を持ちました。

著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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