神に守られた島

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065122051

作品紹介・あらすじ

沖永良部島――沖縄のすぐそばにある小さな島は、大戦末期、米軍機による激しい攻撃を受けた。戦況が厳しくなっていくなか、島のこどもたちは戦争を肌で感じつつも、いきいきと過ごしていた。そんなある日、島に特攻機が不時着するという事件が起きる。

感想・レビュー・書評

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  • 殺戮に巻き込まれる電気も水道もない小さな島。沖縄本島は隣の隣、毎日毎日艦砲砲撃の音が聞こえ、特攻に向かうおんぼろ飛行機が空を横切る。これほどまで過酷な運命の中で、この島の人たちはどうしてこれほど優しくいられるのだろう。まるで皆んな神様のよう。安倍晋三以降の極右政権が続く日本は、知性のかけらもない自民党の私利私欲のためにまた同じ過ちを繰り返そうと必死。一度騙されても考えることをしない国民は何度でも繰り返し騙されようとしている。過去の反省も歴史から学ぶこともしない国、日本。

  • 偶然にもタイムリーなタイミングになった。
    しかし、読む順番を逆にしてしまった。
    沖縄と本州の間、その狭間での戦時下、戦後の子供達の出来事。
    島暮らし自体に馴染みがないので、難しい部分もあったが、大人の都合に巻き込まれる子供達の淡々とした心情の描かれ方が鮮烈だった。

  • 購入済み。

    2021.09.07.読了
    中脇初枝は大好きな作家。
    いつもどこか物悲しい作品を描く。
    今回の作品は、沖永良部島でのんびりと暮らしていた小学生マチジョーを主人公に終戦前後の島の様子が描かれている。
    シマの戦死者や出稼ぎでぼろぼろになって帰ってきたハナみー、その人たちをこころから愛する家族たちの思い。
    西島伍長の特攻にまつわる話。カミのじゃーじゃの気持ち。シマの人々が愛する唄。島言葉。
    えらぶの緩やかに流れる時間をじっくり感じられる一味違った戦争小説。

  • 優しい人たち。

    押し付けられた戦争。
    たくさんのことを手放し、振り回されながらも、
    皆、優しさは無くさない。

    登場人物たちのふるまいそれぞれに滲む優しさのかたち。
    著者の優しさの描き方に、最初から最後まで何度も落涙。

  • 人のぬくもり

  • 終戦前後の沖永良部島が舞台のお話。話し言葉のほとんどが方言なので、読みづらいが、美しい風景が思い浮かぶような南の島の描写が素晴らしいと思う。島ののんびりとした生活に徐々に入り込んでくる戦争の影。戦時下の沖縄の話はよく聞くが、お隣の沖永良部ではこんな状態だったんだと改めて勉強になった。続編も出ているようなので是非、読んでみたい。

  • 沖永良部島のきれいな青い海、白い砂浜、蘇鉄など豊かな自然に囲まれている光景が想像できる。
    そんな見渡す限りロイヤルブルーの静かな海、のんびりした島のほっとする光景とは裏腹に、空襲があったり、機銃掃射があったり、犠牲になった人達がいて、胸が痛くなった。
    そんな中でも、たくましく、冷静な主人公マチジョー、そして島のこども達の姿が、痛む心を軽くしてくれる。
    マチジョーが不時着した特攻隊員から話を聞き、
    「神様は、自ら神様になったのではなく、神様にさせられた」という事実を知って眠れなかった場面が印象的だった。

  • 他の著作でも感じたけれど、この著者の筆致は優しい。過酷な状況を描いていても。
    戦時下の沖永良部島で、主人公の少年が家族や幼馴染みの少女を大切に思う気持ちが、尊い。
    子供は強いな、と思わされるシーンが数多くある。

    沖永良部島の民俗風習が多く登場するのも興味深い。
    方言に関しては、これCoccoの歌詞で出てきたなぁ、という表現がいくつか出て来て(数を数えるときの「てぃーち たぁーち みーち」や方角の「あがり」など)沖縄との近さを感じる。

  • わたしと喧嘩して、わたしを探したかったら、沖縄にいるって言ってたから、沖縄へ行く。そのことがあるからではないが、沖縄についての本を読みまくっている。

    少年マチジョーと美しいカミが沖縄で戦争をどう生き抜いてきたかの物語。児童文学になるらしいけれど、とても深い。

    西島伍長や空襲病、兵隊の話を聞いていく場面は、泣いてしまった。いまもだが、仕方ない、戦争だから仕方ないといって、こんなにも美しく、神秘的な文化をもつ人たちを傷つけることが許されるのか。哀しみの上にあるやさしさとたくましさ、アイヌに似ている。とても気高く感じるものがある。

    ぼくのわらびなーは、ゆーだなと知り、沖縄の名前の呼び方もおもしろかった。踊ったり、唄ったり、神の世界などの読み方も、由来を知りたくなった。
    これまでもぼくはいろんな人から沖縄へ行った方がいいと言われたけれど、霊とか見えちゃうからイヤだと頑なに拒否していた。こんな機会でもなければ、跳べなかったと思う。昔からなにか感じるものがあるんだよね。きっと、そういうのとぼくをツナグだけの人だったんだと思う。

    未練というか、期待というか、そもそも、彼女はもてるから、もどることなんてあり得ないし、もう新しい恋をしてるだろうし、沖縄にいるわけないんだけど、ぼくの中の物語を終わらせたくて。我ながらキモい。彼女にしたら、単なる淋しさによる一時の恋とお金欲しさによるものだったんだと思うし。好きな人へあんな態度を取れるとしたら、甘えとかじゃなく、人としてどうかと思うし。ぼくがどんな仕事をしているかもよくわからないうちに。たしかにぼくのプライベートは、ダメダメだったけど。

    早く終わらせたい。時間の無駄だ。

    でも、ちょっぴり奇跡も期待してる

  • 終戦間際の沖永良部。
    海からは沖縄への艦砲射撃の音が聞こえ、島には空襲があり、頭上には特攻機が南に向かって飛んでいく。
    そんな島。

    戦争の悲惨さと相反するような柔らかな島言葉。
    最初は読みずらくて感じましたが、慣れてくると、それでなければならないと思いました。

    子供達から見た戦争。
    特攻兵の語る、彼らにかけられ呪い。
    戦争が終わっても、食糧難に苦しむ人達。

    島の人達の明るさ、青い海を思うと、戦争という悪夢とのギャップに苦しくなりました。

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著者プロフィール

徳島県に生まれ高知県で育つ。高校在学中に坊っちゃん文学賞を受賞。筑波大学で民俗学を学ぶ。創作、昔話を再話し語る。昔話集に『女の子の昔話 日本につたわるとっておきのおはなし』『ちゃあちゃんのむかしばなし』(産経児童出版文化賞JR賞)、絵本に「女の子の昔話えほん」シリーズ、『つるかめつるかめ』など。小説に『きみはいい子』(坪田譲治文学賞)『わたしをみつけて』『世界の果てのこどもたち』『神の島のこどもたち』などがある。

「2023年 『世界の女の子の昔話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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