捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む (講談社現代新書)
- 講談社 (2019年2月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065149072
感想・レビュー・書評
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金融機関に勤めていて、確かにそうだと感じる部分は多かった。
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金融庁の森信親長官の金融検査マニュアル廃止宣言をきっかけに、旧態依然の銀行が変化してきている実態をレポートした面白い著書だ.ユーザー志向の考え方は銀行以外の業界では当たり前だったにもかかわらず、自分たちのノルマだけを達成して、利用者のことは無視してきた.利益の上がるはずのない投資信託を小金を持った高齢者に勧めて、暴利をむさぼる.このような銀行が存在価値はない.改善の様子が示されているのにほっとした感じだ.
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未来の金融―捨てられる銀行3― 橋本卓典
捨てられる銀行、非産運用、未来の金融とジャーナリスト橋本氏による金融庁の改革ルポタージュ。部門が銀行系であることや、自分自身が金融庁の管轄下の保険会社にいることもあり、非常に勉強になる。個人的に、入社前に読んだ時より、アクチュアリティをもって読むことが出来た。
主に、20年程前の不良債権問題の対応策として金融庁が策定した金融庁マニュアルの功罪を解き、現在生じている金融排除や、反対に銀行があるべき姿にフォーカスしている。引当金等を厳格に定めた金融庁マニュアルは不良債権問題で破綻寸前の金融機関に対しての緊急策であり、20年間使う代物であるとは当時の策定者も考えていなかった。融資先の格付けにより、融資額を決める画一的な方法論により、志はあれど信用のない事業者が融資を受けられない「金融排除」という事態は、明らかにマニュアル主義の終着地点であり、まさしく捨てられていく銀行の態勢に他ならない。信用のない事業者に融資することは、マニュアル的にはリスクを背負う悪の行為であり、現状では実績こそないが未来の成功を見極める目利きを持った人は少なくなっているという。本来的に、金融機関は金融機能を通じて経済全体の活性化と国民の富の増大にこそレゾンデートルがある。機械的な格付けによる融資枠の決定という外部への潔癖性と、回転販売という内部からの腐敗に筆者は警鐘を鳴らし、あるべき金融機関の姿をリレーションバンキングに見出す。
本来、お金を貸すだけならだれでも良いが、その中で、選ばれるためには、銀行が持つ関係性とお金回りの知識による事業者の全体的なバックアップが必要である。金融機関として、点と点をつなぐという付加価値提供の在り方は、保険会社に勤める自分も頷ける。商品性や保険周辺の知識はさることながら、当社が持つ多くの関係先をむずびつけることは、付加価値提供の一つの在り方であると思う。ワンピース考察で結末予想というものが良くあるが、ルフィがレッドラインを沈め、東西南北の海を統一することで、世界が一つになるという考え方は面白い。社会は、あらゆるもので分け隔てられている。それが悪いことではないが、リレーションバンキングでビジネス界のワンピースを作るくらいの夢を持っても良いかもしれないと、粛々と考えた。 -
今、金融機関の状況は非常に厳しい。これまでの姿を維持することに腐心しているが、それが本当に難しくなってきたことを実感しているから、もがき苦しんでいる。
本書を通じて浮かび上がることは、確かに現実のものとしてほぼわかるものであり、実際に金融の現場にいる自分としても納得いくところが多い。
「金融」という仕組みの中に入って、そもそも自分は何をしたかったのか、ということをまた考えさせられる一冊だった。
金融業務は情報の仕事である。これほど大量の情報が世に溢れかえる時代となって、情報の非対称性を利益の源泉として金融仲介を行ってきた既存の金融機関にとって、出る幕はますます少なくなってきている。その状況を見つめなおしてみて、本書が言うところの「計測できない世界」であり、“共感”なのだろうと思う。次はどのような“共感”を育んでいくのか、ということになろうか。 -
2019年 2冊目
第1作目では金融政策の変化に伴い、地銀に対するニーズが「健全な財務体質」から「事業性評価と地域貢献」に変化したことに触れ、広島銀行をはじめ優れた経営マインドをもつ金融機関に触れていた。
第3作目となる本作では、もう一歩踏み込み、クラウドファンディングや菱形のリレーション構築等、具体的な事例について触れられており、リレーションシップモデルの銀行に関する理解がより深まったと思う。
同時に金融庁を慮った既存の経営体質を維持することで、現場の若手が離脱していくワーストイグザンプルにも触れられており、金融業界のものとしては少し耳が痛い内容であった。
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過去作と書いていることに大差はないが、良い本だと思った。
お客様に寄り添う気持ちと熱いハート、そしてブレない信念こそが大切だと感じた。