- Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065192733
作品紹介・あらすじ
五十手前で妻を亡くし、息子をも事故で失った郡方の高瀬庄左衛門。
老いゆく身に遺されたのは、息子の嫁だった志穂と、手すさびに絵を描くことだけだった。
寂寥と悔恨を噛みしめ、韜晦の日々を送るが、それでも藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。
「決戦!小説大賞」でデビューし、文芸評論家・縄田一男氏に「新人にして一級品」と言わしめた著者。
藤沢周平、乙川優三郎、葉室麟ら偉大なる先達に連なる、人生の苦みと優しさ、命の輝きに満ちた傑作時代長編!
感想・レビュー・書評
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妻を亡くした矢先、一人息子も事故(?)で失い、残されたその嫁と共に過ごす神山藩郡方・高瀬庄左衛門の、二年間の生活が描かれている。藤沢周平著『三屋清左衛門残日録』を思い起こしながら読んでいたが、こちらの作品は"動き"が大きく、"陰謀"の内容も新しく感じられ、面白かった。「神山藩シリーズ」の第一弾ということで、次作も読んでみたい。
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なんとも美しい一冊でした。
とにかく文章が美しいし、装丁デザインが秀逸。
白、白、白…まいったなぁ…
また凄い作家さん見つけちゃった(〃ω〃)
妻に先立たれ、一人息子を事故で失った庄左衛門
ただ倹しく老いてゆくはずが藩の政争に巻き込まれていく…
内容は他のレビューを見てください_φ(・_・笑
「人などと申すは、しょせん生きているだけで誰かのさまたげとなるもの…されど、ときには助けとなることもできましょう…均して平らなら、それで上等」
庄左衛門の言葉にグッときます(ノ_<)
☆5じゃ足りないわ‼︎
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2023/02/08
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時代物読みだすと続いちゃう
何か気分が落ち着くのよ〜♪
歴史苦手だから武士物は架空の潘のヤツ
市井物や物怪とかいいよね(//∇//)時代物読みだすと続いちゃう
何か気分が落ち着くのよ〜♪
歴史苦手だから武士物は架空の潘のヤツ
市井物や物怪とかいいよね(//∇//)2023/02/08
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読書会課題図書
久しぶりに時代小説を堪能させていただきました
絵筆で表される淡々とした風景描写
そしてあくまでもおさえた心の描写
本意ではなく巻き込まれる様々な事件
矜持をもって対していく
自由には生きられないそれぞれの哀しみ
「……悔いばかり重ねてまいりました」
「つまり、ふつうということでござろう」
神山藩シリーズ 3部作
≪ 美しく 生きるとは何? 誇りもち ≫ -
しっとり沁みてくる一冊。
序盤から静かな紡ぎの世界が心地良く、随所で出逢う人生においての大切な言葉が静かにしっとりと沁みてくるような世界観に魅せられた。
響き過ぎてしばらく足留めさせられた数々の言葉も想いも庄左衛門が自分の中でつらさや苦しみを自分なりに咀嚼したどり着いた上での一つ一つの言葉なのかということを思うとより込み上げるものがある。
心情に寄り添うかのような四季折々の自然描写もまたしっとりと心に沁み渡るのも印象的。
まさに心にしっかりと留めおきたくなる言葉が溢れた、歳を重ねてまた読み返したくなるような作品。 -
時代小説は言葉使いに慣れずに読み難く敬遠していたが、この本は違った。時代小説の素養がない私でも世界に入り込めた。
描写がなんとも美しく叙情的。
庄左衛門の迷いながらも芯はぶれず凛とした姿に大人の魅力を感じた。 -
嫡子を失った郡方の高瀬庄左衛門。子の妻志穂、ある一件で縁のできた弦之助、小者の半次、余吾平といった者との交流の中、藩政に関わる事件に巻き込まれていく。
最初の話を読んだ時は、思っていたのと印象が違ったと思った。上品な感じで、庄左衛門と志穂の心持ちが描かれていて、御留書とあるように日常の事件などかと思っていたのと、少し毛色が違った。
全般的には、少しづつ事件があり、庄左衛門の過去も含めて語られるが、落ち着いた感じの表現と、庄左衛門自体もそれなりの人物だが、落ち着きと年相応の趣きで描かれていることが、淡々とした感じにも受け取れる。
その結果か、思っていた以上に、自分に合った感じで、楽しく読み進めることができた。
自分の好きな本の感じが、また一つ増えたのがうれしい。
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悲しみを背負った人の物語。
高瀬庄左衛門の息子の啓一郎は父子ともに郡方をつとめ、郷村廻りを行っていた。啓一郎は藩校の中でも俊才であり、助教になるための考試で首席にならんと挑むが、啓一郎は次席になってしまい、結局父と同じ職業になることに。未だその事実を受け入れられない様子で仕事もどこか上の空、妻の志穂ともうまくいっていない。
そんなある雨の上がった日、啓一郎が崖下で遺体となっているのが発見される。悲しみに暮れる庄左衛門。元々妻は先に亡くしていたのだが、これをきっかけに小者の余吾平にも暇を出し、うまくいってなかった志穂も実家に戻そうとしていたところ、志穂は意外にも「ここに残りましては、ご迷惑でしょうか」と戻ることを拒否。庄左衛門が趣味にしていた絵を志穂も学んでいずれはそれで身を立てていきたいのだと言う。世間の目が気になる庄左衛門は志穂の提案に首肯しなかったが、弟と一緒に来る日だったら絵を教えるという妥協案で落ち着く。
喪失感に苛まれた心を引きずりながらも郡方の仕事、志穂の絵を教える日常が流れていく。ある日志穂のもう一人の方の弟がお金もないのに頻繁に飲み歩いているのが気になっているという相談を受け、様子を見ることに。その辺りから徐々に庄左衛門は大きな運命にのまれていくことになる。
この作品、時間の流れは緩やかでじわじわと話のボルテージが上がっていくような印象。傷心した男がささやかに送っている日常の裏で実は庄左衛門をのみこまんとする歯車が着々と回っている。よく読んでる急展開でスリリングな小説とはまた違った楽しみ方ができた。
人の縁とは、人生とはなんなんだろうなぁと考えさせられた。ちょっとしたきっかけで人生は思いもよらない方向に流されることもあるし、結局過ぎ去った後にしか観測できない物だと思う。人生語るには人間という器は小さすぎるよなぁ。誰も何もわからない中で翻弄されながらもみんな毎日一生懸命生きている。そんな毎日を積み重ねる尊さを描いていたように感じました。なかなか味わい深い作品でした。