水は海に向かって流れる(3) (KCデラックス)

著者 :
  • 講談社
4.42
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感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065205877

作品紹介・あらすじ

「俺がいなければ、この人の肩が濡れることはなかったのに」

高校への進学を機に、おじさんの家に居候することになった直達。
だが最寄の駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性の榊さん。

案内された家の住人は26歳OLの榊さんと
なぜかマンガ家になっていたおじさんの他にも
女装の占い師、メガネの大学教授と
いずれも曲者揃いの様子。

ここに高校1年生の直達を加えた男女5人での
一つ屋根の下、奇妙な共同生活が始まったのだが、
直達と榊さんとの間には思いもよらぬ因縁が……。

久しぶりに始動した田島列島が自然体で描くのは
家族のもとを離れて始まる、家族の物語。


W不倫で家を出て以来帰らない榊さんの母親に会うため、直達は榊さんを連れて海辺の街を訪れた。彼女が新しい家族と幸せそうに暮らす姿を見て、対面を諦めそうになった二人だったが、直達が衝動的に踵を返し、榊さんと榊さんの母親は10年ぶりの再会を果たす。直達と榊さんは、いま、10年前のその先へと時間を進めるための短くて長い旅の途中にいる。長い間抑え込んでいた感情と向き合う二人が流れ着く先は──。

感想・レビュー・書評

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  • 昨年の今頃2巻までの感想を書いた。令和の「めぞん一刻」だとこうなるのか、非日常の日常系マンガだ、等々の感想を述べて「おじさんはよくわからん」と結んだ。

    思いもかけず、物語はたった3巻で終焉し、おじさんにも共感が生まれた。高校生男子目線からのお話。10歳上の女性に恋をして、気持ちを慮(おもんばか)り、遠慮しまくる構造は、もちろん男には永遠の憧れの構造だからよくわかる。女性の気持ちは、台詞から(高校生には難しいけど大人には)誰でも想像できるようにはなっているけれども、決定的な気持ちは最後の頁まで持ち越される。うん、なるほど、これはやはり「めぞん一刻」だ。

    線はシンプルで、顔の表情は記号的に省略されている。だからあざといぐらい、人に想像させる絵だ。簡単にドラマ化できそうで、かなり難しい素材だけど、手塚治虫文化賞新生章や「このマンガがすごい」に2年連続入賞などの評価を受けていることで、無視はされないんじゃないだろうか?それにしても、作者が実は女性だと知って軽くショックを受けた。

    おまけで、締め切り間際に綱渡り的にネームを仕上げたと告白マンガがあって、激しく共感した。

  • 全3巻一気読み。先日のDMMブックス70%セールでまとめ買いしたコミックスの中の一つ。

    評判どおりの面白さだった。
    重い話を軽やかに描く鮮やかな手際、キャラの立ちかげん、随所できらめく独創的な言語感覚、淡い水彩画を思わせる絵柄の心地よさ……美点だらけの傑作だ。

    〝令和の『めぞん一刻』〟という評言を目にして、「なるほど」と膝を打った。

    主人公の男子高校生・直達と、ひょんなことから「ひとつ屋根の下」で暮らすことになった26歳のOL・榊さん――。年上の女性への憧れが物語を駆動するあたり、たしかに『めぞん一刻』の五代くんと「管理人さん」(音無響子)の関係を彷彿とさせる。
    一癖も二癖もあるほかの同居人たちも、あの「一刻館」の住人たちを思わせる。

    ただ、『めぞん一刻』ほどラブコメに振り切っておらず、基本のストーリーはけっこうシリアス。何しろ、直達の父と榊さんの母は、かつてW不倫に陥った過去を持っているという設定なのだから……。

    小説なら純文学になるであろうストーリーなのに、全体をふんわりとした雰囲気で包み、随所でオフビートな笑いがはじける。
    不思議な味わいの、〝年の差ワケありボーイミーツガール・ストーリー〟だ。

  • 終わってしまった。寂しい。
    読んでいて切なくなったしもやもやしたし、でもこの重いテーマなのに何度も笑いました。不思議な独特な空気感の漫画。軽さと重さが絶妙なバランスで共存しているような。
    この作品も是非映像化して欲しい。この空気感のまま。


  • ほんと、キャラクターを魅力的に書きますね。嫌な奴が誰もいない。
    許されない事をした父親と母親すらも、嫌な奴で終わらせない。
    人と人との関わり方が、どのキャラも良いなぁって思う。

    生きてると、仕方がないって割り切るしかない事があって、ヒロインはそうして割り切ってる風をしてるけど、本当は心に怒りを抱えたまま。
    それ自体は変えられない現実だけど、それを一緒に背負ってくれる人がいる。
    これは、理不尽な現実を生きている私たちの、全ての様々な悩みの解決法かもな、と思った。

  • 『将棋の渡辺くん』の次号予告マンガジャックの回でたまたま紹介されていて、気になって手に取った。こういう偶然から、思わぬ作品・思わぬ作者に出逢えるから、読書はやめられない。

    「運命」や「宿命」に身を委ねるのではなく、そして「普通の幸せ」ではなく「最高の人生」という、決して平坦ではない道を自ら選び取ろうと歩みだすラストが美しく、温かい。

  • 完結し、良かったとも思うし、物語が終わってしまった寂しさもある。

    改めて1巻と3巻を比較して見ると、榊さんの表情が全然違うのが分かる。前者は無表情な感じが多いけど、後者は表情が柔らかくて笑顔も見られたりと、すごく愛くるしくなってることに気付く。本人が自分の生き方と向き合ったのもあると思うけど、そうさせたのは、直達くんの力も大きいよね。直達くんを見てると、これぞ正にティーンエイジャーが、大人へ向かって成長している感じがよく分かる。

    でも、暴走しそうな榊さんと落ち着いてる直達くんに見られがちだけど、実は逆で後半なんか、直達くんが暴走気味で、榊さんが落ち着いてるのが、また面白かったりする。こういう描き方があるから、田島先生の作品は好きです。

    エンディングは良いとは思ったが、私的にいちばん心動かされたのは、榊さんが直達くんに、ゴッツンコするところ。「ずっとおぼえてて」の台詞は、これまで独りぼっちだと感じていた榊さんの心が救われた本音からの気持ちだと思う。

    最後まで、笑いあり涙ありのいい話でした。田島先生の次回作が本当に楽しみです。何年でも待ちますよ。

  • 最高の終わり方でした。人と人の心が通じ合う瞬間を見れた様で、とても心地の良い読書時間を過ごさせてもらいました。
    思い悩んだ自分の気持ちの触れて欲しいけど、下手に触れては欲しくないところを、嘘偽りなく寸分の狂いも無く触れてくれた時に、言葉にできない感情が心の底から湧き出てくるのだと思います。
    「みつけてくれてうれしい」とのモノローグに、本当に良かったなと、なんだか10代の頃を思い出し、自分の気持ちも救われたような気持ちになりました。
    万人にオススメしたいマンガです。

  • 「最高の人生にしようぜ」

    良き!!
    キャラクターはもちろん、台詞も考え方も好き。

  • サラサラ、サラサラ、軽やかに流れていく掛け合いが気持ちいい。ダブル不倫とか扱っているネタ自体は決して軽いものじゃないんだけど、こんなふうに軽やかに生きていけたらいいな、心地いい。あとやっぱりハチクロ的な異種人種で集まって暮らすのは楽しそう、夏の夕方に庭でバーベキューとかしたい。

  • なんて面倒くさい人間関係、なんて面倒くさいセリフの数々!
    でも、人生ってそういうものだよなと思わされる。

    枷のようなものとどう向き合うか、テーマになっているものは重いけれど、ところどころ挟まれる軽快なギャグと、さらりとした絵柄がその重さを軽減させてくれる。
    先が気になってすいすい読んでしまった。

    主人公の思いが通じるハッピーエンドで、爽やかな読後感に包まれてよかった。
    しかし直達くん、いずれお母様にどうやって榊さんを紹介するんだ!とか考えると複雑な気持ちになりはするけど…

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著者プロフィール

2008年に新人賞受賞作『ごあいさつ』でデビュー。2014年に開始した連載デビュー作『子供がわかってあげない』は実写映画化もされる人気作となる。2020年に『田島列島短編集ごあいさつ』『水は海に向かって流れる』が評価され第24回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。『水は海に向かって流れる』は2023年6月に実写映画の公開も予定。現在「モーニング・ツー」にて『みちかとまり』を連載中。

「2023年 『みちかとまり(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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