歪んだ波紋 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065260357

作品紹介・あらすじ

騙されるな。真実を、疑え。

悪意が、「情報」という仮面をかぶっている。必要なのは、一人一人のジャーナリズムだ。18万部のベストセラー『罪の声』から2年。”社会派作家”塩田武士が描ききった、この世界を生き抜くためのリアルフィクション。

「誤報」にまつわる5つの物語。
「黒い依頼」 ――誤報と虚報
「共犯者」  ――誤報と時効
「ゼロの影」 ――誤報と沈黙
「Dの微笑」 ――誤報と娯楽
「歪んだ波紋」――誤報と権力

新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディア――昭和が終わり、平成も終わる。気づけば私たちは、リアルもフェイクも混じった膨大な情報(ジャンク)に囲まれていた。その混沌につけ込み、真実を歪ませて「革命」を企む”わるいやつら”が、この国で蠢いている。松本清張は「戦争」を背負って昭和を描いた。塩田武士は「情報」を背負い、平成と未来を描く。
全日本人必読。背筋も凍る世界が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 何か今のネットで、安易に情報を広げるのにも似通った感じ。
    新聞とかの媒体で、誤報は致命症にもなりねない…発信側の致命症は、自身の問題でもあるから仕方ないにしても、発信されて、致命症になる人は別問題!
    ネットは匿名性というので無責任になるのは理解できなくはない(調べりゃ分かるんで、ホンマは匿名性ないんやけど。一部の本格的なハッカーとかは、別にして)
    しかし、誤報が意図的だとかまでいくと、キツい。フェイクニュースだらけでは、私らは、何を信じたら良いの?…自身で見極めるなんて、キツい…
    メディア側も安易な方向に走らすに、地に足つけて、真実を語るように意識改革して〜
    現在の最大の武器は、ミサイルとか戦闘機やなく、情報という事が身に染みる作品でした!
    「記者は現場やで!」
    のセリフが響く…

  • 塩田武士『歪んだ波紋』講談社文庫。

    誤報にまつわる5編で構成される連作形式の短編集。先日読んだ一本木透の『だから殺せなかった』と同様にジャーナリズムの世界を背景にした物語のようだ。但し、本作の方はミステリー色は弱く、誤報が産み出される過程と誤報により人生を狂わせた人びとを描いている。

    全くの私見なのだが、塩田武士は文章が余り上手くないと思う。作品を読んでいて、内容がスッと頭に入って来ずに何度か読み直す時がある。また、馴染みのない関西弁の台詞を多用しているが、それが標準語の文体とミスマッチを起こし、文章を読み難くしているようにも思う。そのためか、どんなに世間で評価の高い作品を読んでも個人的には余り評価出来ない。本作も何か変な心地だなと思いながら読み終えた。

    評判ほどは面白くない。

    『黒い依頼』。悪意の無い誤報と意図的な情報の捏造による虚報。大手新聞社も地方新聞社も紙面の売上が低迷し、苦しむ時代。売上を伸ばすための過剰なスクープ合戦はやがて情報の捏造という悪事を産み出す。ラストの意味がどういうことなのか全く解らない。★★

    『共犯者』。昔の既に忘れかけていた同僚に与えたたった1つの誤報が幾人かの人生を大きく狂わした。タイトルの持つ意味と情報の怖さがよく伝わる。折角の秀作も、作中に『罪の声』を宣伝するような描写を入れるというあざとさでマイナス評価。★★★

    『ゼロの影』。何故か報道されない盗撮事件の犯人逮捕。事件と報道の裏に何があったのか。情報を意識的に隠蔽することも情報の捏造と同等の罪だ。世の中では現実的にそのようなことも起きているのだろう。★★★★

    『Dの微笑』。行きすぎた視聴率稼ぎのテレビの演出とやらせ。同一人物が様々なインタビューに答えているケースなどもあり、ネットに証拠の画像がアップされたりしている。もしかしたらネット情報の方が捏造の可能性もあり、何が真実なのか見極めるのは結局のところは個人の判断力しか無いのだろう。★★★

    『歪んだ波紋』。表題作と言うよりも解決編らしいが、何だかモヤモヤする結末だった。★★

    定価858円
    ★★★

  • 新聞やテレビといったメディア媒体と、頻度としては、今やそれ以上に目にするようになったネットニュースという双方に触れながらか、情報が人を欺き、追い詰める話が描かれている。

    情報を得るための速度に、人間のアナログな身体はもはや付いていけてないのではないか、と感じる。
    作中のジャーナリストたちは、皆、リリースしなければならない期日に怯え、また出し抜かれることを恐れている。

    そうして、真実を伝えることという本来的な目的は置き去りにされてしまうのだ。

    作中に出て来る美咲という女性は、被害者家族でありながら、加害者ではないかと疑われ、報道によっても被害を受ける。
    彼女は後半の作品でも再び登場するのだが、すっかり帯びる空気が変わっている。
    それを、強くなったとは言い難かった。

    自分もこうして情報に加担しながら、いつか喰われてしまうのではないかと、少し怖くなった。

  • 私にはちょっと読み難かったかなぁ。。聞き慣れない言葉もあったりで、自分の勉強不足だなと笑

  • 久しぶりの塩田作品。
    新聞記者("元"を含む)を主人公にした短編集ですが、それぞれの登場人物が巧みにリンクしています。

    誤報、黙殺、虚報-。
    正確さの求められる新聞記事による誤りによって人生が変わっていく人達。
    自らが発信した情報の重さに気付く記者達。
    彼らが複雑に絡まりあった後に見えてくる恐ろしい存在とは。

    世に溢れる様々な情報をどう受け止め、どう考えるべきかというテーマに大変興味があるので、この作品もとても面白かったです。
    マスメディアの在りかた、私たちがニュースに求めるもの、発信された情報の扱い方。
    現代社会の課題の1つをテーマに、レベルの高い短編集に仕上げていると思います。

    レビューを書くのがとても難しいのは私なりの誉め言葉。
    とにかく一読の価値あり。

    目にした情報を真に受けることなかれ。
    今一度、調べて考えなくてはいけないのだと痛感します。

    2020年25冊目。

  • ジャーナリズムの誤報や虚報を扱った連作短編集。
    事実とは何かと、事実のあり方を問いかける小説。
    現代のネット社会では、情報が錯綜し、さらに混迷に拍車をかけている。
    マスコミに対しての重い言葉。
    「報じないこともまた、誤報」

  • 事実とは何か、報道することの功罪、誤報の及ぼす影響、面白ければ嘘を流してもいいという確信犯、既存メディアを貶めてやろうと虎視眈々と狙う者、斜陽とプレッシャーに押しつぶされながらそれでも真実を報道しようとする者たちのせめぎあい。舞台はテレビ局、地方紙(新聞)、全国紙(新聞)、独立Webメディア、週刊誌、そして謎の集団。◆虚報が人の人生を狂わせたり、回復できないほど人を傷つける可能性。にもかかわらず、プレッシャーに負けて安易な捏造に手を出してしまう者。それを他人事とせず、どこにでもその罠は口をあけていて…。「しかし、いくら取材を重ねて社会問題を提起しても、PVでは不倫に勝てない」という忸怩たる思い。「自由と無料をベースにした難敵を相手にしているという自覚がないのだ」という批判的視点。「所得の分配が歪に過ぎて、資本主義そのものへの疑問がどうしても拭えない」という思い。最後の、結局は現場を踏まないと、という追い詰められてからの行動が印象に。

  • その情報は〈真実〉か。現代のジャーナリズムを問う連作短編。吉川英治文学新人賞受賞作。

  • 連作中編。既存の新聞ってメディアに対して警鐘を鳴らす内容。まあ面白かったけど、まわりくどいな。一冊で見ると群像劇なんだけど、なんというか人物が多すぎてそれを繋げる横軸がバブルの大物韓国人フィクサーなんだけど、そこがいかにも弱い。ドレインってグループも良くわからないし、放火で死んだ女性もはっきりしないし、記者の自殺も釈然としないんだよな。不完全燃焼。

  • マスメディアに対する考え?
    情報自体を信用させないようにさせる団体達がいる!→自分で情報をよく選ぶ、考えることが大事

    ということを伝えたかったのかな?
    メッセージ性が強くて私には少し難しかった、、

    情報は必ず誰かのフィルター、思いが入ってしまうもの、受け取る方もまた同じ。

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著者プロフィール

1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞し、“「週刊文春」ミステリーベスト10 2016”国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に輝く。2018年には俳優・大泉洋をあてがきした小説『騙し絵の牙』が話題となり、本屋大賞6位と2年連続本屋大賞ランクイン。2019年、『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2020年、21年には『罪の声』『騙し絵の牙』がそれぞれ映画化された。

「2022年 『朱色の化身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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