ブラックボックス

著者 :
  • 講談社
3.10
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本棚登録 : 2850
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065273654

作品紹介・あらすじ

第166回芥川賞受賞作。

ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。

自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車便メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。

昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。

気鋭の実力派作家、新境地の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • ここ最近、男性作家による芥川賞受賞作には馴染めなかったけれど、これは悪くなかった。新しい感じはしなかったけれど。

  •  2021年下期芥川賞受賞作品で、前半と後半で大きく状況が異なる二部制のお話です。

     主人公は30を目前にした男性で、自転車で書類をやりとりする『メッセンジャー』をしながらも、そろそろちゃんとしなくてはと何とも言えない焦りが募っている。いや、募っているというほどは募っていないのだが、ちゃんとしなくてはと思っても、つい怠惰に今まで通りの日々を過ごしてしまう。そんな彼には、自分を上手くコントロールできないところがあった。何かの拍子にキレて、相手に暴力をふるってしまう。そのような性質が原因で、主人公はついに事件を起こしてしまう。

     作中に出てくるような、普通にしている時は別段おかしいところはなさそうなのに、突然キレて何をするかわからない、というタイプの人は、正直一番怖いタイプだと思います。普段から居丈高にして頭ごなしに怒鳴ってくるタイプよりも、沸点がどこにあるか見えないタイプの方が、いつどんなことでぎゅんと沸騰してしまうか分からない分読めずに恐ろしい。
     主人公もそんな自分を持て余しているところがあるけれど、そういう性質は簡単に治るものでもないのだろうなと思います。
     何度も回想の時期が行ったり来たりするため、今どこの時空の話をしているのかに振り回される部分が多くありました。
     芥川賞の作品にしては読みやすい話だったと思います。

     『ブラックボックス』という言葉から想像していたものとは少し違うお話でしたが、一番の『ブラックボックス』は人の頭の中なのだろうなと感じました。
     外からは見えない。記憶も、心の中も、それによって起きたどのような行動も、すべてを見通すことはできない。そんなブラックボックスを、誰しもが持っている。
     そんな風に感じる作品でした。

  • 主人公に共感できる部分があったり、逆にさっぱりわからなかったりと難しい作品であった。ちょっとしたボタンの掛け違いで簡単に落ちていける社会だし、自分も何かが少し違っただけで似たような状況に陥ったかもなと思う。純文学は普段読まないけど、特にストーリー性があるわけではないのに主人公が気になってページをめくる手が止まらなかった。

  • 暗い話だった

  • 『ちゃんとできるなら今すぐにでもしたい。でも、いますぐちゃんとしなくてもなんとかやっていける。やっていけなくなる日がいつか来ることだけは分かっているが、そのいつかが分からないから、無限にいつまでもこんな日々が続いていく気もする』

    この気持ちが分かりすぎて苦しい。
    生きていてゴールが分からない気持ち、「ちゃんとした」人との壁…社会の周縁にいる人の感情がすごくよく伝わってきた。

  • 芥川賞というのと、あらすじに惹かれるものがあって購入してみた。

    主に読みやすい書き口で、最後までさらっと読むことができた。なかなか集中できず波に乗り切れない感じがもどかしかったが、おそらくそれは私個人の問題のように思う(久々に読書をしたので)。

    数カ所、読み手が迷子になりそうな表現や流れがあり、それは若干気になったが、全体的にまとまってはいたと思う。
    ただ、主題が分かりそうで分からない。前半、ブラックボックスの表現にああなるほど、と感じはしたが、その気持ちが発展せず最後まで宙ぶらりんのまま終わった。後半も含め主人公の気持ちに同調するところもあったが、何せあまり考えようとしない主人公だから、こちらにも感情の波が立たない。

    結局、前半と後半が私の中でうまく繋がらず、読んでいる間楽しめはしたけれども、感想もこのようにとりとめのないものになってしまった。
    次は、もう少し脳みそと感情が動かされるものを読みたい気分。

  • 芥川賞受賞作のこれを読んでみました。自転車のメッセンジャーのお話。途中、章が変わるでもなくシレッと衝撃展開を迎えて、エッ?なんかページ読み飛ばした?と慌てるほどの展開があったけど、それもまた秀逸。会話メインの本ではなく、主人公の心理描写とか、情景描写とかで文章がつむがれていて、芥川賞感を感じた(語彙力)。

  • 芥川賞受賞作とは知らずに読みました。

    主人公サクマが抱えるザラザラとしたイラつきが終始まとわりつき こちらまで鬱鬱としてきます。

    こういう常にイライラして いつスイッチ入るか分からないひと居るよなぁ。こわすぎる。

  • なかなか没入するには難しかった^^;

    何となくメッセンジャーを続けているが、やりたいわけでも、辞めたいわけでもない…。

    たまたま、この仕事が続いてるだけなのかもしれない。昔から自分の中の怒りを抑えられず、沸点を超えると見境なく、暴発してしまう。

    この失敗?を繰り返すだけの人生に、、、

    どこか遠くにいきたいと思い続け、だが、追い求めるものが何かも分からず、ただただ、どこかにいきたいだけなんだ…

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著者プロフィール

1990年、大阪府生まれ。神奈川大学卒業。元自衛官。現在、地方公務員。2016年、「市街戦」で第121回文學界新人賞を受賞。他の著書に『戦場のレビヤタン』『臆病な都市』『小隊』がある。

「2022年 『ブラックボックス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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