永遠年軽

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 158
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065293720

作品紹介・あらすじ

十七歳の私たちは、「はるか遠くにある未来」を夢みていた――

私=林由起子には、林美怜と林圭一という同じ「林」の苗字を持つ友人がいた。やがて圭一は美怜と付き合うようになり、三人の関係に変化が訪れる……。国籍や性別を超えた三人の友情、その積み重ねた時間を描いた表題作をはじめ、「日本語文学」を拡張する傑作作品集。

完全に普通のひとなんか、この世に一人もいないよ。誰もが皆、それぞれ、ちょっとずつ、普通じゃないんだ。(「永遠年軽」)

おじいちゃんはね、二十歳までは、日本人だったんだよ。(「誇り」)

父が、おりこうさん、と言ってくれるから、ガイジン、とか、タイワン、とはやしたてられても耐えられた。(「おりこうさん」)

感想・レビュー・書評

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  • 台湾をルーツにもつ女性の日常の心の葛藤を描いている。アイデンティティの確立時期の不安定な時期とも重なる心情が胸に響いた。日本人として、日本、台湾、中国の関係性を学び直しそれぞれの視点から見つめ直したいと感じた。

  • 最後の「おりこうさん」はすこぶる面白かった。
    他の二篇は、文体が気になってあまり入り込めず。
    作者独自の文体だと思えばいいのか、ネイティブでないせいなのか、いわゆる「手練れの書き手」ではないせいなのか、そこのところが今ひとつわからないのだが。

    最後の「おりこうさん」は、その文体さえも、冴えがあった。これからどんどん上手くなって行く作家なのかもしれない。なにしろ、書く題材が、他の人には無いものがあるので、この人が自在に日本語を操って、日本という国を見たことがない調理法で作品に仕上げていく日は近いように思う。

  • 美怜と圭一と由紀子。三人は十七歳の時に知り合った。皆苗字が林だ。それで下の名前で呼び合うことになった。美怜だけは、「ハヤシ」ではなく、「リン」だった。父親が台湾人で、22歳になるまでに中華民国か日本か国籍を選択しなければならないと話していた。日本人でもなく台湾人でもない自分が宙ぶらりんで悲しいとも。著者は台湾生まれ、でも東京育ち。日本語で、二つの国の間で育った自分の寄る辺なさを描く。

  • 当事者にしか描けない物語。
    三話目が一番好きだった。 

  • 台湾と中国と日本、3つの国の間で迷い、葛藤する主人公。
    今、中国と台湾の間は微妙だ。
    入管法についても様々な議論がある。
    今日的な問題をバックにしながら、自分は一体何者なのか、と問い続ける主人公達。
    国と国の間で悩むことのない者には中々理解できない難しいテーマだった。

  • 国籍の違いと言語の違い
    日本で育った台湾人、祖父は20才まで日本人だった
    流暢に日本語を話したというフレーズに戦争の過酷な歴史を思う
    台湾は2回日本に裏切られた、一度目は天皇陛下に
    二度目は田中角栄に
    そうか、歴史は見方でこんなに違うんだ

  • 短編集3篇
    台湾人であることと日本人であることの自分の在り方についての思いが生き方に関わってくる。日本人には想像もできない境地だが、祖国に寄せる思いに共感した。

  • 台湾人であること、日本人になりこと、そして中国という世界、私たちは無邪気に傍観できるない。

  • アジアの歴史的をもう一度、おさらいしたくなりました。

  • 学生(らいすた)ミニコメント
    「はるか遠くにある未来」を夢見る十七歳に共感できる作品

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/658326

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著者プロフィール

1980年、台湾・台北市生まれ。3歳より東京在住。2009年、「好去好来歌」で第33回すばる文学賞佳作を受賞。両親はともに台湾人。創作は日本語で行う。著作に『真ん中の子どもたち』(集英社、2017年、芥川賞候補)、『台湾生まれ 日本語育ち』(白水社、2015年、日本エッセイスト・クラブ賞受賞、2018年に増補版刊行)、『空港時光』(河出書房新社、2018年)、『「国語」から旅立って』(新曜社、2019年)、『魯肉飯(ロバプン)のさえずり』(中央公論新社、2020年)など。

「2020年 『私とあなたのあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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