成熟スイッチ (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065302743

作品紹介・あらすじ

昨日とは少し違う自分になる「成熟スイッチ」はすぐそこにある――。
ベストセラー『野心のすすめ』から9年、人気作家が成熟世代におくる待望の人生論新書。

日大理事長就任、「老い」との近づき方など、自身の成熟の現在地を明かしながら、
「人間関係の心得」「世間を渡る作法」など四つの成熟のテーマについて綴っていく。

先輩・後輩世代とのつき合い方、自分の株が上がる「お礼」の方法、
会話を面白くする「毒」の入れ方など、著者ならではの成熟テクニックが詰まった一冊!

<本書のおもな内容>
序 章  四つの成熟

第一章 人間関係の心得
愛は惜しみなく/人づき合いは変化していく/成熟を教えてくれた人/広がる人脈と後輩世代/女と男の距離

章間 私の成熟スイッチ・1
未熟者が「長」になるまで

第二章  世間を渡る作法
感謝の流儀/品性が試される時/社交のタブー/話術のエッセンス/時間を制する者、世を制す

章間 私の成熟スイッチ・2
王道を行くか、センスで生きるか

第三章  面白がって生きる
お金を味方につける/仕事をどう面白がるか/読書の快楽/遊びの本気、出好きの好奇心

章間 私の成熟スイッチ・3
生き残るのは変化するもの

第四章  人生を俯瞰する
「俯瞰力」と「自己愛」の効用/老いとの近づき方/家族が教えてくれる成熟/レールに乗ってーーあとがきにかえて

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに林真理子さんの本を買いました。
    ブクログのランキングで見つけて何となくです。
    林さんは好き嫌いが分かれる作家さんだと思います。
    作家としてより人としてミーハーすぎるところなどが嫌いだという人と面白いという人に別れそうです。

    今は日大の理事長に就任されたのですね。
    おめでとうございます。
    最後まで読んで、何でこの本が読みたかったのかわかりました。
    林さんが老いをどのように考えるのか知りたかったのだと。

    林さんの本を初めて読んだのは高校生の時。
    学校の図書室ではなく、家の向いにあった小さな図書館で、おっかなびっくりで『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を借りました。その時は内容はよく覚えていないのですが「何これ~、気持ち悪いこと考える人がいるもんだ」とか思ったのは覚えています。

    以後、若い頃はananで『美女入門』を連載されているのをお見かけしたり、小説は『葡萄が目にしみる』『本を読む女』『白蓮れんれん』などは拝読しました。
    週刊文春かどこかに連載されていたエッセイは自分の生活では絶対できない度重なる海外旅行やブランド品の買い漁り、有名人との交流、美味しいものを食べることなどが面白いので、時々拝読していました。

    若い頃からずっと読みつづけてきた女性作家さんといえば、よしもとばななさん、江國香織さん、山田詠美さんなどだと思っていました。林さんの不倫小説は、全く読む気になれず読んでいないのですが、意外と林さんなのかもしれないと思いました。

    表紙の顔写真、大変失礼ですが、お若い頃より、今の方がお綺麗だと思います。
    こういう方ってなかなかいらっしゃらないのではと思いました。
    ご自分のことを「おバアさん」などとおっしゃっていますが、老い方を知りたいという私の目論見ははずれました。
    だってまだまだお若いのだもの。
    あれ、私、アンチ林さんじゃなかったのかな?
    これじゃ林真理子さん絶賛ですよね。
    『小説8050』は未読ですが。

  • とても読みやすかった。これまで著書(特にエッセイ)をいくつも読んできたため、エッセイで書かれていた有名人や編集者らとの高級料理店での会食、ブランドものの洋服の買い物や海外旅行など、日々楽しく過ごしているように見えた背景に、どのような信念や思いを持ってきたのかが分かりとても面白かった。ご両親や弟さんの話もあり、このご両親に林さんありと納得した。デビュー当時のとんがってバッシングを受けまくった時の林さんを知らないが、山梨から身一つで上京し、いくら叩かれようがへこたれず、自分を信じ、作家として成功するだけでなく大学の理事長にまでなった林さんはやはりすごい。驚きはしなかったが、かなりストイックな方であることが分かった。

  • 「成熟スイッチ」、一度聞いたら忘れられないタイトル、さすが。林真理子の作品は、小説もエッセーもついつい読んでしまうというか、読まされてしまう。
    ミーハーな話題と保守的な立ち位置、自慢と自虐のバランスがいいから、今回も一気読み。ずっと売れ続ける人の努力と気配りは、ホントにすごい。

  •  林真理子さんの生き方や価値観を通して成熟について書かれてる。自分から見ると林さんが単にアクが強いだけなのか、人間の本性を包み隠さずに書いているだけなのか分からなくなる部分もあったが、歯に衣着せない物言いに林さんの生き方を感じられた。林さんについては著作を数冊読んだだけであまり深くは知らないが、人生の長い時間をかけて成熟してきたという思いが伝わり、所々心に刺さる言葉があって、人生を通しての成熟を考える上で大変参考になった。
     特に『本を沢山読めば立派な大人になっていい会社に入れるとは限らないけど、一人でいることを恐れない人間になれる』は特に心に刺さった。

  • 林真理子さんの本は50冊ちかく読んできて
    その半分以上がエッセイである私です。
    この『成熟スイッチ』は日大理事長になって初めて出されたもの。

    基本的に林真理子さんは「社交的」なんだと思う。
    たくさんの有名な方の名前がでてきますが、
    知り合って仲良くなるまでに
    守るべきルールやマナーをしっかりこなしています。

    私なら、面倒臭いと思ったり
    凹んでこもってしまいそうです。
    すごく印象にのこった赤塚不二夫さんのところを引用します。

    〈経験上、男性は女性をある程度のレベルまでは叩きません。
    叩くどころか、庇護してくれます。
    叩き始めるのは、その女性が思いのほか頭角をあらわしてきたり、
    はっきりと自分の敵となるレベルにまで達してからです。
    そのいじめ方は尋常ではなく、つらいですが、
    頭ひとつ抜きんでるとまた違った景色が見えてくるはずです。
    私は若い頃、赤塚不二夫さんが小説誌でやっていた連載で、
    信じられないほど下品な内容の漫画を描かれて
    揶揄されたことがあります。
    今の時代なら、即炎上するような名誉棄損レベルの描かれ方をしたのですが、泣き寝入りするしかなかった。
    その後飲みに行った先で偶然一緒になり、
    赤塚さんから「あの時はごめんね」と謝罪されました。
    遅れている日本でも、男の人の中には
    フェアな目を持った人も増えてきています。
    レベルの高い男性と、いかにうまく友情と連帯関係を結んでいけるか。
    これからの女性の見せどころだと思います〉

    あの赤塚不二夫さんがそんな漫画を描いたことがあった
    ということも驚いたし、
    飲みに行った先で偶然一緒になり謝罪されたということにびっくり。
    赤塚さんはアルコール依存症で有名。
    彼が呑む人でなければ林真理子さんに偶然会うことはなかったし
    謝罪の無いまま亡くなっていたのでしょう。
    Wikipediaによると赤塚さん
    「酒に溺れた原因は極度の恥ずかしがり屋であるため、
    酒なくして人と向き合う事が出来なかった事と自己分析している」
    赤塚さん、酒飲みでよかった、
    林真理子さんに謝罪できて良かったですね。

    それと、自分が数年前いじめられたときの背景がよく理解できました。
    この本、ほんとうに深いです。

  • 自分より年配で、明け透けに、こうするといい、これは失礼、よくないとか教えてくれる人がいないので、貴重な話を聞けた気分。
    偉そうに言ってるように聞こえる人もいるかもだけど、実際にお偉い方。偉いのに時々自虐的で、気さくに毒を吐いて、吐きっぱなしでもないとこの加減がツボ。
    そもそものお題「成熟スイッチ」。「さあ成熟しよう」で成熟出来ない。長い年月をかけて当人も気づかないような小さな変化を重ねて人は大きく変わっていく。小さなスイッチを見つけるきっかけに・・・とかこういうところが、すぅっと響く。

    もちろん、全部が全部納得ではなく、意味の分からないとこもあったから、そこのところ本当は誰かに意味を聞きたい・・・。

    腑に落ちたところを引用してたら、こんなに薄い本なのに溢れてて驚く。自分にとって余程性に合うのかも。

    「酒席で悪口を言わない人は信用ならない」ってめちゃくちゃ同感。悪口ばかりは嫌だけど、人間愚痴の一つや二つ、20も30もあるでしょ。救いようのある悪口の感性が一緒の人は仲良くなれると持論をもってたけど、この本では、『悪口とはちょっと毒のある噂話』なるほど。確かに。ネガティブ過ぎると人間性疑われる。

    揉め事やトラブルによって心の平穏を奪われないようにする。つまるところ自分のため。イヤな気分から回復するには時間がかかる。人の不機嫌にいかに巻き込まれないようにするか。

    面白がっていきていくためにも、欲望を満たすお金はとても意味のあるお金。お金は人を積極的にしてくれるし、可能性を広げてくれる。
    自分が好きなことに遣うお金は、遣った分だけ返ってくる。知的好奇心を満たすために遣ったお金はすべて、遣った人の教養の一部。
    仕事をどう面白がるか。
    背伸びなくして成長なし。

    仕事をするということは、いやなことがあっても耐え、自分を抑え、たとえ大嫌いな人とも折り合っていかなければならない。理不尽なことだっていっぱい。だからこそ成長させ人間力を鍛えてくれるのは仕事。
    子育ては相思相愛の関係であって、それをもって成長したというのは少し恥ずかしい?!これには同意しかねるけど、仕事をしている人は「真面目に働いているんだ」という事実に無条件にもっと自信を持っていい。そう思えると自己肯定感が増す気がする。

    生きていくためお金を稼ぐために仕事をするのは呼吸をするように当たり前のこと。
    お金を稼ぐ手段というと情緒がないけど「好きな時間をくれる仕事」。人生を面白がるための一つの才能。

    俯瞰力は人を謙虚に、励ましてくれたり、物事を長い目で考えさせてくれる。自己愛は落ち込んだ時、たとえ根拠のない自身でも自分を力づけてくれる。
    子供に見せたいのは「自分でお金を稼ぐとこんなに楽しく生きられるんだよ」ということ。

    ちょっとしたことでいいから何か新しいことをして、昨日とは少し違った自分になってみる。成熟にはキリがない。毎日新しいスイッチを入れながら、自分の変化を楽しむことが出来たら、なんて素敵な人生でしょう。

    私自身は元気に豪快にがむしゃらにってタイプではないけど、そういうところを横目に自分なりの素敵な人生を歩みたい。

  • 朝日新聞の「売れてる本」の書評で褒めていたので、読んでみるかーと思い図書館で借りて読む。(買うのは嫌だった笑)
    最初から結構自己開示しているので、おお、林真理子の印象も変わるかなと思ったが…
    やはり、この人苦手でした…。

    途中でもやもやと何だか嫌な気分になってきた。「勝ち組」の自分だからこそできる自己開示というブレーキと同時に踏まれる自慢というアクセル。
    どちらに心を寄せて読んでいいかわからないので、とても疲れる読書だった。

    もしかして
    自分の欠点を自己開示することで、かえって、何を書いても信用できる正直な自分、と思ってる?
    なので、他人に対する厳しい意見も率直さの表れだと思ってる?
    そういう自分だから、成功した自分を自分で自画自賛するのはとてもフェアなものだと思ってる?

    考えてみたら、題が「成熟スイッチ」でした。成熟したと思ってる人が書くものでした。

    多分、心理学でいう「投射」が自分の中にあって、さらに成功者に対する嫉妬もあるからこんな読み方をするのだろうなとは思う。
    そうは思うのだが、やはり何かがこの人には足りないように思う。
    豊崎由美がこの人を嫌うのはとってもわかる。

  • 生意気だった自分
    生意気ではなくなったかもしれないけど、人の悪口や文句ばかり言ってる今の自分

    変えていかないと、部下も、職場の雰囲気も悪くなる。。
    子供の教育にも良くないだろうなぁ。。

    林さん自身の体験、大人になってからの振り返りを読ませてもらって、いろいろ考えさせられた。

  • 成熟とは?スイッチとは?林真理子さんの本は初めて読んだけど参考になった。
    林真理子さんの成熟の完成形は瀬戸内寂聴さんだそうです。全てを許し受け入れる度量の大きさが成熟の証ではと。
    成熟は一日してならず、目指せばひらける。
    日々の積み重ね。読書も大切、人間関係も大切、惜しみない愛。俯瞰してみる、人生を面白がる。色々と参考になった。

  • 表紙のインパクトで買ってしまったけど、とても面白く、共感でき、ためになった。
    日大の理事長に就任した林真理子氏が、自身の来し方を振り返り、「人として成熟するとはこういうこと」と、4つの視点からまとめている。
    私は、林真理子さんの小説は一作も読んだことがなかった。私にとっては「少し上の世代の人たちが読んでいた流行作家」のイメージが強くて、マスコミの批評を鵜呑みにするタイプの母が嫌っていたから、読む機会がなかった。(同じ理由で瀬戸内寂聴さんもほとんど読んでこなかった)。でも本書を読んで、過去の作品を読んでみようと思いました。(母に負けず劣らず私も単純(笑))。

    〇仕事をするということは、いやなことがあっても耐え、自分を抑え、たとえ大嫌いな人とも折り合っていかなければないということ。理不尽なことだっていっぱいある。だからこそ何よりも人を成長させ、人間力を鍛えてくれるのは仕事なんです。
    〇逆に、仕事をしている人は「自分は真面目に働いているんだ」という事実にもっと自信を持っていい。
    〇世の中には耐えなければならないこと、自分の思い通りにはならないことがあるということを十分に知った…自分が選んだ人生は、自分で落とし前をつけなければなりません。

    他に共感したのは、過去の自分を「恥ずかしい」と思っていることや、今の自分と同じ年齢の頃の親を想うくだりや、お金の使い方。
    もちろん林真理子さんのお金の使い方と、庶民の私ではレヴェルが全然違うけど、私も「一生懸命働いてるんだから」と、普段は節制していても、旅行やたまの外食、自分へのご褒美などで豪快に使ってしまうタイプなので。
    読んでよかったです!

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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