どんがら トヨタエンジニアの反骨

著者 :
  • 講談社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065311578

作品紹介・あらすじ

会社のために働くな。

「絶対に売れない、儲からない」と言われた、時代に逆らう最後のスポーツカーを、命がけで造り上げた男がいる。
日本最大の自動車会社・トヨタでもがき、苦しみ、サラリーマンでありながらも夢を追い続けるエンジニアたちの、心ふるわすノンフィクション。

スポーツカー「86」「スープラ」の復活を手掛けた元トヨタチーフエンジニア・多田哲哉を主人公に、技術者やその家族の苦闘と人生の喜びを描いた「週刊現代」の人気連載「ゼットの人びと」を大幅に加筆修正。

これまで秘密のベールに包まれてきた、トヨタエンジニアの牙城「技術本館」内部で繰り広げられる人間模様、スポーツカー開発の詳細なプロセス、そしてトヨタを世界企業に押し上げた歴代チーフエンジニアたちの「仕事術」にも、綿密な取材で肉薄する。スポーツカーファンのみならず、人生と仕事に悩むすべての人へ贈る物語。

感想・レビュー・書評

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  • トヨタ自動車の名誉会長である豊田章一郎氏が亡くなった。同社の社長交代人事も発表された。一つの時代が終わったのだと感じる。この先どうなっていくのかとても気になる。

    本書の著者は清武英利氏。読売巨人軍の元球団代表だ。自分は知らなかったが、現在ノンフィクション作家として活躍されている。

    本書は86(ZN6)とスープラ(A90)の開発秘話である。環境保護が叫ばれる現代において最後になるかもしれない純エンジン車のスポーツカーの開発を、あるチーフエンジニアを主人公にした物語風に書かれている。

    出てくる会社もトヨタだけでなく、スバル、マツダ、BMWと多く、それぞれの車づくりに対する思いを感じられた。

    また、サラリーマンとして、おぼろげであやふやなものをしっかり形にし、完成させる力とその術に自分も尻を叩かれた思いがした。

  • 夢ややりがいが詰まった「どんがら」出世や名誉のためじゃなく、自ら目指すもののために。
    なにかを生み出そうとする熱い気持ちや真剣なぶつかり合い、どこか欠けてしまっているものなのかもしれないなーと。季節の変わり目の今、いい本でした。

  • TOYOTAでスポーツカーを開発する話

    自分のやりたい事と会社の目指す事が合致すると、やりがいが最大化される
    その反面、家庭が犠牲となる

    ハチロク、スープラの開発
    スバル、BMWとの共同開発

  • SUBARUと共同開発した86/BRZのトヨタ側開発責任者の奮闘記。

    大衆車メーカーと自らを規定するトヨタで、市場規模のわからないスポーツカーを開発するのは想像以上に内部調整が難しい。

    悩んだ主人公が相談に行ったMAZDAのロードスター開発の重鎮とのやり取りには、会社の枠を超えてスポーツカー開発に賭ける者に共通する心情が見える。

    仕事の作法から手続き、用語まで異なる共同開発をやり遂げたのは、リーダーの力量に加えて、メンバーたちの情熱があったことに間違いない。

    その後BMWとのスープラ共同開発にも駆り出された主人公の行く末には、勤め人の悲哀を感じざるを得ない。

  • 世の中には、暖かな日の当たる場所もある。
    どのように苦しい過程を経てであれ、最終的に、そう受け止められる職業生活を送ることができるというのは、素晴らしい星の下に生まれ、生きてこれた、ということだと思う。
    清武さんの筆力もあるのだろうが、羨ましい、というだけのこと。

    印象的なフレーズは以下。

    ー俺はこのドンガラを見るために頑張ってきた。
    多田は思った。
    それは出世するとか、表彰を受けるとか、会社の業績の一端を支えるとか、定年後には泡のように消えてしまうものではなく、数寄者の魂をがらんどうの車に吹き込む、夢の実現だった。
    (P222)

  • もうちょっと熱さ
    が伝わると良かったかな

    車好きじゃないので伝わらなかったのかなと
    思ったけど、全然興味ない分野でも
    伝わるケースも有るしな…

    しかし、いまさらスポーツカーとは

    自動運転で移動する快適な部屋
    が主流だろうに

    儲かるのかな
    一時的な流行で終わりそう
    趣味としてのニッチな産業として残るのかな

    日本の自動車産業も家電のように
    世界で負け組にならないことを祈る

  • たくさんのエンジニアが出てくる。そのトヨタの優秀な人材の勢いに後押しされる様に、グイグイ引き込まれてしまう。これからは、同様の働き方はできないが、違うタイプのエンジニアが突進することを期待して本を置いた。

  • 86復活までは長かったなぁ〜

    トヨタは一般大衆車で、デカくなったイメージでしたが、昔は結構、尖った車、沢山あったなぁっと感慨深く…。

    絶対に売れない、儲からないと言われたスポーツカーを、命がけで造り上げた男がいた。

    技術者やその家族の苦闘と人生の喜び、トヨタを世界企業に押し上げた仕組み、独特の企業風土と文化、緻密に細部まで描かれており、驚きも多かった。

  • 自動車業界で、販売台数世界No.1、つまり、大衆向けの車を作っているトヨタで、
    「売れない」「儲からない」と言われながらも、若者の車離れを食い止めるために、採算性を超えて再挑戦したプロジェクト=スポーツカー「86」やスープラの復活に賭けたトヨタチーフエンジニアとその部下たちの心震わす物語。

    技術者はときに、自己実現や「自分がこういう車を作りたい」という情熱を原動力にしているため、営業部門や役員から理解されないことも多くあっただろう。
    トヨタの核や強み、本分とは異なり、社内からの軋轢は多かったことだろう。
    ただし、そこには単なるスポーツカーの復活を遂げ、大きな壁を乗り越えた熱い物語というだけでなく、自動運転やカーシェアリングの時代、百年に一度の大変革期に、スポーツカーを作ることの意義を考えさせられるものだった。
    特に、
    「自動運転やカーシェアリングの時代に、スポーツカーは生き残れるのか」とスポーツカーの定義を問われたときに、多田は「スポーツカーとは本質的に、日常の役に立たないものです」と断言した。
    車は通勤から運送、レジャーに至るまで幅広くちゃんと役に立つものである一方、スポーツカーは心を満たす趣味の領域のもの。その世界はいつまでも残るだろうが、これからの時代はどんな車好きも体験したことのない驚きや感動を与える付加価値を、スポーツカーを使った新しい遊び方(例えば、ゲームやメタバースに絡めて)を同時に提供していくことなどが求められている。
    このプロジェクトは、まさに赤字でも取り組む価値(これまでとは異なるプロダクトやサービスの可能性)に満ちていることを痛感させられた。

    私たちは「トヨタの10年後」には、
    ほんの数十年前の携帯市場の(現在は1位韓国・サムスン、2位米国・アップル、3位中国・シャオミだが)1位フィンランド・ノキアや2位米国・モトローラなどトップシェアを誇っていた企業が「スマホの台頭」によって軒並み消えてしまったように、
    トヨタも消えてしまっていることもあり得ない話ではないし、ゲームチェンジは突然訪れるもの。
    しかしながら、トヨタもスポーツカーの開発・製造・販売・サービスを通して、新しい価値を生み出すことの意義を見出だせたと思うし、土台は着実に作れているんじゃないか、と感じた。

  • 車に全く興味がなく、スポーツカー「86」「スープラ」も全く知らない私が読んでも胸が熱くなるノンフィクション仕立て小説(読後にネットで写真確認したが流石に「86」も「スープラ」もカッコイイ)。というのが半分で、意外に世界のトヨタも普通の大企業にありがちな官僚的会社であることがわかって少しホッとした。スケールが大きいだけあって、特異な人材も豊富で、異能を活かす素地があるところは流石ではある。週刊現代連載だそうだが、会社員であれば共感できるところ多数で、処世のヒントが色々見つかる。

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著者プロフィール

きよたけ・ひでとし/元読売新聞編集委員。2004年より巨人軍球団代表を務め、2011年に解任。現在はノンフィクション作家として活動する。2014年『しんがり 山一證券 最後の12人』(講談社文庫)で第36回講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『トッカイ 不良債権特別回収部』(講談社文庫)、『サラリーマン球団社長』『後列のひと 無名人の戦後史』(ともに文藝春秋)など。


「2023年 『どんがら トヨタエンジニアの反骨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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