- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065326862
作品紹介・あらすじ
専業主婦の涼子は、冷え切った夫との関係や言うことをきかない二人の子どもとの生活に、疲労感と閉塞感を覚えていた。45歳の誕生日を明日に控えた深夜、書籍編集者の夫に女性から一本の電話がかかってきた。「小説家の重原宗助先生からの仕事が入った」と家を出てしまう夫。我慢の限界に達した涼子は、家を飛び出す……。涼子が向かった先は、夫の愛人ホステスが勤めるクラブの入ったビル。1階のBAR「マーキームーン」に入ると、文学好きの美しいママが話しかけてくる。性別は男だというママは、涼子の悩みや素性を鋭い洞察力と推理力で言い当ててしまう。涼子がママに夫の愚痴を話すと、唯一の「良い思い出」である大学時代の彼氏・カズトにもう一度会おうと、旅に出ることになる。
感想・レビュー・書評
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主婦の沢辻涼子は、中学と高校になる子どもの世話とすれ違いで会話もない夫との生活に孤独感を募らせていた。
その矢先、久しぶりに帰ったきた夫の浮気を疑い、後をつけて家を飛び出し、BARのママ・野宮ルナと出会う。
愚痴をこぼしたところ、涼子の心の中まで見抜いていて、自分が抱える報われなさの正体が元彼であることを言い当てられ、元彼を探すために大阪へと2人旅が始まる。
元彼探しのなか、ルナの洞察力と推理力で道中に巻き込まれた事件を解決していくのも謎めいていて楽しめる。
そして、大阪にはたくさんの文学の石碑があることを今更ながら知った。
元彼の今を知ったとき、ルナはそれも想定していたことに何故か納得してしまう。
ルナの正体がわかるとなるほどね、となる。
やはり涼子自身が気づいてこそ、である。
どんなにままならなくても、もどかしくても、苦しくても、わたしも生きている限り、自分自身の物語を紡いでいかなくてはならない。
最後の句読点が打たれるその時まで、わたしは主役を張り続ける。
誰もが主人公。
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秋吉理香子さんの新刊、なんともオトナな雰囲気の表紙ですよね!しかもタイトルは「月夜行路」、ちょっとロマンチックな作品かと、わくわくしながら手にしてみました。
主人公は専業主婦の涼子…夫と2人の子どもの4人家族、子どもたちは涼子の言うことは聞かず、そして夫は家庭を顧みず仕事と称して浮気をしているという疑惑がある…。ある日、深夜に関わらず仕事だと出かける夫を追いかけるのだが、夫が入店したお店とは別のお店に入ってしまう…。そこで出会ったゲイバーのママであるルナと、涼子の忘れられない元カレ、カズトを探すため大阪に行くことになる…。ルナは無類の文学好き、文学が好きであるからこそ人を見る目も持っていると自負している…。大阪に着いたふたりは、カズトを探しながらも文学になぞられ様々な名所をめぐるのだが、行く先で事件が起こる…。事件を解決に導くことはできるのか、カズトとの再会は叶うのか、これからの涼子はどうなっていくのか…。
いや~主人公の涼子は、ちょっとなぁ…苦手なタイプだなってつい思ったり、でもルナはいい感じ~、結構好きなキャラだったりします!!読み始める前に思っていた、ロマンチックな作品ではなかったし、ちょっと設定に無理があるのかなって感じたり…したので、私の評価は低めにしました。でも、大阪には行きたくなりました!これからの涼子の幸せを願うより、ルナの幸せを願いたくなる作品でした。 -
正直、予想していた展開と違ってましたが、サクッと読める展開のうえ、晴れ渡るような読後感が個人的には好みでした。
主人公は専業主婦の女性。編集者である夫が浮気していると疑念を抱いた主人公は大学時代の恋に思いを馳せる。当時付き合っていた恋人とは結婚を意識する関係性だったが、突然別れを告げられてしまう。主人公はその未練を抱いたまま、かつての恋人に会うため、大阪へと向かうというストーリー。
ここまでのストーリーですと、恋を描く作品のように感じますが、実は本作は連作短編のミステリー。大阪でなぜかトラブルに巻き込まれてしまう主人公と付き添いのスナックママが謎を解決するという構成です。文字にすると、ツッコミどころあるような展開ですが、そこはご容赦ください笑
本作のポイントの1つとして、文学作品をオマージュしたようなミステリーが展開されていることで、本好きにはもしかしたらツボかもしれません。 -
「女ふたりの【暗夜行路】ってところかしら」
バレーボール一筋の人生を送ってきたが 出産を機に実業団を引退した涼子。四十四歳、専業主婦。
高校生の娘と中学生の息子は反抗期ぎみの生意気盛り。夫はどうやら浮気をしているようだ。そして、涼子には今でも忘れられない元彼がいる。
ある夜、夫が浮気相手に会いに家を出る姿を目撃した涼子は酔いに任せて 浮気相手のいるキャバクラに乗り込もうとするが…
ひょんなことから(この言葉便利)、ゲイバーのママのルナと元彼を探す旅に出ることになる。
元彼を探すべくいざ大阪へ!
作家志望だというルナとの旅は、初日から『文学の聖地巡礼』の旅となる。
泉鏡花の【南地心中】
林芙美子の【めし】
横溝正史の【蝶々殺人事件】
数々の小説の舞台、文豪たちの石碑
『大阪を歩けば、文学にあたる』と涼子。
旅の初日、【曽根崎心中】で二人が心中した 露天神社を参拝した帰り道、錆びたベンチに手をつないでもたれあうように座っている男女をみかける。微動だにしない二人。どうやら死んでいるようだ…。心中かと思われた二人。実は………。
小説が好きで鋭い洞察力を持つルナが事件を解決へと導いていく。第2章の【春琴抄】で強盗に出会い第3章の【黒蜥蜴】でまた殺人事件の現場に居あわせる。『ルナも歩けば、事件にあたる』やん!てか大阪 治安悪すぎやん!
文学×女二人旅、友情、家族の絆
みたいなお話だと思って読み始めたわたし
急にミステリーで混乱 (*´Д`≡´Д`*)
あ、これミステリー小説だったの?
混乱した頭に、人並外れた洞察力を持ちアチコチで大金をポーンっと出すルナって何者なのか気になるでしょ?携帯メールだけで登場するルナのダーリンの存在気になるでしょ?ん?ん?ってさ、もう元彼探しとかどうでも良くなってくる笑
ラストでバババーっと種明かしがあって
「どやっ!スゴいやろ!泣けるやろ!」って言われました。(言われてない)
何を1番に伝えたかったんだろう
( ˙˙ )?
そして予想してたことがだいたい当たるっていう笑
あとわたしが文豪さんを知らなすぎるっていう笑-
2023/09/24
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2023/09/24
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2023/09/24
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イヤミスの旗手と言われる秋吉理香子さん。
これまで読んだのは
『絶対主義』と『終活中毒』
私、”イヤミス”はちょっと苦手なはずなのに
既読の2冊は☆4をつけていて、なかなかに面白かった。
『月夜行路』は
フォローしているインスタグラマーさんおススメ。
手にしてみたら
これまでの”イヤミス”とは違って
ちょっと考えさせられて心に沁みるミステリだった。
『月夜行路』は大阪で涼子の元彼を探す旅。
大阪人には馴染みの深い町の描写があって
思わず「おぉー!」と声をあげたくなる。
大阪人で読書好きと公言している私だが
文中で二人が言う
「大阪を歩けば文学に当たる」だとか
「大阪の街って、文学で編まれてるんじゃないの」
なんてことは、これまで一度たりとも思ったことがない。
大阪にこれほど多くの文学碑などがあるとさえ知らなかった。
大阪を舞台にした小説が数多くあることは知っていたけれど
「えっ?! そんなに?」と本当にびっくりしたのが正直なところ。
ルナと涼子は『月夜行路』の中で
なんと14か所もの文学ゆかりの地を訪れたののですよ。
14か所!そう14か所!
(と、なぜだかちょっと興奮しておりまする)
大阪を舞台にした文学と言えば~
私が思い浮かべるのは
「曽根崎心中」「夫婦善哉」・・・
昭和も昭和、昭和のど真ん中生まれだが
なぜだか、思い浮かぶのはこの二つ。
でも、私、この二作品は読んだことがない
なのに何故この二作品?
実はどちらも舞台を観たことがあるのだ。
ちなみに「曽根崎心中」は蜷川幸雄さんの演出で、主演は坂東八十助さんと関根恵子さん。
「夫婦善哉」は藤田まことさんと宮本信子さんが主演。
(この時は母と祖母と三人での観劇だったなぁ…)
どちらももう30年近くまえのこと。
あら、私、すごい記憶力?
いえいえ、それだけ舞台がすばらしくて忘れられないのだ。
と、話があっちゃこっちゃ行ってしまったが…
『月夜行路』は小説として楽しめて
大阪文学旅としても楽しめて
”一粒で二度おいしい”、まるでアーモンドグリコのような…
ちなみにグリコの本社は大阪!
あっ、これは有名でしたね -
女の逃亡記かと思っていたら、
そうではなく、ちょっと何日間か旅する話。
辛い描写は無く、サクッとあっという間に読み終えた。
私も谷崎潤一郎さんは若い頃に好んで数冊読んだが、文学好きな方なら楽しめるだろうなと感じた。
軽いミステリーを合間にちょこちょこと挟んだ、ほわっとハートフルなお話。 -
読みやすくサクサク読めた
本の感想とは関係ないが
他の方も書いてあるが大阪の印象が変わった
美味しい食べ物と楽しい街という
印象があったが知らない事が増えてよかった
視点を変えてみるのも大事だと思った -
今作はハートフルなミステリー。
謎解きの合間に、文学好きのママの豆知識が披露されるのが興味深かった。
文学碑巡りしたくなってしまう。
後半、昔の恋人の和人に会いに行くあたりからがよかった。
ミステリーそのものというより、ママの人柄に惹かれて一気に読み終えた。 -
本を閉じてもなお、この余韻に涙が溢れている。
皆それぞれ、誰かの夢を叶えている存在って、ほんとそうだよなぁとしみじみ感じつつ、主人公が最後に気づいた真実に色んなことが逆再生されていくような感じになった。
当たり前になり過ぎて見えなくなっている、今ある幸せに改めて気づかせてもらえた。
文学者たちのことは詳しくないので、文学碑めぐりに関してのところは流し読み状態になってしまったけど、読み始めてすぐの段階から、きっとこの本面白い!と感じた直感は間違いなかった一冊。
ここまで書いている今もまだなお余韻に浸りながら本の世界を感じられている。