少女小説とSF (星海社FICTIONS)

  • 星海社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065351451

感想・レビュー・書評

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  • どれもめちゃくちゃ読み応えあって面白かったです。
    すきな先生ばっかりで本当に嬉しかった。

    個人的に印象が強かったのはやっぱり『とりかえばやのかぐや姫』と『或る恋人達の話』。

    『とりかえばやの~』はかぐや姫はモチーフとしてもう使い尽くしたと思ってたから、こんな幻想的に読めるなんて思ってもみなかったです。大人のおとぎ話といった感じ。
    『或る恋人達の話』はもうゴリッゴリのSFでした。展開もオチも見事。そして痛烈に風刺が効いている。これぞSFといった体。

    世界を大きく変えて前提を作って、その中でも変わらないものを取り上げて見せるのがSFのいいところかなと思っていて。
    どの作品もそれが感じられてとても好きでした。

  • 日本SF作家クラブ、嵯峨景子編『少女小説とSF』読了。母所蔵の新井素子からSFに入ったクチなので感慨深く読んだ。
    少女小説ブーム直撃ではないけれどまちがいなくその余波を浴びてきたのだなと。
    雪乃紗衣「一つ星」が雪上の極寒世界という極限状況で育まれる交流、関係性の妙味が"仕掛け"も含めて秀逸。

  • 紅玉いづき先生の書き下ろしがあると聞いて購入。とても面白かったです。企画してくださった偉い人が『もし売り上げが良かったらシリーズ化して続編を出したい』と呟いていたので、好きな作家さんがいる読者は是非購入して欲しい。シリーズ化をお待ちしています。

  • どれも楽しかったー。
    私は彩雲国がめちゃくちゃ好きなのだけど、彩雲国のキャラとかストーリー以前に、雪乃先生の装飾過多気味な文章が、好き。

  • 少女漫画や少女小説って、SFというジャンルと隣り合わせの時代があったように、何とはなしに感じていました
    自分の読書遍歴においても、SFの入り口が何だったのかと言えば、コバルト文庫の新井素子さんの作品だったことが懐かしいです
    そんな、かつて“少女小説”というジャンルの中でSFを紡いでいた作家さんたちのアンソロジーが、この一冊です
    収録されている作家さんは、かつて愛読していた方、今でも読んでる方、初めて拝見する方もいらっしゃいましたが、どの作品もとても個性が強く、でも取っつきやすくて読みやすい、色とりどりの様々なSF…かつて“少女小説”のジャンルに浸りきってたものにとっては夢のような作品集でした
    また、少女小説のジャンルとSFの歴史や、各出版社毎のレーベルの特色を解説してくれるパートも良かったです
    かつてはSF、次第にファンタジーや中華風の世界観の作品が増えてきた流れとか、レーベルによっては男子を主人公に据えた“少女小説”を得意としていたとか、BLを独立したパッケージとして始める出版社もあったりなど、少女小説のジャンルから産まれて派生したブームが様々にあったことの歴史を解説してもらえるので、“少女小説”ってものを、かつて読んでいたけど、だんだん遠巻きに感じる程度になっていた人間には、改めてその変遷を知ることができ、勉強になります
    また、この本の序文では“少女小説”というものを、心に“少女”の感性を抱く人へ向けた作品としており、その客層として年齢や性別を定義付けてはいません
    だから、かつて少女小説を愛読していた人も、手を出せてなかった人も、これから小説ってもんを読んでみよう思っている人にも、色んな年代の色んな人におすすめしたいです
    一番手として収録されている新井素子さんの短編は、幼い頃に自分と居てくれた、かけがえのない存在の枕型のパーソナルAI、モフちゃんを思う女の子のお話でした
    つまりはぬいぐるみSFなんです、泣ける
    新井素子さんのぬいぐるみをテーマに置いた作品は、モダンホラーやエッセイなどでも絶品でしたが、“少女小説”というジャンルのしかもSFで! その新作が読めるなんて、感慨深いです
    少女の一人称小説、そしてその少女が抱いた決意と成長を真っ直ぐに感じる上質な“少女SF”でした

    収録されている作品で、他に好きなのは『とりかえばやのかぐや姫』です
    かぐや姫は月からの来訪者である、という部分のSF解釈上と“とりかえばや”つまり、男女逆転のかぐや姫、かぐやの尊と少女帝の物語で、少女帝の人物像が素晴らしく惹かれる作品でした 上質な恋愛ものでもあって大満足です



    あと、こちらはちょっとした小咄で、この書籍のレビューとは逸脱した内容なのですが、ぬいぐるみSFを読んだ記念で記入しておきます


    自分のうちにはかつて、遊び相手になってくれるぬいぐるみの友人チームがいました
    ネズミのねず、カエルのかる、恐竜のぺーぺー、という3匹組です
    そこへもし、ある方の幼馴染みの“ロバのロバン”が遊びに来てくれたら? と想像してみた話です

    【ろばのロバン、旅に出る】

    ろばのロバンは賢くたくましい冒険者のろばでした
    今日も冒険にでかけます
    冒険において大切な事とはなんでしょうか?
    そう、事前準備です

    ロバンははるか遠くの地に旅立つことを望んでいました
    それにはまず、路金を確保しなければ
    お友だちのネズミのねずに相談をしました
    ねずは長野県坂城町で“ねずみだいこん”の大農場を経営する、ねずみのお坊っちゃんでした

    辛くて美味しいねずみだいこんを、ロバンとねずは各地の道の駅の直産販売所やおそばやさん、うどんやさんに直接訪ねたり、通信販売をしたりで、たくさん販売しました
    そしてロバンの冒険ためのクラウドファンディングの募集も行いました

    資金の確保ができました
    次は冒険の“つばさ“の準備です
    ロバンは天才科学者のカエルのかる博士に相談をしました
    かる博士と協力して、ねずも手伝ってくれて、トンテンカンテン……立派なのりものができました

    長い旅路に出かけても安心の安全設計
    道中や出かけた先でも美味しいご飯が食べられる多機能キッチン
    高度な通信機能も完備し、テレビ電話も付いています
    マンガやゲームなんかのアーカイブデータもたくさん乗せました

    あとは燃料を手に入れるだけです
    暴れん坊で有名な恐竜のぺーぺーは、口から放射線ビームが出てくるゴジラ一族の末裔でした
    ねずとかるはいつものようにぺーぺーを怒らせて、ビームを発射させて、放射線ビームエネルギータンクに充電をしました

    旅の準備ができました
    ロバンは宇宙に飛び立ちます
    ロバンはたくましい冒険家、しかし宇宙に出かけるのははじめてです
    でも、ロバンにはどうしてもたどり着きたい場所がありました
    宇宙の漆黒の闇と星の海を抜けた、遠い遠い惑星、それがロバンの目的地でした

    その惑星は、宇宙開拓士のきつねくんが暮らしている星でした
    ロバンときつねくんは幼馴染みです
    ロバンはきつねくんに会いたくて、冒険をして来たのです

    遠い遠い地球とこの惑星で、テレビ電話でお話ししながら、たくさんごはんを食べました
    ロバンがおみやげに持ってきたのは、おしぼりだいこんのうどん、きつねうどん、かもなんばんそばでした
    (実はこれ、クラウドファンディングの宣伝でもあるんですよ)
    地球では、きつねうどんが好きなねず、かもなんばんそばのお肉ばかり食べたがるぺーぺー、おしぼりだいこんのうどんに使う搾り汁器の新しい機械を発明するかるが大騒ぎで食べながら、ロバンたちに手を振ります

    きつねくんとロバンは、きつねうどんをもぐもぐたべて
    かもなんばんそばをつるつるむしゃむしゃたべて
    おしぼりだいこんのうどんもたべて、辛くてちょっと泣いちゃったそうです
    ロバンはニコニコ笑いながら、ふたりの涙をふきました
    ふたりはこれからもいっしょです
    めでたし、めでたし

    • 傘籤さん
      ロバンの小咄だー!前にちょろっとコメントで言ってたのをまさか書いてくれるとは……。頬が緩んでしまう素敵なお話でした。誰か―、これ絵本にしてー...
      ロバンの小咄だー!前にちょろっとコメントで言ってたのをまさか書いてくれるとは……。頬が緩んでしまう素敵なお話でした。誰か―、これ絵本にしてー!ねずはやり手のお坊ちゃんだったんですね~。かる博士もありがとう……完璧な設計です。ぺーぺーはちょっとトラブルメーカー?的なところがあり可愛い笑
      さんにんの関係性も垣間見えて楽しく、宇宙にきつねにかも南蛮と要素要素が綺麗につながった俺得なお話でした。素敵なお話をありがとうございました。ロバンときつねはきっとさんにんにすごく感謝していると思います。
      2024/04/19
    • たけうちさん
      傘籤さん、こちらでもおはようございます
      読んで頂けて嬉しいです、そして良かった…
      自分はねずとかるとぺーぺーのキャラ立ては分かってるんですが...
      傘籤さん、こちらでもおはようございます
      読んで頂けて嬉しいです、そして良かった…
      自分はねずとかるとぺーぺーのキャラ立ては分かってるんですが、ロバンさんのことは想像するしかなかったので…優しくて勇敢、コミュ力が高くてわりと食いしん坊、きつねくんにはお兄さんのように接する、というイメージでまとめてみました
      うちのねずたちも、愛でて下さって嬉しいですし、またロバンさんと遊んで欲しいです
      俺得と思って頂けたとは、一番の誉め言葉です!
      そうですよね、形にしたい…というか、noteの絵巻画家のあの方をどうにか口説いて描いてもらえないかな~なんて妄想していたんです
      他の話も思い付けたら、プレゼンしてみましょうか
      2024/04/19
  • どの作品もとても面白かったです。作家さんたちはどの方も一度は目にした…拝読したことのある方々ばかりで。
    特に新井素子先生は私が中学生の時に「チグリスとユーフラテス」を拝読し、こんなSFもあるのか!と、新境地を知った作家さんでもあります。
    色濃く残された先生方の星の欠片を胸にしまい、私もSF作品書いてみたいな!と思わされた一冊でした。

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著者プロフィール

1977年「わたしの中の・・・・・・」が奇想天外新人賞佳作に入賞し、デビュー。以後『いつか猫になる日まで』『結婚物語』『ひとめあなたに・・・』『おしまいの日』などを発表。1999年に発表した『チグリスとユーフラテス』が第20回日本SF大賞を受賞。

「2022年 『絶対猫から動かない 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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