- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784082990084
感想・レビュー・書評
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北海道十勝岳の奥にある太古の原生林、そこには体長わずか十数センチの小さなヒトビト「ニングル」たちがひっそりと、自然と共に棲んでいる――。妖精ではなく実際に存在する先住民族とされるニングル達、自然と共にゆるやかに命を繋ぐ彼らの眼には、人間の生活や文明はどのように映るのか。電気、お金、文字、教育、土地、命、時間などを各章で扱い、愛おしく幸福なニングル達の姿から、自然に逆らい、欲に生き、自らを縛り付ける窮屈な人間の姿を浮き彫りにする。優しくも強く明確なメッセージを握りしめた、倉本聰による初の童話作品。
まず単純にニングル達が愛おしい。純粋で、欲がなく、争いを嫌い、そして何よりも彼らは人間を含む万物に対するいたわりの心を持っている。妖精ではなく先住民族ということからもわかるように、彼らは人間達によって棲み処を奪われ、原生林の奥地で隠れるように暮らすことを余儀なくされている。しかしその生活すらも人間のより壊されそうになるのだが、童話の最後を締めくくるニングル達の叫びに読者は胸を痛めずにはいられない。
「人間様に手紙を書きたい。
ダムをなくすよう伝えなくちゃいけない。
でも――。
ボクたちは文字を持たないから、手紙を書きたくても書くことが出来ない。
それに――。
かりに手紙を書き川に流しても、きっと途中のダムにひっかかって、人間様の住む下流まで届かない――。」
人間のエゴ、自然破壊、届かぬ思い、この愛おしく優しさに包まれた童話は、自分本位の人間に対する皮肉を幾重にも層を成して描き出す。生涯そばに置き世代を超えて読んでいきたい傑作童話である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シナリオ作家の倉本總さんの未来の子供たちへの童話、『ニングルの森』。
ニングルとは、北海道の森に、わずかに少数生存する体長十数センチの先住民族です。
寿命は300年ぐらいといいますから、時間はたっぷりあります。
そのニングルの、自然とゆっくりかかわっている話、
ニングルが持った人間社会への素朴な疑問など10篇。
2~3年前に女優の森上千絵さんの朗読を聴いたことがあります。
あなたも、朗読という形で声にだして読んでみてください。
お子さんにも、ぜひ聴かせてくださいね♪
(先ごろテレビで紹介されたとか・・・)