なんて素敵にジャパネスク ―新装版― なんて素敵にジャパネスク シリーズ(1) (なんて素敵にジャパネスク シリーズ) (コバルト文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086145688

作品紹介・あらすじ

時は平安-京の都でも一、二を争う名門貴族の娘である瑠璃姫は十六歳。初恋の相手・吉野君の面影を胸に抱いて独身主義を貫く決心をしていた。だが、世間体を気にする父親は、結婚適齢期をとっくに過ぎた娘にうるさく結婚を勧めてくる。ついにある夜、父親の陰謀によって権少将と無理やり結婚させられることに!?絶体絶命の危機を救ってくれたのは、筒井筒の仲である高彬だったが。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、平安時代に生きた人たちが大真面目に和歌を詠み、堅苦しい生活を送っていたと本当に思うでしょうか?

    私は紫式部さん「源氏物語」を角田光代さん訳で一年半かけて読み終えました。もちろん実日数としてはトータル10日間ほどのことでしたが貴族の栄華を見る物語には平安の世の人々の暮らしが朧げながら浮かび上がりました。そこに私が見たのは厳格な身分制度の中に、和歌を詠み帝にお仕えしていく貴族の姿でした。

    そんな中に光源氏という人物の”女好き”という人となりを見るにつけ、いつの時代も人の世が大きく変わることはないとは思いましたが、とても暮らしていけそうにない堅苦しさの極みを見る生活具合に、この時代の人は常に大真面目だったんだなあ、私は生きていく自信がない…そんな風にも思いました。

    しかし、本当にそうなのでしょうか?平安の世を生きた人々は本当に大真面目な日常を送っていたのでしょうか?

    さてここに、今から40年前に平安の世を舞台に描いた物語があります。シリーズ累計800万冊という圧倒的人気を誇るこの作品。そんな作品に、今まで思い描いていた平安の世が別物に上書きされるのを感じるこの作品。そしてそれは、『女は待っているだけ、耐えるだけ。冗談じゃないってのよ。やっていられないわ』と語る主人公・瑠璃姫が時代を駆け抜けていくのを見る物語です。

    『女子の幸せは、よき殿方を通わしてこそ』と『ばばさまやとうさま』に言われるも『結婚する気はありませんからね。生涯、独身で過ごすわよっ』と応戦する日々を送るのは主人公で『京でも一、二を争う名門貴族の姫』である瑠璃姫(るりひめ)。ある日『瑠璃ねえさん、いる?』とやってきた弟の融(とおる)の後ろに『融と双子のように仲のいい幼友だちの衛門佐、藤原高彬(ふじわらのたかあきら)の姿を見る瑠璃姫は『父上が女房たちに』『どうにもならんじゃじゃ馬娘だ』と『当たり散らしていた』と融から聞かされます。『よくもまあ、つぎからつぎへと』、『きょうのは、どんなだったと思う?三十八歳の権中納言よ。冗談じゃない』と返す瑠璃姫に『父上は心配なんだよ、ねえさんが昔の初恋の思い出を引きずって売れ残ってしまうのが』と融は続けます。『吉野のほうに隠居していた母方のお祖母さま』の家で『十歳になるまで暮らして』いた瑠璃姫は、吉野君に出逢いました。『あたしが九つ、彼は十か十一』という中、『朝から晩までふたりで野っ原に転がって…』と『エデンの園のアダムとイブ顔負けの幸福な毎日』を送っていたという瑠璃姫。そんな中『いつかわたしが父上に認められ、都によばれ、官位を授かることができたら、お迎えに行ってもいいですか』と言われた瑠璃姫が『うん』と頷くと『お約束に、接吻していいですか』と言われます。しかし、幸せは続きません。『かあさまが亡くな』り、『お祖母さま』が寝込み…ついには『はやり病であっさり』吉野君まで昇天してしまいます。
    場面は変わり、『大納言忠宗、即ちとうさま主催の管弦の宴が、我が屋敷の南庭』で開かれます。『いま、笛を演奏しているのが中務卿宮の第三子、権少将であられる』と紹介されるも『ふ〜ん』と興味のない瑠璃姫ですが、『瑠璃姫は箏の琴がお得意とうかがっております…』と権少将が歩み寄ってきます。『そばにいた女房に、「おととい来やがれ、とお言い」』と伝える瑠璃姫。女房は『いと優雅』にそのことを伝えますが、権少将は吉野の話を出し瑠璃姫の気をひきます。『吉野君は中務卿宮の…』と思い『胸の動悸が激しくな』った瑠璃姫は部屋に戻ります。そんなところに高彬がやってきました。『今宵の宴は、権少将と瑠璃さんを引き合わせるためのもの…』と説明する高彬は吉野の話も作り話であることを示唆します。そして、部屋に戻る途中で、権少将が『今夜のうちに強行突破して、既成事実をつくってしま』う心づもりという『とうさまと母上』の話し声を聞いてしまいます。『冗談ではないぞ…やつの妻になるくらいなら、高彬の年上妻になったほうが、よっぽどましというもの』と思う瑠璃姫は融の部屋に逃げますが、運悪く『ばったりと権少将に出会ってしま』いました。『瑠璃姫、わたしは遊びではありません…』と手を取る権少将に『なにすんのよ、このすけべ男っ!』と抵抗する瑠璃姫は、隙を見て融の部屋へと飛び込みます。『ああ、もういや!…実の親に夜這いの手引きされるなんて、この世も末だわ。尼になってやる』と泣く瑠璃姫。そこには、高彬の姿もありました。そんなところに『瑠璃姫はどこにおられる。姫!』と権少将が追ってきます。『がたがた震え』る瑠璃姫は『どうしよう。高彬、あんた腕に覚えあるの』と縋ります。『衛門佐だから、多少はね。だけど大納言さまを向こうに回してまで、瑠璃さんを守る義理はないし』と冷たい高彬。そんな中に入ってきた権少将は、『瑠璃姫、こんなところで衛門佐とご一緒とは、どうしたことだ。あなたは、わたしの妻となる身ですよ』と言います。それに『妙なことを言われます。権少将どの』、『瑠璃姫とわたくしは、行く末を固く契った、振り分け髪のころからの筒井筒の仲ですよ』と言い切る高彬。『それは本当ですか、瑠璃姫!』と『険しい表情』を向ける権少将。『冗談ではない。そんな身に覚えはないわ』と思うも『いまは恥を云々しているときではない』と理解する瑠璃姫は『そ、そうよ。絶対、そうよっ。あたしと高彬は、ぶっちぎりの仲よっ!』と『声を大にして叫』びます。そんな瑠璃姫が活躍するかっ飛んだ平安絵巻が描かれていきます。

    “時は平安 ー 京の都でも一、二を争う名門貴族の娘である瑠璃姫は十六歳。初恋の相手・吉野君の面影を胸に抱いて独身主義を貫く決心をしていた…ある夜、父親の陰謀によって権少将と無理やり結婚させられることに!?絶体絶命の危機を救ってくれたのは、筒井筒の仲である高彬だったが…!”と内容紹介にうたわれるこの作品。集英社の「小説ジュニア」に、なんと今から40年以上も前、1981年にその第一巻が掲載されています。その後、漫画化され、テレビドラマ、そしてラジオドラマ…ともなったこの作品は、一方で10冊までシリーズ化され今までに累計800万冊を超える売り上げを記録しているようです。これは、氷室冴子さんの紛れもない代表作と言えると思います。

    まさかの平安絵巻を現代という時代に描いていくこの作品は、読みどころに溢れています。三つの側面から見てみましょう。まず一つ目は平安の世を分かりやすく読者に伝えようとする工夫です。私は昨年に紫式部さん「源氏物語」を角田光代さん訳で読み終えましたが、現代語訳であっても往時を当たり前とする前提のない者にとってはその時代を頭に浮かべるのは困難を伴います。この作品ではこんなやり方をとることであまりに自然に平安の世の風景が頭に浮かび上がってきます。

     『裳着(女の子の成人式。十二~十四歳ぐらいの間に行われる)を終えた十三歳ぐらいのころ…』

    『裳着(もぎ)』と言われてピンとくる方はいらっしゃらないと思います。こういった場合”注”としてページの下部や巻末に補足する場合もあると思いますが正直そういった見比べ読みは面倒です。それを”( )”書きでサラッと記すのがこの作品です。もう一箇所見てみましょう。

     『あたしは足音を忍ばせて勾欄(廊下の手すり)に近付き、草履を脱ぎすてて勾欄をよじのぼって、簀子縁(廊下)に立った』。

    『勾欄(こうらん)』、『簀子縁(すのこえん)』と言われても全くもって意味不明です。しかし、この”( )”補足のついた一文の意味が分からないという方はいらっしゃらないと思います。ほんの一工夫で驚くほど読みやすい文章を紡いでいかれる氷室さん。どなたか、この方法で「源氏物語」を訳していただけないでしょうか?

    次に二つ目は、数多の平安絵巻の物語同様に、なんと和歌が登場するところです。一つ見てみましょう。

     『筒井筒 契りのかなふ今日なれば
      媾ひ見し後は 絶えて惜しまん』

    『筒井筒』とは、『行く末を固く契った』=『将来を誓った』という意味ですが、瑠璃姫は『初恋の吉野君が亡くなって』、『なき暮らして』いましたが、そんな瑠璃姫を慰める中に『筒井筒の契り』をしたというのが一つの裏事情として物語を支えていきます。「伊勢物語」の歌に見る『筒井筒』。上記した和歌はそんな前提のもとに、高彬が瑠璃姫に詠んだ歌という位置付けです。物語では、そのすぐ後に、『幼いころからの思いがかなう今日、一夜を共にした後は、たとえ死んでも悔いはない』という現代語訳が添えられています。一方でそんな歌を贈られた側の瑠璃姫はこんなことを思います。

     『もっとロマンチックで、もっと美しい歌を期待していたあたしは、がっくりと肩をおとした。「契りのかなふ今日」だの「媾ひ見し後」だのと、やたら直接的で、ムードのムの字もないじゃないの』。

    「源氏物語」を読んだ時にもやはり山のような和歌の数々が本文中に登場し、同じように現代語訳が添えられているのを見ましたが、そんな歌をどう取るかは読者の側に委ねられているというのが基本でした。そこにある意味での難しさを感じたのも事実です。一方でこの作品ではそんな和歌の数々が本文と一体化して分かりやすく伝わってきます。これは上手いなあ、ただただ感心しました。

    そして三つ目は、歴史上の人物をお笑いの中に組み込んでしまうところです。多数登場しますが、二つ抜き出してみましょう。

     ・『小野小町とかいうオバサンは、こういう雨を眺めながら、「花の色は移りにけりな いたづらに」とかなんとか、自分がオバサンになってくることを恨みたらしく、和歌に詠んだ』

     ・『紫式部というオバサンが書いた「源氏物語」という小説が、いまも都じゅうのロングセラーになっているような現代の貴族社会では、独身主義なんて異端なのよね』。

    いやー、凄いです、この作品。小野小町や紫式部を『オバサン』と切って捨てる主人公の瑠璃姫。小野小町の和歌も、紫式部の「源氏物語」も瑠璃姫からは同時代を生きるただの『オバサン』が書いたものにすぎないというこの記述の凄さ。私はもうこの記述だけをもってこの作品にひれ伏す他ないと思いました。もう、凄いとしか言いようがありません。

    そんなこの作品は、現代の平安絵巻という言い方で説明するのが、やはりわかりやすいと思います。今から1200年も前の平安の世が実際にどんな時代だったかは、ドラえもんがまだこの世に誕生していない現代には知る由がありません。私たちがそんな世のリアルを想像する起点となるのは、中学、高校の歴史の時間、もしくは古典の時間だと思います。私は、ここにこの時代を理解する上で大きな誤解を生む原因があると感じています。学校の授業で学ぶこと、それは、どこまでいっても真面目なお勉強になってしまいます。残念ながらお勉強におふざけは禁物ですし、どこまでいっても堅苦しさの極みにあるものだと思います。そんな中で学んだ平安の世は高貴な雰囲気感に包まれたどこかよそよそしいものに感じてしまいます。漢文の書物を読んで、和歌を詠まなければいけないという往時の人々の暮らしの中にはとても入り込むことなど出来はしない、そんな風に感じていました。しかし、よくよく考えれば人の世がそんなガチガチの雰囲気感の中で回っていたはずがありません。人はどんな世にあっても享楽を求める生き物なはずです。この作品は、学校の歴史や古典の授業でひん曲げられてしまった私たちの平安の世に対する大きな誤解を鮮やかに補正してくれるそんな魅力を感じさせてくれます。

     『管弦の宴というと、いかにも現代の貴族社会の高雅な趣味って感じだけれど、ようするに必ず酒がまわり、飲むほどに酔うほどに無礼講になる、夜っぴてのドンチャン騒ぎなんだから』。

    もちろん、時代が変われば人の世は大きく変わります。男性が50歳、女性が40歳と言われる当時の平均寿命からすると人生設計が大きく異なるのは当然です。女性の位置付けだって大きく異なります。

     『平安時代、夫は妻のもとに通う通い婚が普通でありました』。

    今の世には想像もできない『通い婚』の考え方が普通だった時代。そこに『現代は…』と始まる言葉で時代背景をサクッと説明する氷室さん。

     ・『現代の女性は邸の奥深い一室に閉じこもって、ひねもす座るか横になるかしてるだけで、運動らしい運動をしていないので、何かというと眩暈がしたり、動悸が激しくなったり、息も絶え絶えになったりするのだ』。

     ・『現代は、姫君といえば屋敷の奥に引っ込んでいる。一生のうち、十回と外出すれば普通なのである』。

    『現代…』から始まる物語の前提条件の中に自然と往時のイメージが浮かび上がる物語。そんな物語の中の中心に描かれるのが、主人公・瑠璃姫の恋模様です。

     『なんたって、現代の女性の結婚適齢期って十五、六歳』

    今の世からは驚愕という他ない事実ですが、平均寿命から考えれば決しておかしくはありません。そんな中に展開していく瑠璃姫のドタバタ劇と、そこに見る瑠璃姫の強さ、そして振り回される男たちの滑稽さ。これが面白くないはずがありません。10冊までシリーズ化されたこの作品の第一巻となるこの作品では、高彬と結ばれそうで結ばられない瑠璃姫のはちゃめちゃな活躍が描かれていきます。そして、そこには40年前に書かれたということを一切感じさせない極めて新鮮な感覚の物語の姿があります。読み終えるのが勿体無いと感じる、面白さの極みを見るこの作品。こんな凄い作品がこの世にあるとは思わなかった!シリーズ読破を楽しみに感じるうちに第一巻を読み終えました。

     『女は待っているだけ、耐えるだけ。冗談じゃないってのよ。やっていられないわ』。

    親が推し進めようとする縁談を巧みに振り切りながら時代を闊歩する主人公・瑠璃姫の活躍を描くこの作品。そこには、平安の世を力強く生きる瑠璃姫の姿が描かれていました。あまりに読みやすい物語展開に、気持ち良い位にぐいぐい読んでいけるこの作品。歴史や古典の授業でモノクロに見えていた平安の世が、カラフルに色付けされて蘇るこの作品。

    “今もとても愛しい私自身の永遠のヒロインです”と瑠璃姫のことを語る作者の氷室冴子さん。そんな氷室さんの活き活きとした筆致にどこまでも魅せられる、これぞ傑作だと思いました。

    • さてさてさん
      Sayuriさん、ありがとうございます。
      はい、こんなにたくさんのみなさんからコメントをいただけてとても嬉しいです。人気があった作品なんで...
      Sayuriさん、ありがとうございます。
      はい、こんなにたくさんのみなさんからコメントをいただけてとても嬉しいです。人気があった作品なんですね。改めて感じ入りました。
      2024/05/08
    • aoi-soraさん
      さてさてさん、レビューをありがとうございます
      とても懐かしく読ませて頂きました!
      中高生の頃にお小遣いで買った私のコバルト文庫…
      どこへいっ...
      さてさてさん、レビューをありがとうございます
      とても懐かしく読ませて頂きました!
      中高生の頃にお小遣いで買った私のコバルト文庫…
      どこへいったんだろう…
      きっと過去の自分が捨てたんだわ。⁠:゚⁠(⁠;⁠´⁠∩⁠`⁠;⁠)゚⁠:⁠。
      2024/05/08
    • さてさてさん
      aoi-soraさん、ありがとうございます。
      中高生の頃…う〜ん、みなさん読まれていらっしゃるのですね。一体私は何をしていたんだろう…。と...
      aoi-soraさん、ありがとうございます。
      中高生の頃…う〜ん、みなさん読まれていらっしゃるのですね。一体私は何をしていたんだろう…。とは言え、私、今頃初読みではありますが、こうなったらシリーズ・コンプリート目指して読んでいきたいと思います!aoi-soraさんももう一度いかがですか?
      2024/05/08
  • 今さらながら大人気作を手に取った。やっぱりおもしろい!
    おてんばな瑠璃姫は幼少時に吉野で育ち、そこで出会った吉野君に恋をした。ところが彼は早世してしまい、瑠璃姫は都に戻ってからもなにかと吉野君のことばかり。
    心配した父が縁談を持ってきてさっさと既成事実を作ろうとしたため抵抗したところ、弟の友で幼なじみの高彬が助けてくれるもその理由が「瑠璃姫とは筒井筒の仲だった」! そして彼は本当に瑠璃姫のことを想い続け、当世一の美女との縁談も断ってくれていて……。
    高彬にほだされた瑠璃姫もその気になるが、事情が切迫しているからと即結婚となろうとしても「調度もなにもそろっていないしお歌ももらってないのに」と泣いたり、歌が下手だからと「納得のいくものを書けるようになるまでは」とNGを出したり。
    ワガママでパワフルで行動家の瑠璃姫を、ハラハラしながら見守るのが楽しい。
    時代物なのにルビに現代語が出てきたりと、現代の感覚で読んで欲しいという絶妙な加減がよい。やはり名作!

  • ままが昔読んでいて勧められて読んだ本。♡
    鷹男がかっこよすぎて、、瑠璃姫鷹男にのりかえてよーー!笑

    しかも、小さいころの吉野君が可哀想で…涙涙
    いつか、出てきて欲しい1人です♡.*

    平安時代ってのほのほーっとしてる時代だな!って思っていたけどそんなことないみたい、、平安時代に産まれるのも良かったかもなー♚!笑

  • 歌を詠んだり文のやりとりしてるのを見ると、平安ものってやっぱりいいなーと思う。
    だから、高彬は頑張れ。
    瑠璃は高彬一筋っぽいけど、少女小説的には鷹男の方が光ってる。
    ていうか、基本的に初夜を迎える為に話が進んでて笑った。
    こんなノリでいいのか。

  • “「いや、ぶっちぎりの仲だと怒鳴るあたり、瑠璃さんらしいと思ってさ」
    あたしはカッと赤くなった。
    「あ、あれは、あんたと口裏を合わせただけよ。ああでも言わなきゃ、どうにもならなかったでしょ」
    「……ふーん」
    高彬はすっと笑うのをやめ、いやにまじめな顔でじっとあたしを眺めた。
    あんまり長いこと黙ってあたしの顔を眺めるので、不覚にもますます顔が赤らんでくる。
    高彬はようやく、口を開いた。
    「なんだ、思い出したわけじゃなかったの」
    「思い出す?何を」
    あたしがぼんやり尋ね返すと、今度は高彬がほんのりと顔を赤らめた。
    「べつに、いいよ。忘れてしまってるんなら、無理に思い出すこともない。昔の約束だし」
    「嫌味な言い方ね。あたしが何を忘れてるっての。昔の約束なんていったって、あんたとは何も……」
    あれ。
    ちょっと待て。さすがに、何かひっかかったぞ。記憶をプレイバックさせてみれば、……かすかに、何やら……。”

    瑠璃姫:主人公。
    高彬:瑠璃の筒井筒。
    融:瑠璃の弟。
    小萩:瑠璃の腹心の女房。
    鷹男:東宮。宗平新王。
    藤宮:東宮の叔母。

    瑠璃の言葉づかいが現代チックで読みやすい。
    これからが、人間関係ごちゃごちゃしそう。

    “「……衛門佐どのが羨ましい。あなたのような姫を妻にされて」
    「まだ、妻ってわけでもないけど……」
    初夜が流れたことを思い出してブツブツ言うと、鷹男の目がかすかに光った(ような気がした)。
    「まだ妻になっていないというと、あの……」
    「ま、その、いろいろとあって、つまり……」
    話が妙な方に行っちゃったな。
    こういうことを呑気に話している状況ではないと思うんだけれど。
    「あなたと衛門佐どのは、まだ……?」
    「……心は妻よ、心は。しっかり」
    「ということは、わたしにも機会があるかもしれないということですよね」
    「!」
    あまりにあからさまな言葉に、あたしは絶句してしまった。
    鷹男って、人妻に強いタイプだわ。絶対にそう。藤宮さまも未亡人だし、マダムキラーなんだ。”

  • 平安時代を舞台としたロマンスとアドベンチャーで、最後まで飽きさせません。

  • 2024年11冊目読了。

    今大河で「光る君へ」を見て読みたくなったシリーズ。子供の頃読んだのは小説じゃなくて、山内さんのマンガだったけれど。
    このお話の主人公瑠璃姫は大納言家のご令嬢。それはそれは身分の高いお姫様なので本来ならお琴でも爪弾きながら日々を過ごすような方なんだろうけど。もうとんでもなくお転婆で頭の回転もよく、恋には夢見がちなところは17歳の乙女らしく、まあ非常に現代的な女の子だ。

    この時代って一夫多妻制だったし、通い婚が常識だったけど、はてどうやって家庭を維持してたんだろう?本妻だと嫁いできたのかな?
    藤原と源姓が多くて誰が誰やらだし、色んなところに政治的に嫁がせたりなんだりで親類縁者だらけっぽいやんごとない身分の方々は、身内は利用するものだし場合によっちゃ亡き者にしたり毒殺呪殺当たり前だし平安とは程遠い日常っぽいよね…。
    この時代、貴族の方々以外のいわゆる一般庶民のくらしってどうだったんだろう。都以外の地方とか。

    マンガだと人妻になるところまでしか読んでなかったから、氷室さんの小説で最後まで読みたいな。

  • 恋多き女の子が終始男性を追っかけまわすような物語よりも、女主人公が馬に乗っかって追っ手から逃げまわったり、事件の黒幕に果敢に立ち向かうような話が好きだ。危機一髪、瑠璃姫はどうなることかと夢中でページを繰った、10代前半の頃の私。尤も、彼女に共感できたのは自分がまだ結婚を考えるような年頃ではなかったからかもしれない。

    真っ直ぐで、思い込みが激しくて信念がブレることのない瑠璃姫。大人からしたら随分危なっかしい性格だなと思うけど(いや、かなり無鉄砲なことやってるなと当時も思っていたが)、10代だった私達には充分魅力的な女の子だった。新装版を通して変わらない瑠璃姫に再会できて、私もほんとうに嬉しい。

  • おもしろい!瑠璃姫みたいな気の強い女性は素敵だ

  • そういえばかくも有名な氷室冴子の表題作、読んだ事なかったな~と思って借りてみたんですが。ちょっともう自分には年齢的に受け付けなかった…

    それにしても通い婚の時代で母が亡くなった後、家に帰ったら新しい母が居たってのにちょっとん?という感じ。光源氏なんかは子供は母方の家で育てさせてたよなぁ~。主人公の父親が家を建てて、妻を迎え入れたのかもしれないけどその辺りってどうなってるんだろ。光源氏はそう言えば家建てて縁の女を住まわせてたけど。

    まだ結婚してないオトコでも私のよ~と乗り込んでいく姫のパワーに女って…と思わなくもないけれども… これが10代のパワーなのかな、なんて思いました…

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著者プロフィール

氷室冴子(ひむろ・さえこ)
1957年、北海道岩見沢市生まれ。 1977年、「さようならアルルカン」で第10回小説ジュニア青春小説新人賞佳作を受賞し、デビュー。集英社コバルト文庫で人気を博した『クララ白書』『ざ・ちぇんじ!』『なんて素敵にジャパネスク』『銀の海 金の大地』シリーズや、『レディ・アンをさがして』『いもうと物語』、1993年にスタジオジブリによってアニメ化された『海がきこえる』など多数の小説作品がある。ほか、エッセイに『冴子の東京物語』『冴子の母娘草』『ホンの幸せ』など。 2008年、逝去。

「2021年 『新版 いっぱしの女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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