美術館をめぐる対話 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087205640

作品紹介・あらすじ

近年の美術館は従来の箱もの行政の産物から、新たな「開かれた」存在へと変化を遂げつつある。その一例として記憶に新しい金沢21世紀美術館は、建築家ユニットSANAAの設計。妹島和世と著者による同ユニットは国外でもルーヴル美術館ランス別館などを手掛け、二〇一〇年度プリツカー賞を受賞した。本書では第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展の日本館出展作家を務めた著者が青木淳、平野啓一郎、南條史生、オラファー・エリアソン、妹島和世と対談。美術館設計で建築家に求められるもの、都市の歴史から見た美術館、アートと建築の相互関係などを考える。

感想・レビュー・書評

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  • 建築家西沢立衛と5人の対話。金沢に行ったら、どうしても行きたくなるのが、金沢21世紀現代美術館。実にたくさんの人が切符売り場で行列を作っている。4つの入り口があり、入りやすい。
    それを作ったのが、妹島和世と西沢立衛。なぜそんな美術館を作ったのか?というのが、5人の対話を通じて明らかになってくる。
    90年前に、マルセルデュシャンが便器に自分の名前をサインしてから、現代アートが始まったと言われる。アートが変容し、光、音、匂い、パフォーマンスもアートとなり、そのアートを展示する美術館もアートとなっていく。

    金沢21世紀美術館のコンペの時、山出保市長が「敷居の低い美術館」「普段着で来られる美術館」を提示して、「町の公園のような感じの美術館」をコンセプトに作られたという。美術館は、なぜか権威の象徴みたいなかた苦しいものがあり、入り口もドーンとしている。入りにくい感じを取っ払うことに成功している。レストランものびのびしていて、ガラス張りだ。人たちが、何となくくつろいで、そこから、くつろぎと創造性がインスピレーションする美術館は、金沢城、兼六公園、しいのき迎賓館の中心にあるユニーク性がある。金沢の街、工芸を中心とした創造都市を目指すに文脈にふさわしいコンテクスチュアリズム。「どうして」ということに言語化し、さらに「なぜ」を言語化していく。

    建築の軽やかな調子。透明で、カランとした、あっけらかんとした開放感。空間的な透明感。風が家を抜けていく様。明け放れた縁側のような空間を持つ美術館は、日本の建築にも必要なものだと思う。美術館も生活の一部なのだ。西沢立衛のデザインした十和田市美術館、ルーブル美術館ランス別館などに行ってみたい。

  • 金沢21世紀美術館や十和田市現代美術館を手掛けた西沢氏が同じく建築家や作家、美術館館長等と対談しながら、美術館の概念とは何かを突き詰めていく。私は美術館が好きなのでとても興味深くよんだ。

  • 豪華な対談。
    オラファーが登場してびっくり。
    平野さん博識だな。。。

  • 読んでいる最中に、埼玉県立近代美術館の開館40周年記念展に行った。建築は黒川紀章、堂々たる大きな建物、コレクション展の目玉とするのが1点のモネ。典型的なこれまでの公立美術館だなと思った。地方の美術館にモネ、ルノワール、ゴッホなどいわゆる「日本人にとっての人気画家」1-2点がある風景。都美は別格としても、埼玉県という相当な大規模自治体でも、少子高齢化の日本でその手の有名作品を買い続けることはできず、美術館はガラガラ。(埼玉近美には、コロナ前までは有名デザインの椅子に座れるなど別の魅力があったがそれはさておき)
    西沢さんが手掛けた金沢21美、十和田現代美は、新しい戦略で建てられ、どちらも集客に成功しているのがすごい。金沢など、現代美術ファンというわけではない観光客や若者がこぞって来ている街の名所。本書のインタビューを読んでいると、自治体、建築家、キュレーターその他関係者の、美術館、芸術というものに対する考え方が運営を左右するんだなと思った。

  • 読了

  • 建築家の言葉は難しいことが多いが、本書はすらすらと読むことができた。西沢立衛さんらが美術館に対して抱いている思いの一端を知ることができ大変勉強になった。

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    2019/12/11読了
    21世紀美術館、十和田市現代美術館、青森県立美術館など行ったことのある美術館について語られていたので読んでいて楽しかった。そういう意図で造られた建物なんだなと。
    現代美術館はカジュアルに出かけていい場所なんだな。確かにどの美術館も居てとても心地が良かったし、美術館だけでなく周辺を歩くのもたのしかった。十和田市現代美術館は、そこを拠点に紹介されてた他のアートスポット巡りしたし…。美術館の建築意図通りのことしてる…。
    「公共」という意味の捉え方を間違っていたなあというか、日本人的な捉え方しかしていなかったことに気づいた。みんなのものであることは確かだけど、上から与えられるものではなく個人に帰属するものである。もっと自分のこととして捉えていいのだなと気付いた。
    あと、「開く」機能のこと。もともと現代美術館は開いているイメージがあったけど、それは閉じて未来に受け渡すためでもあるのか…。ガラス窓とかの物理的な「開く」だけでなく、作品を収める21世期初頭の建築物としての開く、閉じるがあるのかあ。わけわからなくなってきた。
    作品だけでなく、建築も含めてたくさんの美術館に行きたくなってきた。

  • 美術館という建物はただ美術品を陳列するだけの箱ではない。設計次第でその町の一部、公共スペースとしても機能しうるものなのである。

  • 伝えたいことの意思をもたず、「とりあえず色々なひとと話してくれというので話した」という感じが否めない。
    対談相手次第で、話の構図も変わるし。それでも、さらっと読める良さはあるが。

    そんな中でも、美術館というものの「公共性」(まちへの影響、収益で語れぬ交易みたいなこと、まちに開く・繋がるべきこと)は印象に残った。
    また、美術館建築はむしろ設計するより倉庫とかをそのまま使ったほうがよいのでは、という建築家の苦悩とかも。

    あと、西沢がかつて青木淳に美術館とは、と相談したというのは面白かった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。1990年横浜国立大学大学院修了。妹島和世建築設計事務所を経て1995年妹島和世とSANAA設立。1997年西沢立衛建築設計事務所設立。現在、横浜国立大学大学院 Y-GSA教授。

「2020年 『丗|SEI/徳田邸 ― 京都 生きる喜び』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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