沈みゆく大国 アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207859

作品紹介・あらすじ

アメリカ経済を喰い尽した1%の超・富裕層(スーパー・リッチ)が、日本の医療・介護市場を狙っている。綿密な取材と膨大な資料を通じ、すべてのカラクリを解き明かした衝撃の書き下ろし。沈みゆく大国シリーズ、第2弾!

感想・レビュー・書評

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  • 2017.2.14 2/28まで 3/1返却

  • 少し古いけど、話は、今でもよくある。アメリカと侵略をよく見極めねば。政治家、政治を庶民は、注視していかねば!

  • 貧困大国アメリカから、ずっとブレずに取材し書き続ける作者の姿勢に頭が下がる。
    権力者をこき下ろす語り口も顕在である。
    しかし、変わらないのがそろそろ物足りない気がする。別の切り口も欲しいな、という印象。

  • 協同の力で医療を再生する。殺伐とした閉塞感の中に一筋の光があるようで、少し希望が持てた。この現実が知らされていないことが恐ろしい。

  • 医療に市場原理を持ち込んだ結果米国で起こった問題を提示した上で、医療の本来の姿を取り戻そうと草の根で活動する人達が描かれている。

    強欲資本主義の行き着く先でそれを正常化するのは「何かおかしい」と感じる市民とSNSなのかもしれない

  • アメリカの様々な問題点を指摘していた前作までと比べ、アメリカという入り口から日本の医療について切り込んでいる。アメリカの話を聞いていると何やら問題ばかり、利権・既得権益保持者ば好きなように制度を利用しているといったイメージを持ってしまうが、より身近(といっても自分も詳しいわけではないが)な日本の話になると、少し印象が変わってくる。

    何にせよ、改革をすれば、どの層がかぶるか?という議論は必要だとしても、今までより損してしまう層が出てきてしまうことはやむを得ない事ではないかとも感じるし、無い袖が触れない状態となってしまっていれば改悪もある程度やむを得ない気がしてしまう。もちろん、無駄を出来るだけ省くという努力を公共またはそれに準ずる医療サイドができているのか?というとそこも疑問ではあるが。

    P.63
    「日本の国民皆保険は、社会保障なのです」
    そういうのは、中央大学法学部の宮本太郎教授だ。
    「これは保険という名前がついていても、アメリカのような民間保険とはまったく性質が違う。社会保障のひとつの形態として理解しなければなりません。つまり、全国民が入れる条件を確保することが非常に重要です。労働市場の構成が変わり、国民健康保険についている加入者が自営業者から無職と低所得層中心になってしまった今、揺らいでしまったこの根幹を、どう守ってゆくかが問われているのです」

    P.81
    「ニューイングランド医学ジャーナル」元編集長で、ハーバード医学校社会医学科上級講師のマーシャ・エンジェル博士は、著書『ビッグ・ファーマ』の中で、大手製薬企業の提供する新薬の大半が既存薬の改良版であることや、製薬企業が自社製品関連の臨床に関与しすぎていること、大手製薬会社が新薬研究開発費よりもはるかに多くの費用を<マーケティング・運営管理費>にかけているなどの実態を、詳細なデータと公文書、綿密な取材によって暴いている。「多くの一般国民が信じている<開発費の回収のために薬に高値がつくのは仕方ない>という説は事実ではありません」
    エンジェル博士によると、このマーケティング費用には製薬会社による医師や焼死者への教育、学会や医師への謝礼、各種販促活動などが含まれる。そして開発費の中には、マーケティング目的の市販後臨床試験も高い割合でいれられているという。

    P.99
    結局国民の無知と無関心が、政治の裏側にいる強欲資本主義の面々に、やりたい放題させるのだ。
    どこかで聞いたことがないだろうか。
    <法案の都合の悪い部分は国民に伏せる>
    <法律を成立させるには、有権者の愚かさが不可欠>
    そして、一番肝心な部分を取り除いた形で、法案の素晴らしい部分ばかりを繰り返し宣伝する、政治と利害関係のある御用学者と大手マスコミ。

  • メインはオバマケアです。
    崩壊するアメリカの医療現場がリアルに描かれています。
    本当に読んでいて、恐ろしくなります。
    これが世界一の経済大国アメリカの医療や保険の現実なんです。1%の超富裕層のために、医療と保険が食い物にされている現実を突きつけられました。私は少なくとも、絶対にアメリカには住みたくないと思いました。
    そして、日本も決して他人事ではなく近い将来同じようになるのでは?という危機感を持ちました。

    前も書いたかもしれませんが、アメリカの今を知るには、堤未果氏と町山智浩氏の著書で事足りると思っています。
    それ程秀逸な著書の数々です。

    おすすめ
    堤未果氏
    「ルポ 貧困大国アメリカ」
    「ルポ 貧困大国アメリカⅡ」
    「(株)貧困大国アメリカ」

    町山智浩氏
    「教科書に載っていないUSA語録」
    「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」
    「底抜け合衆国新版」
    「アメリカは今日もステロイドを打つ」
    「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」

  • 堤未果氏の最近の本。医療にテーマを絞っている。格差は予想以上。日本はアメリカの後追わないでほしいところだ。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  •  どこがどうとは言いにくいのだけど、何となくしっくり来ない本だった。
     糾弾する相手と内容は、必ずしも間違ってはいないと思うのだけど。

     情報を得たいと思って街角で買った見知らぬ新聞が、実は政党機関紙でアジテーションしか載ってなかった、みたいな感じ。

  • ここでもあり得ん事実が浮き彫りに。それにしても、訴訟の保険で収入の大半が持っていかれるって、そんな環境でまともな仕事が続けられる訳ない。かの大国の医療評判が落ちている大きな理由は、その社会制度にあるんだと思わされる。オバマさん、かなり優れたリーダーという認識だったけど、細かいところで大きなポカもやっとる訳だな。ここで書かれている民主党主導の医療制度改革がイケてないとすると、逆説的に、今のトランプ共和党では制度が改善されてたりする?となると、彼の政治も悪いところばかりでもない?気になります。

  • この連作は、後編である本作を読ませたいがためのものだったんですね堤さん、という感想。前編を読んだときは、あまりの文章の駆け足っぷり、はっきりいってしまえば説明の雑さ、に軽い幻滅すら覚えてしまったものだけど。後編を読んで、一応それは氷解しました。

    相変わらず「貧困大国アメリカ」に比べると説明は粗いけど、前編よりはずっと丁寧でわかりやすかった。内容もほかならぬ我らが日本のことだし。前編で粗っぼく学んだオバマケア下のアメリカ事情に照らして、省みた日本の国内事情はどうなんだ、というのがこの後編のテーマ。

    鮮明にアメリカ〜国際社会をターゲットに取っていた「貧困大国アメリカ」三部作と違って、この「沈みゆく大国アメリカ」二部作は、表題に「アメリカ」と謳いつつも、主に日本の話なんですよね。憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」規定に従って、あくまでも社会保障として整備されてきた日本の皆保険制度。それが時々刻々と危機に瀕している、というかむしろすでに大幅に侵食されつつある、という警告の書。

    その侵食の実情について、そして一見するとお先真っ暗にすら見える未来を免れて共存共生の社会を築いていくための対抗策と現在地について、実に多彩な提言がなされていて参考になった。特に医療現場で現に働いてる人なんか、この本を読んだら日常経験してることと突き合わせて深く納得するところがあるんじゃなかろうか。
    そんなことを思いました。

    もちろん、最後は政治家でも官僚でも医療従事者でもなく、利害当事者である僕たち市民が目覚めなきゃどうにもならない問題、ではあるわけなんだけれども。
    固定観念をまた1つ、打ち破ることができた。読んでみてよかった、と思います。

  • ・国民皆保険制度の素晴らしさと、今それが解体されるかもしれない危険があることを啓発する本。
    ・無知は良くないと改めて感じた。制度についてよく知り、感謝するべきですね。
    ・政府に騙されないよう気を付けなくては!

  • 老人医療と介護産業は儲かる。納税者の金を吸い上げモンスターのように急成長。政治と業界の癒着が始まるであろう。

    憲法25条の生存権
    国民皆保険→社会保障である。

    経済財政詰問会議→これほど民主主義の政治理念に反し、リベラリズムの思想に反する制度はない。(宇沢弘文)

    2013年 竹中平蔵 「国家戦略特区」外資系企業に大きなビジネスチャンス

    日本 人口は世界の1.6%なのに世界の薬の4割を消費している。
    予防医療は医療費を大幅に削減する。特殊な高度医療費はいらない。
    年金制度、健康保険制度、国民皆保険制度については、国民にきちんとした知識が必要。小さい頃からの教育が必要である。

  • 沈みゆく大国の第2弾
    国民皆保険を謳っているが、中身は投資家や保険会社、企業の利益が中心となり、医師や患者が置き去りにされているアメリカの新たな保険制度オバマケア。
    医療は商品ではない、心が入って成り立つものである。
    対岸の火事ではなく、日本にもその触手が伸びている。
    「日本の国民皆保険は共同体の精神から生まれた制度」
    助け合いの精神を忘れず、お互いを思いやる気持ちがないと国民皆保険は継続できない。
    反面教師であるオバマケアと比較しつつ、制度について理解しなくてはならない。

  • 世界がうらやむ国民皆保険制度。その良さを日本国民全体が自覚し、守る意識を持たなければならない。無知は弱さ。

    「国家戦略特区が全国に広がり、日本全体で外資系企業がしっかり稼げるよう十分に規制が取り払われたところで、TPPを締結させる。そうすれば、一度広げた規制は元に戻せないとい<ラチェット条項>が、総仕上げとして規制緩和を永久に固定化してくれるという寸法だ。」堤さんの本を読んでからTPPには反対だったけど、国家戦略特区を絡めたこのシナリオは一段と恐ろしい。

    「諸外国で財政赤字を算出する時は、国の資産から借金文をマイナスする。だが、日本の財務省は資産の部分を無視して借金の数字だけ国民にみせて<財政赤字1000兆円>と騒いでいる。これを諸外国と同じ方法で計算すると、借金は256兆円になる。」というのは驚いた。借金が少ない方がいいのは間違いないけど、こんなこともあるんだ。

    いつも思うことだけど、資本主義一辺倒は嫌だ。

  • 日本は、医療費が実は諸外国と比べてもかなり低く、さらに患者の自己負担率はとても高い国らしい。いろいろと考えさせられる。

  • レビュー省略

  • 株式会社化したアメリカの医療がいかに企業、保険会社によって食い物にされているのかを具体的かつわかりやすく 説明してくれている。
    国民皆保険にちかい制度として導入されたオバマケアも実は保険会社や製薬企業の利益を優先させる仕組みで、実際は庶民の保険料は上がってしまったというのだから恐ろしい。
    著者はそんなアメリカ企業による医療のマネーゲーム化が日本にも押し寄せてきていると警告している。
    国民皆保険で守られていた日本は規制をなくせば、企業がこれから利益を上げる余地がいくらでもあるのだ。
    そんな先行きくらい社会に対して著者は処方せんも示してくれている。
    まず、国民が無知でいないこと。いくら優れた制度を持っていてもそれを自覚していなければすぐに掠め取られてしまうだろう。
    医療の原点に立ち返り、共生、協同の精神で地域社会を自らが支えていくことが、医療を守っていくことになるのだ。
    内容も優れているし、文章もリズム感がありとても読みやすい本書であった。

  • 3

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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