ばけもの厭ふ中将 戦慄の紫式部 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087445534

作品紹介・あらすじ

“今源氏”と噂される色好みの貴公子・雅平の身に、望まぬ怪異が次々と降りかかり!? 平安冒険譚「ばけもの好む中将」シリーズ番外編。

感想・レビュー・書評

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  • 〈ばけもの好む中将〉シリーズのスピンオフ。
    『今源氏』と噂される中将カルテットの中で一番のプレイボーイ・雅平が出遭う、「源氏物語」を髣髴とさせる怪異4話。

    本編の方がシリアス展開になってきているので、こちらはちょっと息抜きの感じで楽しかった。
    雅平にすれば次々怖いことが起こって堪ったものではないだろうが。
    それにかれが単なるプレイボーイではなくて女性に対してきちんと優しい気遣いもしているということが分かって評価格上げとなった。

    「雨夜の怪異がたり、もしくは末摘花」
    奥手の上総宮の姫君に通うと、何故か鼻の長い男性の霊が出てきて邪魔をして…。

    「廃屋での逢瀬、とくれば夕顔」
    陰陽師の占いにより、隣の廃屋で一晩過ごすことになった雅平と恋人(の一人)。だが突然巨大な足が何本も現れて…。

    「怪異なんてないさ、もしくは朧月夜」
    宴の後、酔いに任せて弘徽殿に忍び込んだ雅平。そこで出会った艶やかな女性との恋にときめいていると、彼女の口に牙が見えて…。

    「光源氏降臨、そして幻へ」
    ドッペルゲンガー現象まで現れ、紫式部から祟られたと噂された雅平は、宣能に紹介された陰陽師の歳明の薦めにより、源氏物語を絵巻にしてお寺に奉納することに。源氏物語大ファンの雅平母が描き溜めた絵を絵巻に仕立てていると、突然絵が動き出して…。

    本編をずっと読んでいた私からすると、今回も偽怪異現象なのか…と期待せずに読んでいたが、これは本物では?と思えるものがチラホラ。
    しかしばけもの好む中将・宣能の反応はイマイチ。酔ったせいや怖くて幻を見たと思われている。
    中には右兵衛佐(雅平から見ると純朴少年、というより同性のことはどうでも良いらしい)を連れて検証した現象もあるようだが、結果的には真怪(本物の怪異)とは認定してもらえなかったようだ。
    だが実際に今回もあの人の陰謀もあったりするので、どこまでが本物でどこからが偽物かは読まれてのお楽しみに。

    本編では全く頼りない陰陽師の歳明だが、いや、このスピンオフでも頼りないのだが、雅平とのコンビはなかなか良い感じで今後も見てみたい。
    また雅平母も良い味を出している。源氏物語の人気ぶりもすごい。
    各話に挟まる源氏物語コラムも瀬川さん独自の視点で面白い。
    カバーイラストが三木謙次さんに変わったので驚いたが、あとがきによると、このスピンオフのためだったようだ。
    他の繁成、有光版も読んでみたい。

  • 今回はあくまで『ばけもの厭う中将』で番外編。

    そして、今源氏と呼ばれる雅平が主人公なんだけど、けっこうひどい目にあってますなぁ。

    そして宜能は相変わらず真怪とは出合えず(笑)

    源氏物語の流れも分かりやすいし、解説付きなので、来年の大河ドラマは気になるけど『源氏物語』を読むのは~、という人はこういう作品を手に取るのもいいかもしれませんね。

    相変わらずのコメディホラーは楽しかったです♪

  • 「ばけもの好む中将」のスピンオフ。本家のほうが少し行き詰まってるように感じるので、息抜きになって良き。
    そもそも"好む"の方もこんな気軽な話だと思ってたので…今源氏さんにはこれからもがんばって欲しい

  • 「ばけもの好む中将」シリーズのスピンオフ作品。

    宰相の中将・雅平をメインとした連作四編&幕間に著者のコラムが収録されております。

    “今源氏”と名を馳せる宰相の中将・雅平は、数々の女性と浮名を流しているプレイボーイ。
    そんなイタリア人男性もとい光源氏ばりに恋を追いかける雅平ですが、“源氏物語”を彷彿とさせる怪事に次々と見舞われてしまい・・・。

    本編の方がシリアス展開になってなってきているので、番外編の本書では、初期の頃のようなドタバタ感が楽しめて、良い羽休めになった感じで良かったです。

    今回雅平のお相手(?)として登場する女性陣も、上総宮の姫君(末摘花)、昼顔の君(夕顔)、月夜野の君(朧月夜)、藤典侍(源典侍)・・と、源氏物語に因んだラインナップで、それに関連した著者の方のコラムも面白く読ませていただきました。
    それにしても、他の方のレビューにもありますが、あやかしを追いかけている“ばけもの好む”宜能は、真怪に出会えてないのに、あやかしに会いたくない“ばけもの厭う”雅平の方は、怪異に遭遇してしまうというのが皮肉なものですね。
    宜能も雅平の怪異を認めたくないようで、実際上総宮の幽霊に悩まされている雅平から、「・・・上総宮の霊は本当にいたのだよ」と訴えられても、「はいはい」と流す始末。
    (あやかし好きなはずなのに、食いついてくれない哀しさよ・・笑)
    そして、“残念な陰陽師”歳明も登場(彼を雅平に紹介するあたり、宜能もまたww)。
    相変わらずの“微妙っぷり”でしたが、人の好い雅平とは意外と相性が良かったようで、結果いいコンビになっていました。
    今回受難の雅平でしたが、ちょっとお間抜けな部分はあるものの、結構いいヤツなんですよね。
    いつか上総宮の霊にも姫との進展を認められるとよいですな。
    因みに、本編の方で受難している右兵衛佐・宗孝は、ラスト部分でちょっっとだけ登場しています。

    と、いうことで楽しい番外編でした。本編の続きも楽しみに待っております~。

  • 「ばけもの好む中将」シリーズのスピンオフ。
    今源氏とも言われる近衛中将・雅平が、女性の元へと通う度に怪異に遭遇する。源氏物語を思い起こさせるようなシチュエーションや怪異の数々に、紫式部の祟りだなんて噂も立つほどだ。

    雅平のブレない色男ぶりがいい。
    ポジティブで女性の幸せを最優先に考えるところは好感度大だし、それは敵対する相手であっても変わらない。そりゃあモテるだろうなと思う。
    怪異を真っ当に怖れていて、陰陽師の歳明と波長が合っているのも面白い。

    作中では、源氏物語についてくだけた表現で初心者にもわかりやすく触れていて、いつかきちんと読んでみよう。
    私はスピン元よりもこちらの方が好きかも。

  • いつものシリーズのスピンオフ作品。
    あやかし大好きの方には全然出てくる気配がなく、嫌ってる方に出てくるというのは世の常な気がします。それにしてもこの作品に出てくる女性群はたくましくて素晴らしい。
    娘を心配して出てくる幽霊とか、通っている男にしたら確かにたまったものではないわな…(笑)

    中将の男性の顔は覚えないとか、少しぬけてるけど情はあるとか、良い人だなぁと思いました。これもシリーズになるのかな?紫式部は成仏しちゃったみたいだけど。続くのであれば、楽しみです。

  • 「ばけもの好む中将」宣能の友人、普通の色好み、すなわち「ばけもの厭ふ中将」雅平が、何故か怪異と出くわし、宣能はやっぱり出くわさないというお話です。しかも、「源氏物語」にちなんだ事件が続発!
    怪異と出くわすことで、雅平の女性たちとの交際は丁寧になっていくのを感じました。まぁ、複数の相手とですけれど…。いつか彼にも、「この女性を正妻に!」という出会いがありますように。

  • 怪異なぞ興味もないのに何故か怪異に寄ってこられた中将のお話。
    いやいや、本編であんだけでないのに。でも気楽に読めてよい。源氏物語詳しくないのでちょいと知識が増えるのも楽しい。読んでみたくなるね。
    中将たちが和気あいあいしてるのも何か面白くてよかった。なんだかんだで雅平はかわいいやつだね。

  • 本編と同様なかなか面白かった。ばけもの好むのスピンオフというので、主人公は本編にもよく登場する今源氏と揶揄される色好みの中将。源氏物語の内容にそって、怪異譚が描かれる。こちらの方は好まないのに本物の?怪異に遭遇したりする連続に流石に気の毒に思うが、自業自得というのありますね。結局人物像が単純で根は優しく憎めないところが良いところ。源氏物語が現実とシンクロしたり、最後なんかは最近読んだ「十二単衣を着た悪魔」を彷彿とさせるところがあった。上総宮の姫君のところは少し消化不良なので次も期待したい。

  • この本は化け物好む中将のスピンオフのような話となっていたが、どうして、どうして、そちらより好きなくらいの秀作。主人公の中将雅平は女好きの遊び人風に最初は描かれ、何だこの軽いやつと思うのだが、進んでいくうちに光源氏にあこがれていた思い出やら、姫君たちへの勤勉さにかわいいやつにかわっていく。
    岡野玲子氏の陰陽師に出てくる相方の源博雅にも通じるキャラで、マア平安ものに有りがちな展開なのかもしれない。でも読み進むうちにキャラが育って、ちゃんとした貴公子になるとは思いもよらず、なかなかな本であるとかんしんした。
    一軒ラノベだけどもちょっと、平安ジャニーズ系ストーリーでジャニーズは嫌いだけど瀬川貴次の本はほかもよみたくなった。

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著者プロフィール

1964年生まれ。91年『闇に歌えば』でデビュー。
「ばけもの好む中将」、「暗夜鬼譚」シリーズ(ともに集英社文庫)、『怪奇編集部「トワイライト」』(集英社オレンジ文庫)など著作多数。

「2019年 『百鬼一歌 菊と怨霊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

瀬川貴次の作品

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