- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087453287
作品紹介・あらすじ
大正生まれの小川万亀は、山梨の裕福なお菓子屋の末娘。優秀な彼女は東京の女学校に進む。現実の壁に幾度もくじけながら、常に前向きに夢を持ちつづけた女性の激動の半生の物語。(解説/中島京子)
感想・レビュー・書評
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元号が大正から昭和に変わる頃、駅前で菓子商を営む「小川屋」の末っ娘万亀は、伯父にもらったのをきっかけに、「赤い鳥」という子供向けの文芸誌を定期購読している。
お正月にもらったお年玉で本を買おうと思ったり、「猿まわし」を見て大そう感動したことを作文に書こうと思ったり、万亀は本好きでとても感受性豊かな子どもだった。
この小説は、林真理子さんのお母さまをモデルに書かれたものだそうです。
激動の時代を生き抜いたひとりの女性の波乱に満ちた人生に、どんどん引き込まれていきました。
おとなしく真面目で、文句なしの優等生だった女学校時代。
東京の女専での華やかな生活を満喫し、結婚を選ばず相馬で教師となる。
次々と住む土地を変え、一軒屋での自炊生活や、家族の病、戦争、さまざまな理不尽な出来事など、万亀は現実の波を乗り越えていきます。
「結婚せず、一生本を読んで暮らしていけたら」
「夜ひとりで本を読む幸福のために、人は昼間の嫌なことにも耐えられるのだ」
本と共に生きる万亀の心の内に秘めた思い、芯の強さに勇気をもらえます。
林真理子さんの、お母さまに対する素晴らしい憧れと尊敬を感じられます。
そして、最終章で鳥肌が立つような感動が待っていました。
読み終えて、あぁ読んで良かった、と思える一冊になりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お母さんがモデルの小説らしい。NHKの朝ドラにでもなったら(おしん)の様な高視聴率を上げそう等と思いながら読み終えた。ただそれらのヒロインにある、ずば抜けた力強さ、積極性、ヒロインたる華やかさはあまり感じられない。なのにどんどん惹きつけられてしまったのは何故だろう。頭が良くて頑張り屋だけれど信念を持ってどんどん突き進むのではなく、周りも思いやり同調しながら生きる優しさを感じるからだろうか?山梨、東京、福島、そして中国大陸での経験。第二次世界大戦で様変わりする世の中。そんな中、幼子を亡くした場面ではもらい泣きしてしまった。認めたくない心の奥にある言葉が所々さり気なく出るあたり林真理子さんの小説は面白い。
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大正から昭和にかけての激動の時代に
常に前向きに生き、夢を持ち続けたひとりの女性──
山梨の裕福な菓子商の末娘・万亀(まき)は
児童文芸誌「赤い鳥」を愛読する少女だった..。
自分の思ったようには生きられず、親が良かれと思って敷いた
レールの上を歩まねばならないのはこの時代なればこそ。
どこかで反発してはいがらも、それにもめげずに、与えられた道の先にも
きっと何かよいものはあるはずと、節目節目で何度も訪れる悪転機に対して
前向きに生き続けようとする万亀さんに感動しました。ほんと素晴らしいです。
"本"が大好きで、どんなに辛い時でも傍らには"本"があり
"本"を心の支えにしていたという主人公・万亀(まき)は、著者
林真理子さんのお母さまをモデルにされているとか....。
お母さまの辿った半生の道のりは、それは波乱万丈なものでしたけれど
私にはとても輝いてみえました。こんなにも素敵なお話を伺う事ができて
とても嬉しいです。読めてよかった。ありがとうございました。
心地よく刻まれていく文体が、大正から昭和初期という
大好きな時代背景の中にさらさらと流れて
物語の世界に吸い込まれていくように酔いしれながら読みました。
並行して、北村薫さんのベッキーさんシリーズを読んでいますが
同じ時代背景のなか、"女学校"や"服部時計店"という名が登場すると
二つのお話に登場する人たちは、どこかですれ違ったり
もしかしたら知り合いだったりするのかしら...なんて想像してみたり。^^ -
正確に書くと星3.8。
大正、昭和の時代のある女性が主人公の話。
大正や昭和の雰囲気や、人々の価値観がよく描かれていて面白いし、主人公が進学や就職でやりたいことを決めても結局親に流されたりするのがリアルだと思った。
ちなみに主人公は本が好きなので、それだけで少し親近感がある。
この話のモデルは作者の母らしい。どうりでリアルだと思った。 -
「本が好き」を体現した、ある女性の半生を描いた作品。
裕福で華やかな時期も、戦争・敗戦を経験し、苦渋の中で暮らした時期も、一貫して書物への愛を貫き通した。著書のご母堂をモデルとしている。
主人公の内省的な気質ゆえ、感情移入するほどに苦しくなる局面もある。世の中は決して平静ではなく、激動とともに過ぎてゆくし、彼女もその喧噪に例外なく巻き込まれてゆく。それでも頑ななまでに本とともに生きる道を選び、本とともにある自身の人生の存在意義を見出していく様は、読み進める側に感動を与え、自我を貫く大切さを教えてくれる。 -
文学少女の半生。人生の節目に尽く自分の選択を尊重しないで流れ着いていく様は時代背景が大正~だからなのかもだけど母の印象が途中から大分悪くなっているのが気になった「夜、ひとりで本を読む幸福のために、人は昼間働くのだ」母がモデルってことは現実味なんだろうな
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戦争ものは、とっつきにくいと思ったけど、読んでみたらサクサク。もろこし団子など知らない単語がたくさん出てきた。
舞台は山梨県。主人公の万亀。この万亀は著者の母親がモデルになっているそうだ。さまざまな登場人物が亡くなってしまう。戦争の悲惨さが伝わってくる作品だった。そんな時代で生きていく万亀がとても頼もしかった。 -
大正〜昭和という激動の時代を生き抜いた文学少女のお話。
当時の世間体を気にする様や戦争は、生きるにはすごく窮屈で、抗うことができない辛さがひしひしと伝わってきます。
それでも主人公の万亀が時代に翻弄されながらも、大好きな本とともに懸命に生きる姿がかっこいい。 -
小難しい小説かな、と思ったが、すぐに物語の世界に引き込まれた。段々と陰惨な背景になっていくが、昭和初期の波乱を強く生きる1人の女性の物語。
本好きとして、ほっこり同意するところがあった。