第三の時効 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087460193

感想・レビュー・書評

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  • 初めての横山秀夫さん作品。
    フォローしている方々の本棚で多く拝見したので、気になって手に取りました。

    小説の種類としては、複数の事件が同時に進行する『モジュラー型警察小説』というらしい。1つまた勉強になった。

    舞台はF県警捜査第一課強行犯捜査係。
    発生した事件が中心というよりも、捜査第一課強行犯係に所属する刑事さんたちの人間関係含めた心理描写に重きが置かれているような印象だった。
    6話それぞれ異なる人物の目線で事件や人間関係を見れたのは面白かった。

    近年は婦警さんを見ることも増えたし外部からは見えない変化が少しずつでもあるのかもしれないが、出世のために他班や同僚、上司にまでライバル意識を持ったり敵意を見せつけたりの激しいやり取りがすごい。
    弱肉強食の世界なんだな。

    捜査第一課強行犯係の一班・二班・三班それぞれ全く異なる特徴を持つ班長が率いているのがまた魅力的。
    実力もプライドもあって扱いずらく互いに威嚇合戦もあるが、ここぞという場面で課としてまとまるのはさすがだった。

    個人的には3話の「囚人のジレンマ」が好き。
    6話すべて読むと捜査第一課強行犯係の刑事さん一人ひとりの人柄が見えてくるのがまた良い。

  • 強烈な個性を持つ捜査1課の班長たち。イライラするほど激しい覇権争い。
    重厚で読み応えのある、これぞ警察小説!
    (でも、警察小説は苦手で感想もうまく書けなくて申し訳ないです)

    どの話もタイトルがうまい。

    「沈黙のアリバイ」
    沈黙…怖い。
    「第三の時効」
    第一の時効、第二の時効、第三の時効とは…。
    「囚人のジレンマ」
    囚人のジレンマに陥ったのは?
    「密室の抜け穴」
    密室の抜け穴はどこに?
    「ペルソナの微笑」
    微笑みの仮面を被っているのは。
    「モノクロームの反転」
    黒と白。ちぐはぐなパズル。

    1番面白かったのは「囚人のジレンマ」、『64』を思い出す。
    新聞記者たちとの熱い戦い。腹の探り合い。攻防。
    まだ発表していない事を聞いてきた新聞記者に対して、捜査一課長は瞬時に答えを出すさなければならない。
    誰が新聞記者に情報を流したのか捜査一課長は考える。
    捜査一課長は「囚人のジレンマ」に陥いってしまうのか?

  • 表題作含む6作からなる短編集。

    理詰め型の青鬼と称される一班班長、朽木。決して笑わず、心の中が読めない。もっと朽木の過去が描かれても良いのになと思ったが、シリーズものなので今後に期待します。犯人を追い詰めるスピード感がかっこいい。全て理屈で突き通すので、隙がなく、ザ・完璧。
    謀略型で冷血、公安上がりの二班班長、楠見は表題にもある第三の時効の事件を担当している。
    班長にも関わらず、部下に指示を出すだけで自分は単独行動をするなど、かなりタチの悪い身勝手な性格をしている...が、誰にも口を挟ませない冷たさと一歩引いた視線が事件を解決させる。犯人を検挙するためには手段を選ばないのは、本当は誰よりも熱い部分があるのではないだろうか。
    閃き型で天才肌の三班班長、村瀬。私は3人の班長の中で村瀬が1番好き。人間らしいというか、普通の感性でいてくれているというか。現場での班長の第一声。誰もが聞き逃すまいと必死になる一言を発する凄さ。これまでの実績がそうさせてるのだと思うと、本当に凄い。そうなるまでの過去が知りたい。刑事になるべくしてなったような人物。班員たちの使い方が1番面白い、上手い。
    個人的には「密室の抜け穴」が好き。

    事件そのものだけではなく、捜査一課長からの目線であったり刑事部長の立場であったりも楽しめた。

  • 日ごろユルイ感じの本ばかり読んでいるから、たまにこういう本を読むと気持ちが引き締まる。
    駆け引きにドキドキして読んでると、あっという間に6編読み終わってる。
    章ごとにひとつの事件があるから短編みたいな感覚で読めて、読書の時間がなかなか取れない人にも読みやすい。
    中でも面白かったのは「ペルソナの微笑」。
    この章の主人公、矢代の怒りがとても悲しく表現されていて、印象的。

  • 全体的に暗い。話が暗いってより語りが暗い。登場人物の個性もあるようでないまま淡々と進む。謎解き重視なのか、実際の刑事はこんなかんじなのか。あと女に恨みあるのかってくらい女絡みの話が多い。ペルソナのうんぬんっていう短編は面白かった。

  • 実績を競い合う警察署の3つの犯罪課。それぞれに個性的な課長を中心に、犯人有利の状況にあって、土壇場で事件を解決していく系の短編集。ただ、単に警察物の謎解き話というよりは、成果を横取りされないように敵対しながらも、あるときには阿吽の呼吸で老兵に報いたり、身内の争いよりも自らの信念に従う侠気みたいなものが、実は中心にあったりと、色んな形で楽しませて貰える。

  • 短編集だが、登場人物は共通。
    高評価の方が多いが、個人的にはなんだか物足りなさを感じた。

  • F県警を舞台にした連作短編集。
    3つの強行班、それを束ねる3人の班長が主役。
    とても完成度が高い短編集。

  • 警察物の連作短編。F県警の捜査一課にある3班の班長や班員、捜査一課長の目線でそれぞれの事件を解決していく話で、これぞ警察物、って感じ。
    3班の班長はそれぞれ個性が強く、競争意識も強い。
    足を引っ張る感じのドロドロは無いけど、相手に負けたくない、という感じの対抗意識はかなり強い。
    続刊があったら、読みたいなぁ。

  • 今までに読んでいたミステリとは少し違う警察ミステリ。少し違う面白さがあった。刑事の葛藤が鋭く描かれており、緊迫感を味わうことが出来た。クライマックスの大どんでん返しは鳥肌モノ。

著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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