- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087463477
感想・レビュー・書評
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「ローマ人の物語」のダイジェストとして読んでおくと全体像がつかめてよよいと思う。
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「改革」「改革」と十数年前から叫ばれていながら、暮らし向きが良くなったとはちっとも思えない。希望の予兆も感じない。なぜか。
著者はそのカギが、1000年あまりの長きに渡って1時代を築いたローマにあるという。領土拡大にともなう大幅な環境変化に対応し、異なる人種・民族・宗教の“国民”をまとめた力の源泉を分析。改革によって痛みを伴う既得権益層に理解を求めるのは諦めよ。結局は力で突破するしかない。民主主義は最良の統治システムではない ―。ローマの歴史が示す教訓は一見奇抜だが、納得させられる。
民主党政権によって始められた事業仕分けを見ていて思うのは、“全員にとっての無駄なんて無い”ということ。大勢にとっては無駄に見えても既得権益層にとっては絶対に手放せない。断固として首をたてには振らない。
そうだと思う。自分がその立場なら同様の行動を起こすだろう。説明されても、はなから理解するつもりはない。予算の組み替えも同様。机上の論理では新政策の財源確保ができると言っても、削られる勢力との闘いを制さなくてはいけない。難しい。
そこで大切になるのが生かすものと、捨てるものとの取捨選別だという。
「改革とはまず自分たちが持っている資質や特質の、どれを生かし、どれを捨てて組み合わせていくかという再構築の形を取るしかないのです」「カエサルは『ローマの伝統』と思われていた共和政体制は、もはや時代に合わないとして切り捨てる覚悟はしたわけですが、その一方でローマ人が王政時代から連綿と持ちつづけてきた『敗者をも同化する』という精神は捨てなかった。いや、捨てなかったどころか、それを最大限にする努力を行なった」
予算というパイは限られている。あれもこれもというのは無理。捨てるべきものは捨て去る勇気が必要なのだろう。そして正しいと信じる方針が決まれば、いかに反対にあおうとも貫き通す。
「カエサルの言葉を引用すれば、『人は自分が見たいと欲する現実だけを見ようとする』存在であるからです。改革によって既得権益が失われることに心を奪われている人たちに、改革の意義を説いたところで理解されないのも当然だと思わねばならない。しかし、かといって彼らの反対に耳を傾けてしまえばどうなるか。結局、どんな改革も大幅な修正をされて小幅の改良に終わってしまうのが落ちです。したがって改革をやろうとすれば、結局は力で突破するしかないということになる。そのことを誰よりも分かっていたのがスッラであり、カエサルであった」
反対派に理解を求めることに尽力するあまり、賛成派を増やす努力が決定的に不足しているという著者の指摘は鋭い。「力」が軍事力では困るけど、大衆の応援を背景に数の論理で押し切ることは時に許されるのではないだろうか、と感じる。
もう一つ重要なのが、ローマ人にはあったという“失敗を乗り越えようとする人間性”だろう。
「私がローマ人に興味を抱くのは、彼らが人間性に対する幻想を抱かず、ということは、自分自身に対する幻想を抱くことなく行動していたからなのです」「ローマが千年以上にわたって続いたのは、けっして運がよかったからでもないし、彼らの資質が特別に優れていたからでもありません。ただ、彼らには自分たちのありのままの姿を直視し、それを改善していこうという気概があった。だからこそ、ローマの繁栄はあれほど長続きしたのです」
楽観的予測を拝して現実を直視。失敗をごまかすのではなく、素直に受け入れバネとする。そんな人間性を核として、打ち出した方針をドンドン実行していく“改革”を早くみてみたい。 -
組織と改革、という視点から見たローマ史。
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一千年以上のローマの歴史から、
国家盛衰の法則を考える一冊です。
国家は外部環境から滅びることもありますが、
内部から滅びることが多いということが
印象的でした。
・人材はいつの世にもいるし、どの組織にもいるのです。
ただ、衰退期に入ると、その人材を活用するメカニズムが
狂ってくるのです(p341)
■塩野さんの結論としては、
結局は人材が出るか、出ないかであり、
その人材の評価は、結果がすべてである
というもののように感じました。
「結果さえよければ、手段はつねに正当化される」
「拒否権」こそ、権力の中の権力である(p104)
・ローマでは法律が時代に合わなくなったりしたとき、
前からあった法律の条文を改正するのではなく、
新しい法律を定めることで対応するという方法が
採られていました。(p330)
・改革によって既得権益が失われることに心を奪われている
人たちに、改革の意義を説いたところで理解されないのも
当然だと思わねばならない・・・したがって改革をやろうとすれば、
結局は力で突破するしかないということになる。(p346) -
内容は、ローマ人の物語をかいつまんで書いてあり、ローマ人の物語を途中で諦めた自分にとっては都合が良かった。ただ、現在の日本についての記述が思ったよりも少なく、タイトル負けしている感じはあった。
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塩野七生入門!
これから本編に入ります。
ちょっと気になるのは、文体。
気にしないように気を付ける。 -
「ローマ人の物語」の方で語っていることとかなり重複してた感があるので少し評価低い。
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言ってしまえば塩野七生の代表作「ローマ人の物語」、パクス・ロマーナまでの初心者向け要約本。
それなりに読ませるのだが、はたして題名の「日本が見える」の部分は、本当に必要だったのか、疑問符がつく。
良くも悪くも塩野七生はローマとルネッサンスの人。その人間がローマと絡めて現代日本を語っても、得意分野ほどのキレはない。
むしろそれらは、読み手が行間から感じ取るものであって、あえて文章化する類のものではなかったのではないか。
加えて、この作品に投入された口語調の文体も、本来の塩野七生の切れ味をオミットしている感がある。 -
NPO法人ドットジェイピーの人材開発CFTマネジャーをしていた頃、マネジメントの指針としていた本。
マネジメントに関してはドラッカーを始め、数多くの本が出ている。
だが、自分の知る限りではこの本までに『CFTマネジメント』に適した本はない。
「なぜ、ローマ帝国はあれほど広く、長く存続することが出来たのか」
そんな問いから本は始まる。
ビジョナリーカンパニーのように、ひとつのビジョンに統制するためのマネジメントではない。
人の限界を知り、現実的に帝国を治めていく手法。むしろ思想の域。
共通のルールのみを定め、ルールさえ守るのであれば、帝国に迎え入れる。ローマで言うところの市民権を与える。
だが、ルールを破ったものには容赦をしない。
「人はかくあるべき」「国民はかくあるべき」
人という存在に対して、画一的な基準を要求せず、
「その人らしさ」「その国家の特性」
あくまで相手の持つ現実を受け入れた上で『再構築』する。
それこそがマネジメントであり、それこそが『改革』
-既に現実は始まっている。
-既にその人は存在している。
透徹した現実主義を基にした、CFTマネジメントの真髄。 -
メモ
キーワードは組織。
英雄を必要としないシステムの確立に力を注いだローマ人。
王政から共和制、そして帝政へ。魅力的な指導者たちもいるが(カエサルとかアウグストゥスとか)大天才や独裁者が統治するシステムではなく、共同体の利益のために組織を確立・運用を重んじた。
そして環境の変化に合わせてシステムを(ローマ人の資質は変えず、注*:ローマ人の資質とは敗者も同化させる寛容・英雄を作り出さない集団指導体制)再構築していった柔軟性がパクス・ロマーナを作り上げていった。