- Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087472141
作品紹介・あらすじ
南仏の古代遺跡に眠る遺物の発掘。謎の宗教団体からの依頼を受けたレイハンター青山譲は、聖地レンヌ=ル=シャトーへと向かう。彼がかつて発掘に成功し、封印したその石棺をふたたび暴くために。遺物の正体とは、はたして何なのか。世界の王、レックス・ムンディの復活を預言するのは…。膨大な資料と想像力のもと、ヨーロッパ文明最大の謎とタブーに挑む、アドベンチャー・ホラー長編。
感想・レビュー・書評
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1989年、末期癌に冒されていながら妊婦ゆえ治療を拒否している女性患者が入院している。女性の名は堀川タキ。彼女は自分が産む子供は救世主だと言い張り、子供へのメッセージをテープに吹き込み続けている。しかし細胞検査の結果、彼女の病は未知の奇病であることがわかり…。
そして1996年、東京。ある事件がきっかけで盗掘屋よばわりされ、さらに奇病で片目を失ったはぐれ考古学者の青山譲は、「N43―シオンの使徒」という謎の教団の広報・宮下からある依頼を受ける。それは8年前に青山が発掘に携わり、そこで発見した遺物のあまりのおぞましさから、それを隠し発掘現場を爆破した事件の現場、南仏レンヌ=ル=シャトーの遺跡を再び発掘し、その遺物を教団に渡してほしいというものだった。青山は過去に蹴りをつけるためもあり、それを引き受け南仏に飛ぶが、ライバルの教授・井村の邪魔立て、さらに恐るべき真実が次々と発覚し…。
単行本は1997年の発表、内容的に『ダ・ヴィンチ・コード』(2003)とかなりかぶっているのだけど、こちらのほうが先行しているのだから驚き。だが知的謎解きミステリーだった『ダ・ヴィンチ・コード』と違い、こちらは荒俣宏なので伝奇ホラー風味。なんていうか、『ムー』愛読者むけな感じ。
『ダ・ヴィンチ・コード』もそうだったように、基本的にある程度史実に基づいている。レンヌ=ル=シャトーの遺跡、ソーニエール神父による発見、レオナルド・ダ・ヴィンチらも所属していたといわれる秘密結社「シオン修道会」、そして本書で謎解きに使われるニコラ・プッサンの絵『アルカディアの羊飼いたち』などすべて実在。
そしてマグダラのマリアが産んだといわれるイエスの子、その子孫、メロヴィング王朝、キリストの墓の場所や聖杯伝説との関係、聖骸布、テンプル騎士団に十字軍にカタリ派などなど、これでもかとキリスト関係の謎がてんこ盛り。
表題の「レックス・ムンディ」は、ラテン語で「世界の王」の意味、カタリ派ではアスモデとも呼ばれ、創造神だが善神ではなく悪神、魔王であるとされ、テンプル騎士団におけるバフォメット崇拝にも繋がっている。
登場する教団「N43―シオンの使徒」は北緯43度に聖地が集まるという理論を展開しており、シオン修道会の系譜(※シオンは聖地エルサレムの別称)、レンヌ=ル=シャトーも北緯43度付近にあり、教団は聖地でキリストが復活すると信じており、その儀式のために必要なある物(もう言っちゃうけどキリストの遺体)を青山に発掘させようとしている。
教団の教祖の名はアスモデ、今年8歳になる少年だという。ここで大半の読者はピンと来てしまうが、冒頭、謎の病に冒されながら子供を生もうとしていた女性、もしあの女性の子供が生まれていたらそれくらいの年齢だ。そして、その女性タキが、かつて青山の恋人でともに発掘に関わっていたことが徐々に明かされていく。
題材としてはとても興味深かった。マニアックな知的好奇心を満足させてくれるというか、民俗学、考古学的な面白さ。一見奇想天外なファンタジーのような出来事も、ちゃんと歴史や科学で裏付けされていて、なるほど!と思うこともしばしば。
ただ惜しむらくは、登場人物にあまり魅力がない点。主人公の青山譲はハードボイルドな感じで、それだけならまだしも、とにかくすぐ激昂する。ふつうに冷静に話せばよいような場面でもすぐ激怒、暴力的で、とても学者と思えない。若者ならまだしも、たしかアラフィフのおじさんのはずなので、もう少し冷静沈着に対処してほしかった。すぐ激して喚きだすので読んでいるだけで疲れてしまう。聖母と呼ばれている少女も正体は謎のままだったし、終盤、フランスの警察からも、教団からも追われているはずの青山が、普通に入国したりうろうろ活動していたのもご都合主義的。
著者の膨大な知識や、それに基づく推理はとても面白いのだけど、それを物語の形に落とし込むのがとても難しかったのだろうなという印象を受けた。内容はこちらのほうが濃いけれど、エンタメとしては『ダ・ヴィンチ・コード』の完成度のほうが上という感じかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
不思議・遺跡・古代・ハンター…これらの単語にピンときた人はぜひ。
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「ダヴィンチ・コードを越える興奮!」と書かれた帯は、決して誇大広告ではありません。宗教集団や、話のキモである“聖杯”の正体とその実態は確かに“ダヴィンチ・コード”よりもリアリティに欠けるかもしれませんが、それを補ってあまりある独特の怪しげな空気感や解釈など、荒俣宏の魅力を存分に魅せつける快(怪)作!
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キリストの聖遺骸と聖骸布を核とした伝奇小説なのだと思うが、ページ数の割に多くの要素を詰め込みすぎ。日本人学者、日本の宗教団体が登場する必然性を感じない。荒俣の魅力である広範な知識で正統的なアプローチをして欲しかった。なぜか半村良を思い浮かべる。
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2023年7月4日読了。フランスで発掘した遺跡に絡む事故・隠ぺいの記憶に苛まれる考古学者・青山は、謎の教団「N43」に接触を受け再び彼の地に向かうが…。ダ・ヴィンチ・コード的な冒険活劇、だがこちらの方が早いのだとか?ミステリの手掛かりとなる絵画や書物・地名などは実在のものも多いようで「人類の謎が解き明かされる…!」的な興奮は感じられるが、作者の興奮にこちらが追い付かず「お、おう、そうか」となってしまう感覚。登場人物たちのセリフも「一般的に○○と言われる△△は実は□□だけれど、それが■■だったのね!」みたいな説明口調で、「なぜそこまで考古学に情熱を燃やすのか?どういう人間なのか?」の描写が足らずなぁ~んか引き込まれるものを感じない…。なんだかんだバタバタしたけど結局は何も起きず何も解決しませんでした、と感じる物語運びも不満。素材は料理の仕方が大事、ということなのかなあ。
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SF?一気に読めるけど、うーん、かな。
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SFのような…。世界の王が救世主として現れる。と宗教団体が躍起になって探している細胞が考古学者によって発見され救世主となるのか、悪魔となるのか…。
考古学者は世に晒されるのは危ないと、その妻は救世主となると…
ハラハラする小説。 -
キリストやマグダラのマリア、テンプル騎士団、シオン修道会などダビンチコードと同じ題材を用いているが、それよりも早く出てる事が結構評価高いみたい。聖地とされる場所の特徴など色々な題材が組み込まれており、内容が難しくて理解しながら読むのが大変だった
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んーどうにものれなかったし、なんだか肝心なところが、雑誌記事やら手紙やらで説明されてしまってちょっと興ざめ。
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意外と良い。