黄金伝説 (荒俣宏コレクション) (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087481716

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  • 学生時代に買ってみたけどその時は面白さがわからず途中で投げ出してしまった本。
    江戸後期〜明治あたりの「失われた産業」の分野で、新ジャンル開拓や富や名誉を求めて邁進した「王」たちのお話。石炭王や鉄道王の話は聞いたことがあったけど、サトウキビ王、遊郭王、南洋王〈戦前に日本がミクロネシアを植民地にしてた頃の話〉なんかは全然知らない世界で面白かった。

    新潟県のサフラン酒王の御殿は珍建築好きには面白そうなので行かねばならない。北九州の炭鉱エリアも、じっくり旅行したら面白そう。残念だったのは、この本で紹介されてた、名古屋の元遊郭の旅館に泊まりに行こうと調べたら、建物そのままにデイサービスセンターに変わってしまっていたこと…。

  •  意外とタイムリーな本だった。

     朝ドラ「花子とアン」で花子の腹心の友・蓮子さんが九州の石炭王とお見合いした。嘉納という名字だったから、もしかして麻生太郎の麻生財閥のこと?と思って、この本を読み返して確認したら、また違う九州の石炭王がいて、伊藤伝右衛門という人だった。
     蓮子さんのモデルは柳原白蓮で、伝右衛門との再婚後に不倫をし、新聞紙上で大騒動を巻き起こすのだが、その経緯がこの本には詳しい。確かにこんな女傑は仲間由紀恵クラスの女優じゃないと務まらないかもしれない。ドラマの今後の展開が楽しみだ。


     一応、麻生財閥の麻生太吉は石炭王(1)、伝右衛門は石炭王(2)として章は分かれている。
    麻生太吉のほうの人生も結構豪快で面白い。茶屋で働くおイシというの美人に会うためにわざわざ山腹を30メートル掘ってトンネルをつくり近道とした。金持ちは金の使い方が違う。


     タイムリーと書いた理由はもうひとつあって、富岡製糸場が世界遺産に登録決定?で生糸産業に注目が集まっているが、当時日本最大の生糸輸出港だった横浜には生糸王・原善三郎がいた。
     横浜本牧にある三渓園は養子の原三渓がつくったもの。広大な敷地に生糸産業で儲けた金で、各地の歴史的建造物を移築した。もともとこの地にあったものじゃないから世界遺産にはならないだろうが、生糸産業の隆盛を感じたいなら、たぶん富岡製糸場より三渓園を見た方がいいんじゃないだろうかと個人的には思う。三井財閥が養蚕業者との関係がうまくいかず苦しんでいたときに富岡製糸場の経営を譲り受け、のちに片倉工場として昭和62年まで操業を続けられたのも原三渓の功績らしい。(原時代の建物は現存しない)
     
     関東大震災で横浜港は壊滅的な打撃を受けたときは、私財を投じ横浜の産業を守った。
     あんたは偉い!


     この他にもサフラン酒王、サトウキビ王、たばこ王、遊郭王、鉄道王、映画王などなど、興味深い”王”たちが盛りだくさんで、読んでいて飽きない。 

  • 近代の産業遺産を、経営者の屋敷を中心に見る。

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    以下感想
    近・現代史は自分で積極的に探さないとまったく入ってこない。
    近すぎて「教養」にまで達していないからなのか。

    著者の答えを、少し長いが引用する。
    「現在ある産業の姿もまた、いずれやニシン業や石炭業のように『過去』となって滅びることを、だれもが知っている、そこのところなのだ。この冷酷な現実は、生物が世代交代することと同じくらい確実にやってくる。そういう事実を多少でも長く、忘れていたいから、現役の産業界は過去をみつめない。」(本文 あとがき P.326)

    紹介された産業王たちの遺産の中で、手始めに京都の長楽館へ行ってみようと思う。

  • 廃墟好きはこの一冊から始まりました。

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著者プロフィール

作家・翻訳家・博物学者。京都国際マンガミュージアム館長。
平井呈一に師事、平井から紹介された紀田順一郎とともに、怪奇幻想文学の日本での翻訳紹介に尽力。のち活動の幅を広げ、博物学をはじめとして多ジャンルにわたって活躍。
主な著書に『妖怪少年の日々』、『帝都物語』シリーズ(ともにKADOKAWA)、『世界大博物図鑑』(平凡社)、『サイエンス異人伝』(講談社)、『江戸の幽明』(朝日新書)など。『怪奇文学大山脈』Ⅰ~Ⅲ(東京創元社)を編纂。

「2021年 『平井呈一 生涯とその作品』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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