- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087505047
感想・レビュー・書評
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ねっとりと甘い。
心にささった棘からじわじわ膿がでてくるような
大人のけだるい甘さが漂っている。まだ腐りきってない濃厚で
でも鼻をそらすことのできない芳香。
ふと主人公の年代が自分とばっちりとかぶっているのに
気づいて愕然とする。こう展開のは、「大人」な空間故だと
思っていたのに、気がつけば自分もその領域にいる。
こういうシナリオが非日常に感じない
自分にちくんとする痛みを感じるのは、
この小説の主人公の気持ちがわかるというのは、
もうがむしゃらで青かった青春時代が終焉してしまったということだから。
でもね、会ったばかりの男がいくらスマートでも
美しくてもやんちゃでも、それを「愛」と言ってしまうのは
私は”逃げ”だと思うな。そういう状況に陥らせる
完全な大人になる直前のあせりを理解はしていても。
この種の甘さは飲み込めば飲み込むほど
乾いていくそういう種類のものだから。
週末に読む恋愛小説に、分別を知るつまらない(けど”良識的な”)
大和撫子をはなっから期待はしないけれど
(森瑤子だもの!)ぐらぐらと落ちる直前のところで、
はらはらさせながら最後のスパートにすらりともちこんだ
「誘惑」のほうが私は「情事」より好み。
やっぱりさ、女はいくらいい男でも簡単に寝てしまってはだめなのよ。
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「情事」について。これが処女作っていうんだからスゴイ。どちらかというと2つ目の「欲望」が好き。<br>
素直になれずにどんどん崩壊してゆく関係。そこに思わぬ悪魔のささやき。<br>
欲望との葛藤〜結末まで、揺れ動く女性の心に切なくてもどかしくて、そして安堵。 -
とても好きな本
言葉が綺麗でラジオみたいにスラスラ入ってくる。
作者を好きになって、他の本も集めました。 -
完全にパケ買い
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結婚生活が不幸だ、もう女性としての賞味期限が終わる、とそんな理屈で夫以外の男に簡単に抱かれる女性が出てくる二編。こういう情念は理解できるし、別に夫側の視点じゃなくて彼女たちの情人側の視点で読めばいいのに、どうしてもなんかそうできずにしっくりと読めなかった。結婚を選んだ2人がすれ違っていく心理描写がとてもリアルで上手だった。特に「誘惑」では、なんだこの女って思える「情事」よりもとても良く描かれてると思った。しかし欧米人と結婚する日本人女性ってモチーフが好きな作家だなあと思った。面白かったんだけど、好きでは無い作品。
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第2回すばる文学賞。
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初読
エッセイは大好きだったし、小説もいくつか読んでたけど
デビュー作は読んでなかったのよね
エッセイで何度も言及されてたのだけど。
これは…デビューするよね。
実体験的センセーショナルな部分より、文体そのものの方が印象的。
濃厚で、繊細で、酔うような。
小学生だった私が40歳の年齢だけは立派な大人になっても
森瑤子の小説に出てくるのは圧倒的な大人の女だ。 -
表題作の「情事」のほか、「誘惑」を収録しています。
「情事」は、夫がいるにもかかわらず、レイン・ゴードンという男性に惹かれ、彼にも激しく求められる洋子という女性の心情を描いています。「誘惑」は、夫婦の間に深い溝が生じたまま、夫の実家に帰ることになった妻の物語です。
どちらの作品も、イギリス人の夫を持つ美しい日本人の女性が、男たちの熱い視線を集めることができる残された時間を思いながら、別の男性にときめきを覚えるシーンを印象的に切り取って描写しています。