ブリキの太鼓 3 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087600391

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  • 小さな鼓手の奏でるブリキの太鼓。
    ビートは難解、重低音。時に奇怪で猥雑、
    そして同時に軽妙、愉快。

    果たしてオスカルは、醜悪な世界を生きるために三歳で成長を止めたのか。
    三歳で成長を止めたことで世の中は醜悪に見えたのか。

    自己の醜さを肯定することで生き残れることってあるかもしれない。

  • 第三部に入るとオスカルの語りに麻痺感がなくなる。戦争が終わって世の中が落ちついたから、オスカルも心のバリアを解除できたのか。そして死者たちの記憶と墓地の光景が繰り返し語られ、狂躁的だった物語はレクイエムへと姿を変える。

    人々は泣くことを思い出し、オスカルは全身全霊をかけて死んだ人たちを悼んでいるかのよう。それまでの彼は自己愛だけで立ち回っているように見えて嫌悪を感じずにはいられなかったけれど、それが悲しみに変わる。

    オスカルが嗤ってみせたグロテスクな世界、それも足元には死者たちが積み重なっている世界の一部として自分があること。それを本書は読者の眼前に突きつける。そして振り返れば黒い料理女が立っている。さまざまなレイヤーで怖いものを体験できる小説だった。

  • あまりにもブラックすぎる奇書でしたね。
    今まで読んだ中でなかなかの奇書です。はい。

    何で読みづらいかといえばこの作品
    比喩表現が独特なんですよね。
    特にラストに関してはこれって何なんだろう
    と思われること間違いないと思います。
    (おそらく死なんだとも思われるけど…)

    彼は栄光を手にしたものの
    結局はそれすらもかすむ事態となります。
    その太鼓はより輝きを増し
    人の体まで操っていたのです。

    だけれどもその能力は若者には
    通用しなかったのです。
    (おそらく戦前生まれじゃない人には通用しない?)

    そしてすべては終わります。
    彼は何者…?

  • 貸し犬のくだりで、犬に戻りたかった。自分も人間に戻りたかった。というくだりがある。「わたし」と「オスカル」をめぐる分裂も。人間にして人間でないもの。

    主人公ははみ出す者。はみ出すからこそ求められる。ただし強烈な孤独がつきまとう。死者との連帯感が必須なものになっている。

    意思の問題。予期していないものも含めての意思。そこに戦争も殺人も破壊もふくまれる。30歳になれば、まともになれると信じられている。しかし、事実はそうではない。

  • 相変わらず場当たり的な行動で先の読めない展開で読むのも疲れる。オスカルの特殊能力が失われたせいで、より現実的な物語になった気がする。仕事や恋愛の話が中心で幻想的なシーンは少なくなったと思う。玉ねぎバーの話など常識を逸脱した話もあって面白い。

  • ぼんやり理解できかけた気になりそうだったけど
    やっぱり難しかった。

  • 普通の本のように、一行一行読んだわけではない。
    冒頭はそうしていたのだが、だんだんと読むのが苦痛になってきてしまったため、ざざっと全体を読んでいく方法を採った。
    作者はいったい何を考えているのだろう?というのが感想であった。
    私の読解力では、まったく理解できなかったのである。
    他の読者の方はどのように読解しているのか調べてみたところ、自分がいかに読解力がないかがわかった。
    中には、「大変面白く、すぐに読破してしまった」という人もおり、尊敬してしまう。
    主人公は現実逃避をしており、結末では現実を向き合わなければならなくなってしまうそうだ。
    自分の力不足さにがっかりである。読解力を向上させたいものだ。

  • 各エピソードは所々面白かったのだが、
    全体を通しては結局よくわからず。
    ただ、戦前戦後のポーランドという物語の舞台は、
    興味深いものがある。

  • 再読終了。ダンツィヒを離れたオスカルとマリーアとクルト。マリーアの姉のもとに身をよせ、オスカルは墓石彫り職人のコルネフに弟子入りする。思い切ってマリーアにプロポーズするも断わられ下宿を始めるオスカル。美術学校のモデルで生計をたてるうちに、同じ下宿で引きこもり生活を送っていたクレップとジャズバンドを結成して「たまねぎ酒場」で演奏しだす。三度目の師匠ベブラとの邂逅と、ドラマーとしての成功と栄光を手に入れたオスカル。しかし看護婦ドロテーアへの執着と、偶然拾った彼女の(死体の)薬指が彼を破滅させる。

    第一部から、精神病院のオスカルの見舞いに現れていた友人クレップと、ヴィトラルが終盤でようやく登場。オスカルが病院に入れられていた理由もようやく判明。121センチのオスカルが病院で30歳の誕生日を迎えるところで小説は終わっているけれど、オスカルはこれからも生きていかなくてはならない。

    「玉ねぎ酒場」は、今でいうところの「涙活」みたいで面白かったです。玉ねぎ剥いて、みんなで泣こうっていう・・・。看護婦に対するオスカルの執着は流石に変質的すぎて気持ち悪い。

  • 悪魔ですな

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著者プロフィール

1927年ダンツィヒ生まれ。第二次大戦で最年少兵として戦い負傷して米軍の捕虜となる。その後採掘場などで働く傍ら彫刻を学び同時に詩や戯曲を創作。『ブリキの太鼓』『猫と鼠』『犬の年』他。99年ノーベル賞受賞。

「2010年 『ブリキの太鼓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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