- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087602364
作品紹介・あらすじ
イシドーロ・ビダルは一人で部屋に篭って外界から孤絶していた。歯痛のため絶えず手を口にやる癖がついてしまったからだ。こんな現状を打破しようと、仲間のいるカフェに出掛けていった。カードに負け外に出ると、若い連中が何者かを丸太や鉄棒で滅多打ちしているのを目撃する。彼の見たものは、新聞売りのドン・マヌエルの血だらけの姿だった。それは青年と老人の戦争のはじまりでもあった。
感想・レビュー・書評
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政治的な思想とか民族間の対立などという的確な理由はなく、面白半分に若者が徒党を組み、無差別に老人を殺害する。最初はグロく陰惨で血が凍るようなのを期待しワクワクしたのだが、あれどうも様子違うぞ?
襲われる老人側も恐怖に震えるが、理由がないので、まるで疫病を相手にしてるかのような感じ。
でも実はこれが何より怖い。理由。若者は社会に不満を持っている。今の世の中をこういうふうにした先人が心から憎い。年とってれば誰でもいい。「人」として扱っていないのである。2018年7月現在、ヌーブラの様に日本国にピッタリ。 -
ボルヘスの年下の親友ビオイ・カサレスの中編作品。
アルゼンチンで問題化している老人と若者の摩擦。いわゆる”オヤジ狩り”に巻き込まれた主人公。
シビアな内容かと思えばちゃっかり年下美女のハートをゲットしてしまってやっぱりラテン男はしょぼくれたりしないな。 -
巧成り名遂げた作家が、余技で書いたような小説か。訴えかけるものが薄い。
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アルゼンチンの作家。ボルヘスとの共作でも知られる。今回初読。
主人公はイシドーロ・ビダルは初老の男。仲間と平凡な日常を送っていたが、ある日若い連中が集団で老人を襲うのを目撃する。
老人と若者の戦争、という話(それだけではないけど)。個性的な登場人物をめぐる騒動が描かれ、特に後半リーダビリティが高い。ただ老人がパワー全開で対抗するという(近年よく映画であるような)活劇ではなく、彼らは逃げ隠れしている感じ。解説を読むとアルゼンチンの世代対立(書かれたのは1969年)がベースにあるようで、それを戯画化した作品といえそう(解説では本作と直接関係のないスペインの菜種油による油症と政情不安の話も書かれていて興味深い)。というわけで、全体にどうしても重苦しさが感じられる。また主人公は老人に対する嫌悪感を訴える場面もあり、執筆当時50代後半だった著者の老いへの恐れも見える。終盤は多少意外な展開だったな。
著者の他作品では、SFっぽいらしい『モレルの発明』が気になるなあ。