- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087604252
作品紹介・あらすじ
ふと甦るコンブレーの記憶。そこで過ごした少年時代を貫く二つの散歩道、スワン家の方とゲルマントの方。それは物語の重要なテーマを暗示する二つの方角である。隣人スワンが経験した苦しい恋と語り手がスワンの娘ジルベルトに寄せた少年の日の恋物語。やがて保養地バルベックを訪れた語り手は美少女たちのグループと知合い、なかの一人、アルベルチーヌへと心が傾いてゆく。
感想・レビュー・書評
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シリーズが長いと定評ですが、本当に長いのはその記述ですね。ページが文字でぎっしり埋まっていて、それだけでも圧倒されます。話自体はシンプルなようですし、登場人物一覧表もついているので、ゆっくり読んでいきたいと思います。
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やっと読み始めた。それも3冊にまとめてある抄訳版の一冊目を何とか読み終わったのである。
なるほど、
プルースト研究者でもある訳者鈴木道彦氏のあらすじがほどよく、解説もすばらしい。本文の挿入もさすがに、ここぞというところが選んである。
それでもこの小説は、その挿入の短い本文でさえ、なんと読みでがあることか。
むしろ、あらすじを追っての物語展開は複雑で興味が尽きない。この紺膨大な小説はあらすじを把握して細部を楽しむのがいいのだろう。と思われた鈴木道彦氏は明察の人である。
この小説の、名もなき語り手が語る心の動き、繊細で詳細に綴ってあり、さらに比喩を用いて説明してくれるのだが、その例に挙げてあるたとえがまどろっこしい、めんどくさい。眠りにつく際の描写や景色の見方の克明さ、音楽や絵画についての考察は微に入り細をうがち「もういい!」というぐらい。もちろん文学についてはもっと真剣だ。
そう、小説家になりたい語り手の使命感を解き明かしているのだが、本筋がどれで、たとえがこれでと、よーく見極めないと何が何やらわからなくなってしまうのだが。
「美しい作品がそれまでに読んだ美しい作品を基準にするのではなく、固有の美である」と作家道を説かれると(集英社文庫・抄訳版、344P)やはりこれは文学について真実を語っていて、それをおもしろがる向きにはもってこいだ。
と、「抄訳版の1」を読んだだけなのに目が離せない作品である。しかし、抄訳版2、3と読み進むのもしんどいのに、まして、これを機会に完訳版をどうぞと鈴木氏、手を出せるかどうか・・・。 -
大きくなっても、ほかの大人たちのばかげた暮らしぶりなど決して真似しない、パリにいても、春になったら知人を訪ねてくだらない話に耳を傾けるのではなく、最初に花開いたサンザシを見に田園へ出かけてゆくだろう。
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≪サイコパス・PSYCHO-PASS≫の引用から興味を持って。
長い。果てしなく長い。これ抄訳だからまだ読めるだろうけれどこの厚さを十五冊とかプルーストは手が痛くならなかったんだろうか……。
母は、「プチット・マドレーヌ」と呼ばれるずんぐりしたお菓子、まるで帆立貝の筋のはいった貝殻で型をとったように見えるお菓子を一つ、持ってこさせた。少したって、陰気に過ごしたその一日と、明日もまた物悲しい一日であろうという予想とに気を滅入らせながら、私は無意識に、お茶に浸してやわらかくなったひと切れのマドレーヌごと、ひと匙の紅茶をすくって口に持っていった。ところが、お茶のかけらの混じったそのひと口のお茶が口の裏にふれたとたんに、私は自分の内部で異常なことが進行しつつあるのに気づいて、びくっとしたのである。
(中略)
そのとき一気に、思い出があらわれた。この味、それは昔コンブレーで日曜の朝(それというのも日曜日には、ミサの時間まで外出しなかったからだ)、レオニ叔母の部屋に行っておはようございますを言うと、叔母が紅茶か菩提樹のお茶に浸してさし出してくれた小さなマドレーヌの味だった。プチット・マドレーヌは、それを眺めるだけで味わってみないうちは、これまで何ひとつ私に思い出させはしなかったのだ。 -
ちょう有名な古典に挑戦!と思ったが長いので、何はともあれ抄訳版を読むことにしてみた。プルーストは1871年生まれ(1922年死亡)のフランス人で、自伝的な要素が強い作品らしく、当時の社交界・サロンがよく出てくるらしい。そうした舞台を背景に芸術志向の強い主人公が様々な人物に出会いいろいろな体験をするといった内容のようだ。
本書はそれぞれのパートの重要と訳者が判断した部分を抜き出し、解説と共に並べるといった形式になっている。だから基本的には自分のような初心者にも(当然ながら)筋が把握しやすく出来ている。本文付きの解説書、といってもいいと思う。文章の方は長く観念的でなかなかの難物。絵画や音楽に関しての考察が出てくる部分は時代背景含め興味深いのだが、一読しただけではなかなか意味が取れない(再読しても難しそうだが)。時間や記憶についても大きなテーマとなっているがそうした部分もやはり難しいが、どういったイメージが作品中で重要であるか解説されるので読み進めるのが辛いということはそれほどない。恋愛に関する観念的な記述が続くと退屈してしまうが(笑)。
多くの名作がそうであるように多面的な魅力のある作品なのだろうということがおぼろげながら見えてくる。風俗習慣の部分(年始まわり、お年玉という訳があるが、そういう風習はあったの?)などには素朴な疑問がわいてきたりして、単なる小説好きにも幅広い楽しみを与えてくれそうな作品のようだ。 -
僕が紆余曲折の後にたどり着いたのがこの抄訳版。
一杯の紅茶とマドレーヌでここまで文章を繋げられるのかと表現の引き出し方に驚かされる。
全訳ではないので注意。
本来はじっくりと時間をかけて読むべき作品なのだろうが、「意識の流れ」を扱った作品なので、全体の「流れ」を”飽きず”に汲み取りたかった。そういう意味で抄訳はうってつけ。日本語翻訳文章がやや苦手な自分でも1巻を読了できた。
プルーストの表現を堪能したいという人には全訳をおすすめする。 -
シリーズ全体での評価です。
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ちゃんと、ちくま文庫で全訳を読みましょう。文体も、読みやすくしたつもりでしょうが、壮麗さに欠けます。原書だって、それなりに壮麗です。それから、肝心なところが抜けてます。登場人物リストのところしか読むべきところはありません。「小説のおもしろさ」というものがあるとすれば、細部にしかありませんので、輝かしい細部が「失われた」抄訳というのはいかがなものか。「失われた」細部を「求めて」古本屋へ走りましょう。
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マドレーヌと1杯の紅茶、静かな小道・・この世界の雰囲気が好き。抄訳版ではなく、私は全訳を少しずつ、美味しい高級なお菓子を味わうようにして、年数かけて楽しんでいます。