女三人のシベリア鉄道

著者 :
  • 集英社
3.65
  • (8)
  • (5)
  • (17)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 121
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087712889

作品紹介・あらすじ

与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子-近代文学を代表する女性作家たちの足跡を追い、著者はウラジオストクからモスクワ、パリまでの鉄道を完乗。勇敢な女たちのエネルギーに思いを馳せ、現地の人々の声に耳を傾けながら、旧社会主義国の重い歴史を体感する。評伝×鉄道が合体した傑作ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • <与謝野晶子・宮本百合子・林芙美子の人生の旅を追体験!>


     与謝野晶子・宮本(中條)百合子・林芙美子。この三人の共通点は、シベリア鉄道で旅していたという点にあったのです。しかも、明治生まれの女流作家(ここはあえて「女性」ではなく「女流」と言いたい★)でありながら……!

     晶子は、パリにいる夫・鉄幹に会うために、7人の子供たちを置いて列車の旅へ。
     百合子は離婚後、友人のような恋人のような女性とともに、革命から十年後のロシアへ。
     芙美子は満州事変が起きた時代に、パリに住む画家に会うべく、夫を置いて一人旅へ。

     この3人の熱情大陸(←何かに似ている?)的な体験を、2000年代の作家が可能な限り追体験するという、壮大な紀行。読み甲斐が違います☆
     女三人がシベリア鉄道に乗り込んでいった事情、その選択、その行動、その迫力、その情熱、その愛のあり方、その途方のなさに、圧倒されるばかりでした★
     しかし、書籍や映画では、私は激しい女たちの生き方を見るのが好きかもしれません。痛いくらいがちょうどいいのです☆

     そして、自分の欲望に正直に燃えた女性たちの人生の旅を、著者の森まゆみさんは三人分まとめて追いかけていきます。女流文学者の評伝を数々手がけてきた彼女は、トランクいっぱいの資料とともに出発し、自分の人生と彼女たちの人生を行きつ戻りつするのです☆
     本の内容としては、女流作家三人のエピソードの割合が多いのですが、著者にも、平和の世にたどりついて無事にお子さんが育つまで、ここには書かれていない人生の旅があったことだろうな……と、苦労がしのばれます。

     私はさらに、その森さんを追いかけるような形でページをめくるという、旅の旅のまた旅を追っていくような構造(?)が発生。眩暈にも似た感覚に揺られる旅体験でした。
     終始、興味深く感じて熱中しましたが、長く人生経験を積んだ方が手にしたほうが、本書から感じ取るものは多いのかもしれないとも思います。

  • 2021年1月期の展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00291347

  • 文学

  • 姦しい女三人の旅行記と思って読み始めたら、全然違いました。

    与謝野晶子は好きでなく、中條百合子のことは知らず、林芙美子はなんとなく知っている程度。
    文学的ですが、感動や情緒というよりは評論のよう。
    百合子が大名旅行と書いてますが、筆者もなかなか優遇されています。
    何度も同じ文がでてくるのは連載を一冊に纏めたからでしょうが、編集していただきたかった。

    左巻きな中盤、戦争にふれる後半。あんまり気軽に読める内容ではなかった。

  • 与謝野晶子、中條(宮本)百合子、林芙美子、それぞれのシベリア鉄道の旅を辿る旅行記。作者である森まゆみさんを含め、みな、なんと力強く、思い切りのよいことか。
    旅行記としても面白く、また3人の女性たちの評伝としても面白い。

  • 与謝野晶子や林芙美子、ただ者ではないにしても、あの時代シベリア鉄道で一人旅とは勇気あります。どちらも「男に会いにいく」という目的ゆえでしょうか。本場のボルシチ食べたいです。続けて、本書で引用されていた林芙美子の「下駄で歩いた巴里」も読みたい。

  • 読んでいる途中も、読後感もとても良かった。与謝野晶子、中條(宮本)百合子、林芙美子の3人はそれぞれにシベリア鉄道でパリ(百合子の目的地はモスクワだったが、パリにも足を伸ばしている)に向かう。その間の、そしてパリでの3人を、それぞれの日記や短歌、小説から追想したエッセイ。作者の森まゆみ自身もシベリア鉄道でパリにたどりつくのだが、これらの3人に寄せる筆者の共感はしみじみと暖かく、彼女たちの人生や感性に寄り添っていく。

  • 三人とも面白い。この三人をすぐ隣にいる女性のように感じられる、もしくは現代の週刊誌をにぎわしている女性作家のように感じられるのは、著者のおかげだと思う。

  • 大変面白く、読みごたえのある本でした。

    与謝野晶子・宮本百合子・林芙美子という三人の作家がシベリア鉄道に乗って、ロシア・ヨーロッパを旅していますが、その軌跡を辿るように著者が旅をしていきます。

    豊富な文学知識と親しみのある文章で語ってゆく紀行。対象となる作家に寄り添う体温を感じる理知的な文章は当該の作家の作品をも読んでみようかと思わせます。

    いずれにしても、シベリア鉄道という旅愁を誘う取材対象だけでも惹きつけられる本です。

    近代文学がお好きなら是非どうぞ。

  • 面白かったです。日本近代文学を代表する3人の女性たちと、著者自身のシベリア鉄道の旅が鉄道の進行と共に進んでいきます。三人の旅行の、それぞれの経緯や時代背景、各地の風景今昔、著者が出会った人々との交歓…と盛りだくさんです。1冊なのに何冊分か読んだような気がします。
    与謝野晶子にはふてぶてしいイメージを持っていたのですが、この旅においてはとても不安げな様子が可哀想に思えてきました。現代でもすんなりといかない(と思われる)ロシアの旅行へ、当時の女性たちがよくも果敢に出かけたものだなあと思います。
    著者の旅では、具体的な列車での旅模様が面白いです。列車の旅っていいなあ。旅情をかきたてられます。各地に残るソヴィエト時代の名残り、シベリア抑留者、ロマノフ一家、レーニンやスターリン…等々のエピソードも興味深いです。

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1954年生まれ。中学生の時に大杉栄や伊藤野枝、林芙美子を知り、アナキズムに関心を持つ。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。
その中から『谷中スケッチブック』『不思議の町 根津』(ちくま文庫)が生まれ、その後『鷗外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『彰義隊遺聞』(集英社文庫)、『「青鞜」の冒険』(集英社文庫、紫式部文学賞受賞)、『暗い時代の人々』『谷根千のイロハ』『聖子』(亜紀書房)、『子規の音』(新潮文庫)などを送り出している。
近著に『路上のポルトレ』(羽鳥書店)、『しごと放浪記』(集英社インターナショナル)、『京都府案内』(世界思想社)がある。数々の震災復興建築の保存にもかかわってきた。

「2023年 『聞き書き・関東大震災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森まゆみの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×