鈍色幻視行

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714302

作品紹介・あらすじ

謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。

撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――

感想・レビュー・書評

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  • 作家の蕗谷梢は、お互いに再婚した同士の夫で弁護士の雅春とともに豪華客船の旅に出ます。
    その客船には一緒に、呪われた小説『夜果つるところ』の映像化の関係者たちが乘っています。
    梢はその関係者らからその呪われた小説(映像化するときに死者が8名出ていて、シナリオライター(雅春の前妻)は自殺しています)の話を聴いてその謎を解こうとします。

    関係者とは映画監督、その妻、プロデューサー、俳優、その恋人、女優、編集者、コレクターでファンの漫画家姉妹などです。


    この作品はミステリーなのかと思って読んでいたら、厳密な意味でのミステリーではありませんでした。
    タイトルにあるような幻視行=幻想譚とでもいうような話だと思いました。

    雅春がミステリー好きな弁護士で、それ以外の人物は皆『虚構』に携わっている人間ばかりです。
    その辺もこの作品の幻想性に一役買っていると思います。
    雅春はクリスティー好きなので、クリスティーが好きな方には楽しいかと思います。(作者の恩田さんのクリスティー好きは有名ですよね)


    なんだか、船の上の話のせいか幻を追いかける話のせいか、読了しても世界がまだゆらゆらゆらめいて、何の話を読んだのかわからなくなりそうな読後感です。
    そもそも、謎とは一体何だったのか…。
    極めてあいまいな幻想性のあるミステリーだと思いました。

  • 小説家の蕗谷梢は、撮影中の事故により映像化が頓挫した小説『夜果つるところ』とその著者である飯合あずさのことを知るために関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加する。

    呪われた映画ともいえる理由には最初の撮影で出火事故で6人が死亡し、2度目の撮影中では密室状態での凶器のない無理心中⁇。
    夫・雅春の妻は脚本を完成させた直後に亡くなるという…。

    何度も映像化できない理由が「呪われた」せいなのか。
    豪華客船で関係者に取材することから始まるのだが、誰もが飯合梓のことを知っているわけでもなく、そして彼女自身死亡しているのかどうかも定かではない。
    謎に包まれているまま、終章となる。

    こんなにも『夜果つるところ』が気になって仕方なくなるとは思いもしなかった。

    「母恋もの」とか「母恋し、父不在」ものであると幼き母を連れての中で角替正は語るのだが、ここでの会話が真に迫っていたのではないかと思う。

    長編を感じさせないほどの不思議な感覚だった。
    何もかもが、わかったようでいて結局は何もわかっていないまま…
    誰もが旅を終えたのか。


    今は、早くあの本を読まねばと思う。



  • 作中に出てくる、呪われた小説『夜果つるところ』を先に読んでしまいました。しまった‼️と思いましたが、『鈍色幻視行』の中で、かなりネタバレされているので、先に読むのも悪くなかったです。
    相変わらず霞がかった展開と結末に恩田ワールドを感じました。

  • 小説家・恩田陸氏によるミステリ・ロマン大作『鈍色幻視行』、ついに5月26日(金)発売! 作中作『夜果つるところ』とともに、2ヶ月連続刊行!|株式会社集英社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000421.000011454.html

    鈍色幻視行/恩田 陸 | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771430-2

  • 不安感が増す一冊。 

    旅に土産話の一つや二つは付きものだ。
    が、この物語の船旅は乗船から下船まで目の前に広がる景色と流れゆく時間、目の前の人々を眺めていた、そんな普通の船旅物語で終わった感が否めない。

    呪われた小説に纏わる謎、その著者の謎、はたまた関係者に取材を重ねていく時間は陰鬱な雰囲気で好き、恩田さんらしい。

    誰かが何か重大な秘密を握っているのか…でも人間分析、自己分析も絡み次第に不安感が増してきた。

    この船はきちんと目的地の港に着けるのか。

    ん⁇何かどこかで見落としたかしら。

    なんだか手ぶらで下船させられた気分。

  • 読書備忘録810号。
    ★★☆。

    650pの大作。
    3/15(金)夜に神戸帰宅に向けて移動開始。再び東京に戻って来るのは3/24(日)夜。予約本受け取りの日程調整を3/24以降にしようか迷っているうちに、突然準備できたと!しかも「なれのはて」とセットで!((+_+))
    なれのはて450p、こいつは650p。
    万城目ワールドを3/6に読み終わり、3/7からなれのはて。3/9に備忘録アップして、3/10から3/14まででこいつを片付けて、3/15(金)の出勤前に返却できるのか?遅読のわたしが?
    久しぶりに、すべての隙間時間を読書に充てて(味噌汁作っている最中も本を片手に・・・)頑張った。

    前振りが長かったですが、神戸の週末でゆっくり備忘録。
    結論としては鈍色の読書でした・・・。盛り上がりもなく・・・。一言で言えば面白くなかった(-_-;)。わたしの嗜好には合わなかった。

    小説「夜はつるところ」は映像化に際して呪われた。
    1度目は、撮影シーンで事故が起き、2人が死亡、4人が負傷。
    2度目は、役者2人が心中?
    3度目は、脚本家が、自殺して頓挫。

    そして主人公、蕗谷梢はこの呪われた小説「夜はつるところ」に関する何かしらの作品を世に出そうと考えた。
    そしてとある豪華客船の船旅に「夜はつるところ」のさまざまな関係者が乗り合わせることを知り、自身もこの船旅に参加しインタビューしていくというストーリー。
    ミステリーだとか、ホラーだとか評論する方もいらっしゃいますが、長い長い船旅という印象。

    呪われた小説「夜はつるところ」に関係する方々のああでもない、こうでもない、おれはこう解釈する、あたしはこう思う、をひたすら語り合う読書会を傍観したというしたという感じです。
    まあ、登場人物はクセありで面白くなくはないのですが・・・。

    そして、この作品では肝心の「夜はつるところ」の内容はほぼ分からない。
    なので、恩田さんの「夜はつるところ」は読まねばなるまい。義務だなこれは。

    • ゆーき本さん
      お味噌汁は豚汁が好きです(*´`)⟡.·
      お味噌汁は豚汁が好きです(*´`)⟡.·
      2024/03/17
    • shintak5555さん
      ゆうきさま
      要するにオカズになる味噌汁ですよね^_^
      単身生活だと、具沢山の味噌汁と納豆ご飯で朝メシ完了って感じですf^_^;
      ゆうきさま
      要するにオカズになる味噌汁ですよね^_^
      単身生活だと、具沢山の味噌汁と納豆ご飯で朝メシ完了って感じですf^_^;
      2024/03/17
    • Mayさん
      650ページもある大作を頑張って早く読み切ったのに、合わなかったと…それはショック(T-T)
      でも読み切ったのがすごいです。私なら諦めて投げ...
      650ページもある大作を頑張って早く読み切ったのに、合わなかったと…それはショック(T-T)
      でも読み切ったのがすごいです。私なら諦めて投げ出しちゃうかも笑
      2024/03/18
  • 15年にわたって連載されていたこちらの本、650ページ。長い!
    まさに長い船旅を終えたような気分。
    飯合梢は一体何者なのか?
    わかったような、わからないような。
    諸々すっきりしないのだけど、知らない間にこの本の世界にどっぷり引きずり込まれていた。
    引き続いて「夜果つるところ」も読んでみよう。

  • しみじみとしたいい小説。推理小説ではないときっちり分かって読むのが吉。
    すごーく分厚い小説。
    梢の思考で、小説の中より現実の方が変な人が多くてそれを小説に書くとリアリティがなさすぎると言われるというのがおもしろった。
    梢の人柄は好感が持てる感じ。

  • 15年のすばるでの連載が単行本になったもの。すばるでは読んでなかったので、初めて読んでみた。
    感想は、ひと言で中途半端。夜果つるところも併せて買って読もうと思っていたが、止めることにした。
    作中作であるなら、もう一冊2000円で買わせなくてもいいじゃない?
    ミステリということで読んでみたものの、何がミステリかも分からず最後まで読んでしまった。
    これが恩田陸ワールド。

  • 恩田陸さんの新作。ずっしりとくる本の重さに驚きながらも、内容の面白さにぐいぐい引っ張られました。

    作中作、『夜果つるところ』の「呪い」を巡る物語。
    作品に関わる人が次々と死に、2度も映画化に失敗したこの作品の不気味さの謎を解くため、関係者が豪華客船に一同に集まるところから始まる。

    呪いの正体とはなんだったのだろうか。そして浮かび上がる、原作者が誰かという謎。前半と後半の展開の仕方の違いに、まるで別の本を読んでいるような新鮮さを感じることができました。

    展開もさることながら、登場人物の本や映画に対する向き合い方もそれぞれ違っていて、ユニーク。

    『結局、人は自分が読みたいようにしか読まない。逆にいうと、自分の知識と経験の範囲内でしか読めない。(P530)』

    内容を要約してしまえば、この物語は大変シンプルになるかもしれませんが、この読み応えある文量にこそ、意味があるかと思います。

    人生を引っかく程度では、済まされない読後感をあなたに。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

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