ジヴェルニーの食卓

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715057

感想・レビュー・書評

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  • 原田作品らしい作品。フィクションを通じて絵画鑑賞の楽しさを深められる。他の原田小説に登場する「タンギー爺さん」に会いたくなる。

  • ア-ト小説の先駆者【原田マハ】が、印象派芸術家たちへの想い入れを紡いだ4篇のアート・スト-リ-です。『うつくしい墓』は、アンリ・マティスの<ヴァンスのロザリオ礼拝堂>とパブロ・ピカソの想い出を。エドガ-・ドガとメアリ-・カサットの師弟の想い出を綴った『エトワ-ル』。駆け出しの芸術家たちに愛された『タンギ-爺さん』は、ポール・セザンヌ宛の手紙で綴る印象派の画家たちことを。クロ-ド・モネが絵筆を執る<睡蓮装飾画>と『ジヴェルニーの食卓』を囲む家族の肖像は、眩い光と影が交錯する物語です。

  • 普段読んでる本とは全く違うジャンル。印象派の絵画が好きな私に、妻から勧められて読みました。

    4つのお話が収めらた一冊。どのお話も、フィクションですが、実在する画家の生きた時代の出来事や作品が登場し、ほんとうにそんなサイドストーリーが作品の背景にあったんじゃないか、と思わせる作風です。

  • 再読

    1番最初に読んだ原田さんの美術もの。
    やっぱり、少しくすぐったい甘ったるさがあるのだけど、
    この作品は嫌にならない絶妙な量。

    「美しい墓」を読んだらもう20年近く前にニースの
    マティス美術館に行った時のあふれる光が脳裏に蘇る。

    「ジヴェルニーの食卓」を読むと、いきたいと思いながら機会を逃してる
    ジヴェルニーへも、今度は行こうかなぁ…

  • 書かれた画家それぞれに、もっと残酷な現実も過酷な日常もあったと思うけど、その作品たちのように穏やかで美しい一時が綴られている。
    主題となる作品を見ながら、当時に思いを馳せて読む。

  • 美を追求する人間の見る世界や語る言葉を原田マハ先生が描くと、こんなにも鮮烈な色彩を帯びてしまうのね、と美の一端を垣間見れたような気分に浸れました。
    帯に書かれた「読む美術館」という言葉は、言い得て妙だなァ。素敵な修辞だわ。

    昨今、「驚愕のラスト!」だったり「全員が騙される!」だったり、センセーショナルな煽り文句が書店の平積みに散見されるけど、そんなビビッドな帯の中にこういう静かな言葉があると、かえって気になるものですね。

    うーん、大ドンデン返し系の帯が付いた作品には漏れなく手が伸びる人間が言えたセリフじゃないな←


    芸術を鑑賞する審美眼は、悲しいかな正直あまり持ち合わせてない自覚だけはあるのですが(笑)、芸術やその作品に触れた人間の機微を表現しようとする本作のセンテンスからは、確かに鮮やかだったり陰鬱だったりな色彩を感じることができたのは意外な収穫だったかなーと!

    本を読んでると、紙面に色が乗ることはままあるんですが、本作はその感覚が一層際立っていたのが心地よかった。

    印象派だから良かったのかしら。
    これがエコールドパリだったら、ちょっと輪郭がガチャガチャしそうだよねぇ(笑)。



    【自分の言葉で内容まとめ(ちょっといつもより時間かけて頑張ってみました!)】

    ◉うつくしい墓 La belle tombe

    「君は、どうしてその花瓶を選んだのかね?」ーー巨匠アンリ・マティスの問いかけに対する答えがキッカケで、彼の家で家政婦として働くことになったマリア。きっかりと手順が定められた折り目正しい奉公の日々を、静かな喜びを以って過ごす彼女に、ある日、主人の元をもう一人の巨匠が訪問するという知らせが入る。


    ◉エトワール L’etoile

    一瞬一瞬の躍動をキャンバスに留めることに苦心した画家、エドガー・ドガ。彼の絵に魅了され、影響を受けながら時に反発し、自らの絵を追求した女流画家、メアリー・カサット。ドガの没後、彼のアトリエから出てきた1つの少女像が、かつてパリの画壇で共に苦悩した時代の記憶を呼び覚ます。

    ◉タンギー爺さん Le Pere Tanguy

    芸術やそれを生み出すアーティスト達を愛し、とりわけセザンヌを愛した画商、タンギー親父。貧しい絵かき達の為に心を砕いた男の娘がセザンヌに送る、赤裸々で思いやりに溢れる書簡。

    ◉ジヴェルニーの食卓 Une table de Giverny

    広大なジヴェルニーの庭をこよなく愛したクロード・モネは、国に寄贈する「睡蓮の大壁画」の創作に苦慮していた。白内障を患い、愛する妻と息子を喪った彼は、創作に対する情熱を急速に失っているかのように見えたが…。
    彼の義理の娘であり生涯唯一の助手ブランシュと過ごす静かな晩年と、彼等の出会いから親子になるまでの過去の回想。

  • 有名な西洋画家4人について、それぞれ別の語り部たちが語ったもの。
    語られる画家はすべて男性。
    語り部は女性。
    ・・・となると、二人の関係は恋愛関係と単純に思いがちだけど、この本での関係はちょっと違う。

    最初の物語、「うつくしい墓」で登場するのはアンリ・マティス。
    語り部は彼の所で働いていた家政婦の一人である女性。
    この話からはマティスの暮らしぶりと彼の美に対する独特な感覚、ピカソとの交友がうかがい知れる。

    「エトワール」は踊り子の絵で有名なドガの物語。
    彼とモデルとなった14歳の踊り子の少女の様子をつぶさに眺め、語り部となったのはドガと同業の女流画家。

    「ダンギー爺さん」で語られるのはセザンヌ。
    彼の物語は、彼にあてた手紙の中で語られている。
    差出人はセゼンヌの行きつけの画材店の娘。

    「ジヴェルニーの食卓」はモネの物語。
    彼のことを語るのはモネの娘。
    と言っても、彼女とモネとは血のつながりはない複雑な関係。

    どの話も今の時間には画家たちは存在しない。
    彼らは語り部となる女性たちの追憶の中に存在し、そして生き生きと語られていく。

    どれも雰囲気のある作品だと思いました。
    盛り上がりや刺激には欠けますが、その分、静けさと独特な美の世界を感じます。

    とても上手に書いてると思いますが、いかにも日本人が西洋の世界を想像して書いた作品だと思いました。
    以前、とても筆力のある作家さんが同じように外国を舞台にした本を書いたのを読んだ時も全く同じように思いました。
    どこまでも日本人感覚というか・・・。
    内容が外国が舞台なのでそうなんだ・・・と思うような、そんな感じ。
    反対に、ちょっと感覚的についていけないような話を普段書く人が「これ、本当に日本人が書いた小説!?」と思うような作品を書いたりするのもあるし、こういうのって、文章力とは関係ないんだな・・・と思います。

  • 原田マハさんの本には、辛い経験をした人が元気を出すキッカケや希望が書かれているものが多いように思います。

    それがひとたび絵画をテーマにすると、全く違う著者の様な輝きを放ちます。衝撃を受けた【楽園のカンヴァス】。それから日本が舞台の本を読みそれなりに面白かったのですが、今回は特別。待ちに待った絵画をテーマにしている本を逸る気持ちで手にしました。

    読み始めは期待が大きくて、なかなか物語りに入っていけなくて何度も同じページを読み直しました。お話しは4編。いづれも有名な画家達と作品に纏わるものです。

    * うつくしい墓 *
    アンリ・マティスとパブロフ・ピカソの話しです。
    マグノリアの花と共にマティスに仕える事となったアリアが、ヴァンスの礼拝堂にて思い出を語る構成。マティスの実際のお墓はシミエにありますが、晩年自ら4年の歳月をかけて造ったヴァンスの礼拝堂が本当の意味での墓だと明かします。そして生涯をかけて仕える為に修道女となったマリア。そうした無償の愛も美しく感じました。南フランスに詳しいともっともっと楽しめそうです。

    * エトワール *
    女流画家のメアリーは、印象派のドガを母国アメリカに紹介した立役者。その彼女とドガと作品とモデルとの関わりでの構成。死後見つかったロウソクでできた像《十四歳の小さな踊り子》の秘話も興味深かったです。

    エドガー・ドガによる踊り子の絵はあまりに有名で、私の最も好きな絵画です。ドガの時代のフランスでは、貧困に苦しむ家族を救う為にバレエ学校に進み、パトロンを見つけ、やがてはエトワールになるという方法がありました。そうしたバレリーナを熱心に見つめ、目にとめた14歳のオペラ座の踊り子をモデルにした小さな蝋製の像を沢山作っていたというのを始めて知りました。

    いつかドガの作品を観にオルセー美術館に足を運びたいと思っていましたが、この秘話を読み、更に思いが深まってしまいました。

    * タンギー爺さん *
    セザンヌを始め、モネ、ピサロ、ゴッホ、スーラ、ベルナールもお世話になった画材屋の店主タンギー爺さんのお話し。タンギー爺さんの自画像はゴッホの作品としても知られています。貧乏な売れない画家達の絵と売り物の絵の具を交換してしまい、溜まりに溜まった絵の具のツケは表向きは売れたら返すという事になっています。それを黙認しつつ不満を募らせる妻と、落胆しながらもあたたかな目で見守っている娘。そのタンギー親父の娘からの視線で物語が進みます。

    タンギー爺さんは売れない画家達の新しい作品をたのしみに生きていて、なんとも楽天的な性格です。訪ねてきた画家達を無条件に受け入れ、絵の具をお土産に持たせるだけでなく、ワインや軽食を振る舞って美術話しに花を咲かせる毎日。そうしたところも愛される要素だったんじゃないかと思います。無数の絵を見てきた彼は、やはり無名だった画家ポール・セザンヌのリンゴの絵を特に自慢にしています。先見の明があったのがまたスゴイところで、もう一度セザンヌに会いたいと思いながらこの世を去ります。

    パリの画家には、力強い皆のパトロンがいたかと思うと、ほんわかした気持ちになります。以前観た三谷幸喜さん作の舞台に、ゴーギャンとスーラとゴッホの日常の描いた愉快な芝居があったのですが、それを思い出しました。

    * ジヴェルニーの食卓 *
    本の題名にもなっていますが、ここまでくるとスッカリ、原田マハ・ワールドに入り込んで読めました。巨匠クロード・モネのお話しです。

    モネに寄り添った後妻の娘で実の息子の嫁・ブランシュから語られる構成です。複雑とも言える2つの家族が狭い家で暮らし、徐々にモネの絵が世間で認められるようになり、理想の家を作ります。美しい庭に、光に満ちたアトリエ、花の彩りでこだわった邸宅。舞台はシヴェルニー。

    黄色で統一された明るいダイニングは家族が食事をとる笑いに包まれたスペースでした。近くの畑で日々収獲される新鮮な野菜と美味しい料理が並び、そこは理想郷のようなところです。

    死別や子供たちの自立で、最後に残されたのはモネとブランシュ。それから優しい使用人たち。無二の巨匠となっていたモネは国への寄贈契約した対策《水連装飾画》に取り掛かっています。しかし白内障を患い難航してしまいます。旧友やシヴェルニーの人に励まされ、白内障の手術と回復を待ち、もう一度気力を取り戻します。

    淡い色彩でなんとも和ませてくれるモネの作品達。それはきっと彼の人に恵まれた穏やかな日々から生み出されたのだと知る事ができました。


    それぞれのお話しは女性の視点から書かれています。感想を書くのにも久々にくたびれ、それだけ書き残したいという思いが強かった一冊です。もう一度読み返したらもっと深くなるかもしれませんが、それはまたいつか・・・。

  • カテゴリをミステリにしちゃったけど、どうなのかなぁ。
    『楽園のカンヴァス』と対になっているようで、視点は異質なのかな。
    こっちのスタイルの方が、通常のマハさんのスタイルに近いような気がする。
    取り敢えず思ったのは『楽園のカンヴァス』を読了しておいてよかったということ。
    この2冊はセットで読んだ方が絶対面白い。

    マティス、ドガ、セザンヌ、モネと、今となっては高名な画家たちを描いた連作短編集。
    それぞれの画家の晩年、しかも関わりのある人たちの視点で語られることで
    マハさんが持っているこの画家たちへの愛情、
    そして作品たちへの愛情がよりくっきりと描き出されていると思った。
    『楽園のカンヴァス』に出てくるルソーとも時代が被っている。
    この時代の、特にフランスの画壇がお好みなのかな。

    この感想を書き終えたら、
    まず最初にここに出てくる画家たちをWikiってみようと思う。
    印象派は個人的にあまり詳しくないので(ルノアールくらいしか知らない)
    逆に興味をそそられた部分もあるのだが
    どこかに寄稿されてたフェルメールの話も面白かったので
    19世紀末よりもっと前の画家の話もマハさんの筆で読んでみたいと思った。
    中世の宗教画とか、フランスやスペインの宮廷画家の話とか。

  • モネに少し近づけたような気がした

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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