逆ソクラテス

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717044

感想・レビュー・書評

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  • 読んで間違い無しの伊坂作品は今回も例に漏れず。
    ただ、読んでいるときは引き込まれるように読むものの、物語の内容の記憶はあまり長くは残らない。

  • 小学生を主人公とした、学校生活で起きそうな難しい問題を伊坂節でスカッと解消してくれる短編集。

    舞台は小学校生活だが、其処にはびこる問題の性質は大人社会にも十分以上に通ずるものがある。
    だからこそ、大人向けの小説として成り立つし、逆に悩める子ども達への何等か生きる指針にならないものかと、年ごろの子ども達にも是非読んでもらいたい。

    「一方的な主観のおしつけに対する”僕は、そうは思わない”」、「相手によって態度を変えるのはずるい」、「見た目で決めつけない」など、多くの大人がそのことの大切さを適切に説くことができない、それどころか逆の術をうまく使いこなすことで大人になっている節さえある高潔なポリシー。
    これらについて、正直者でも心乱さず毅然と生きていくための信念を醸成させてくれる。

    現実はそうはうまくはいかない。
    どちらかというと、あとがきで伊坂氏の言う”夢想家”の部分が色濃く現れてはいるのだろう。

    それでも正直ものがばかを見ない世の中の可能性を感じるのは気持ちがよい。

    2年前に「クラスの男子がろくにそうじをしない」と悔し涙を流して帰ってきた小6の娘におすすめしたところ、最初こそ全然ページが進まず、”だめかぁ”と思っていたら、いつのまにか『逆ワシントン』の終盤まで進んでいた。
    「おもしろい」と言っていたが、何かしら掴めたとよいのだが。

    しかし、伊坂氏、この路線続きで今後YA小説とか書いてくれないだろうか。
    市場がないかな。

  • 伊坂幸太郎さんが、小学生たちの社会に起こったことを描く短編集。

    後書きに書かれている「懐古的な話や教訓話、綺麗事に引き寄せられてしまう」「後味の悪い話にするのもあざとい」といったところに注意されていて、バランスのよい話たちと思った。

    子供らしい真っ当な言い分や考えから起こす行動もあれば、捻られた、ちょっと怖い感じもあったり、対する大人もよくわかった行動や言動もあれば、どうかなと思う人もいる。単純に純真でもなく、世間体的なことも考えれば、全て突破するようなこともする。とても子供社会っぽい。

    個人的に好きなのは、「スロウではない」「逆ワシントン」。「スロウではない」はちょっと追い込まれるような嫌な感じがあるが、最後の落とし方がハッピーなようでどうでもなくてという感じがよかった。「逆ワシントン」は、何かを信じて色々起こす子供たちの行動が楽しい。

    自分の子供の頃の気持ちであれば、こんなことが起こったら、こういうことありそうだなと思わせてくれる。そこがよいし、すごいと思った。



  • 「親だって、人間だ。」

    「単に、あいつは悪人だから崖から突き落として、消してしまえ、魔法や処刑で消し去るのはできないってことだよ。」

    「特別じゃなくても幸せにいきることはできるから。むしろ、特別じゃない方が幸せになれるんじゃないの?」


    ‪「人生って超大変なんだから。大人だって正解は分からないし、普通に暮らしていくのだって難易度高いんだよ。ゲームでいうところのイージーモードなんてないからね。」‬


    ソクラテスと言えば無知の知で有名ですが
    こんな言葉を残しています
    「知らないことを知っていると思い込んでいる人々よりは、知らないことを知らないと自覚している自分の方が賢く、知恵の上で少しばかり優っている」

    つまりは
    「最大の賢者とは自分の知恵が実際には無価値であることを自覚する者である」

    世の中の知識を全て網羅する人は存在しない
    自分の経験や知恵何てちっぽけなものです

    それに気づかず自分の築いた小さな城に
    立て篭もる「逆ソクラテス」ほど寂しいものはないと思います

    現代版ソクラテスの弁明

    「僕は、そうは思わない」
    敵は先入観、自分をひっくり返せ!!!

  • 出来ない子だと教師に決めつけられてたり、足が遅い事を足の早い女子に見下されてたりしているクラスメイトへの先入観をちょっとひっくり返してみよう!とさえない小学生達が奮闘する短篇集。その為のカンニング大作戦とかいかにも小学生の悪知恵だ!とにやにやだし会話の軽妙さも伊坂ワールド。登場人物の繋がり具合は今回は緩めかな。理不尽に翻弄されながらも「僕は、そうは、思いません」と言える大切さや「評判が君たちを助けてくれる」といった言葉が小学生に向けて語られているからか何時もより直接的に響いた。しんみりするものもあるけどやはりぎゃふんと痛快に締める話が好みだ。「アンスポーツマンライク」の「残り一分は、永遠」心掛けていきたい。

  • 初めて伊坂さんの本を読んだが、読後感はとても痛快で良かった。
    小学生から読める話だと思う。
    逆ソクラテスの話を読んで、自分の考え方が先入観に囚われていないか見直すきっかけになった。
    安斎くんかっこいい!安斎くんのような友だちが欲しいな。

  • 読みやすくってめちゃくちゃおもしろかったです!!5つのお話しの中で特に「逆ソクラテス」が良かった!
    小学生が主人公のお話しだったので、こういう女子いたなぁ男子いたなぁ〜っていう懐かしい気持ちになりました。
    逆ソクラテスの「僕は、そうは、思いません」はっきりしていて私も使ってみようかなぁなんて思ったり(^-^)

  • 伊坂さんの新作とのことで、即購入&読了。

    いやーーー、めちゃくちゃ面白かったぁぁぁぁーーーーー( ̄▽ ̄)

    読んでる時間、ずっと幸せでした( ´ ▽ ` )
    小説ってやっぱ楽しいなぁぁぁぁー(о´∀`о)

    終始笑いっぱなし、騙されっぱなし、ニヤニヤしっぱなし…
    そしてそれだけじゃなく、この先の自分の人生で大切にしたいなぁと思える言葉もあり。

    本作、伊坂さんの作品の良さが全て詰まっていると思います。

    お得意のエンタメ要素はもう増し増し盛り盛りです。
    巧みな構成・展開とウィットに富んだセリフ、そしてキャラクターの個性、やっぱり素敵ですねー。

    さらに、伊坂さん自身の人生哲学というか…
    そういったところも、今回の作品には表現されているのではないかと思いました。

    「デビュー20年目の真っ向勝負!」
    久々に帯に騙されなかったパターン( ̄∇ ̄)

    この感覚、久しぶりだなぁ…
    伊坂さんのファンで居続けて良かったなぁ…としみじみ(涙)

    またこのクラスの作品をバンバン読みたいなぁ…

    以下、それぞれの作品について。

    ●逆ソクラテス

    コレすんごい面白い。
    終始ニヤニヤです。
    面白フレーズも多数、特に「打点王氏」とかもう…(笑)
    「僕はそうは思わない」、すごく大切な言葉をもらった気がしました。
    たしかに、客観的な評価ができないものって、結局人によって感じ方が違うものだよなと。
    幼少期は自分も虐げられる側の人間だったので、けっこう入り込めたかも(笑)

    ●スロウではない

    こちらも軽快な文章、好きだなぁ…
    ドン・コルレオーネとのやり取り、めちゃおもろい。
    最終的なオチは「消せ」です。
    「足が遅い男子を馬鹿にする女子」とかも消されます(笑)
    由緒正しいデタラメ、素敵でした。

    ●非オプティマス

    人にとって重要なのは「評判」。
    人間として問われることは、法律・ルールブックには載っていないことが多い。
    他人に迷惑をかける人間は「自分たちだけでは楽しむ方法が思い付かない、可哀想な人」。
    伊坂さんの考え方が凝縮されている気がしました。
    個人的にはとても芯を食っている気がして…
    この先の自分の人生、そして子育てする上でも大切にしたい言葉だと思いました。

    ●アンスポーツマンライク

    熱いなぁ…スポーツ、バスケ(´∀`)
    スリリングな展開と、最初と最後のシーンのリンク、そしてアンスポまで繋がる展開…
    希望のある終わり方も含め、とても良い作品でした。
    実は「逆ワシントン」とリンクしてるところも最高です(*´꒳`*)

    ●逆ワシントン

    この話も面白い。
    正直者、真面目な人が得をする。
    個人的には「頼む教授、頼む自由研究」がツボに入って爆笑でした(笑)
    あと、なにせ前の話とのリンクが最高です。
    多少甘過ぎるぐらいのハッピーエンドが自分的には好きだなぁと。
    上手くいかないのは現実世界だけでもう十分( ´ ▽ ` )

    <印象に残った言葉>
    ・今まであちこちの学校に通ったけどさ、どこにでもいるんだよ。「それってダサい」とか、「これは恰好悪い」とか決めつけて偉そうにする奴が。で、そういう奴らに負けない方法があるんだよ。『僕はそうは思わない』この台詞。(P21、安斎)

    ・そしてその右手の拳部分には、これ見よがしに、包帯が巻かれている。(P46)

    ・打点王氏はチームの主軸として活躍し、充実した野球生活を送っていたため、心にも余裕もあったのだろうか、自ら執筆した子供向けの絵本を出版したばかりだった。(P48)

    ・先生、僕は。僕は、そうは、思いません(P59、草壁)

    ・お母さんは消さなくていいです(P75、司)

    ・ブタゴリラ君は、そんな綽名をみんなに許している時点で、寛大で、大物だよ。(P81、磯憲)

    ・申し訳ないが、あれは由緒正しい。正真正銘のでたらめだ(P91、磯憲)

    ・相手によって態度を変えることほど、恰好悪いことはない。相手が弱くて、力が通用しそうな時は、ビンタをするけれど、相手が屈強だったり、怖い人の子供だったら、ビンタはしない。そんなのは最低だし、危険だ(P159、久保先生)

    ・そういう意味では、一番重要なのは。評判だよ(P160、久保先生)

    ・そういう人に、君たちは困らされるかもしれない。迷惑をかけて面白がる人に君たちが、良くないよ、と言っても、彼らは変わらない。反省もしてくれないことが多い。だから君たちは心の中で、可哀想に、と思っておけばいい。この人は自分では楽しみが見つけられない人なんだ、と。(P161、久保先生)

    ・悪いことをすれば法律で罰せられる。スポーツのルールもそうだ。だけど、その法律やルールブックには載っていないこともたくさんある。法律には載らないような、ずるいことや意地悪なこともある。そしてね、人が試されることはだいたい、ルールブックに載っていない場面なんだ。(P161、久保先生)

    ・福生はにやけたまま、答えるために、すうっと息を吸った。(P168)

    ・もしアンスポーツマンライクファウルだったら、相手はフリースローが与えられた上で、さらにリスタートの権利がもらえる。そのことを僕は、男に伝えたくなった。(P227)

    ・はなはだ簡単ではありますが、これでわたしの掃除に代えさせていただきます(P235、母)

    ・子育ては初めてだし、何が正解なのかいつも分からないから、ほんと難しいよ。ただ少なくともお父さんは、自分が親に言われたり、やられたりして嫌だったことはやらないようにしているつもりなんだ。だから謙介も親になったら、お父さんたちの良かった部分は真似して、駄目だった部分はやめるんだぞ。そうすれば、ほら、だんだん完成形に近づいていくんじゃないか?(P246、父)

    ・頼むぞ〈教授〉、頼むぞ自由研究。(P251)

    ・さぞや素敵な方なんでしょうね(P270、母)

    ・違います。知りません(P275、家電量販店の店員)

    <内容(「Amazon」より)>
    敵は、先入観。世界をひっくり返せ! 伊坂幸太郎史上、最高の読後感。デビュー20年目の真っ向勝負! 無上の短編5編(書き下ろし3編を含む)を収録。<収録作>「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」

  • かがみの孤城を読んだ子どもたち、今を悩む子ども達、先生の集英社のインタビューも読みながら、伝えたいと思っておられる気持ちをキャッチしてどうか元気に育ってください。私も今予約済みでワクワクして読める日を待っています(๑˃̵ᴗ˂̵)

  • 伊坂幸太郎さんの作品はいつも通り肩の凝らないユーモラスな調子でやはり好きです♪
    これは5つの短編集でそれぞれはちょっとずつ何処かでリンクしています。
    「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」の5話、みんな深刻にならずに読めるけれど、ウーンと唸る部分も散りばめられていて一気に読了しておりました。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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