燕は戻ってこない

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717617

感想・レビュー・書評

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  • 女性ってすごいんだなぁと改めて思った。
    代理母だけでなく、経済格差、結婚してるかしてないかの違いによる世間の思う差など、いろいろ詰まった内容だった。

  • 貧困 生殖医療 ジェンダー
    それぞれの問題を独立した問題じゃなくて、絡み合った問題として描かれていた

    それぞれの立場でいろんなことを考える 自分には経験できないことを、読書を通して体験できた気になれるし面白かった

    ただ、登場人物の誰にも共感できない 感情移入できない
    気持ちの振れ幅が大きすぎてリキにも基にも悠子にも言動の一貫性がない
    現実の人間も、必ずしも言動に一貫性があるわけじゃないし、ましてや妊娠・出産の身体的にも精神的にも不安定な時には仕方ないのかな

    燕は戻ってこない 
    タイトルの意味は最後に分かった気になれるけど、リキかぐらか、どっちが「燕」?
    なぜ「燕」??
    草桶家には巣を作ったことないよね。。。?

  • 読み始めからページを捲る手が止まりませんでした!

  • おもしろいわ〜

  • 母性の深い所は、男性には辿りつけない部分です。

  • 女性の出産年齢がどんどん遅れ、子供を持ちにくくなったカップルが、生殖医療ビジネスに頼り、子供を授かるという話はこれから益々増えていくと思う。生殖テクノロジーは、恐ろしいほど発達し続けており、それに追いつかないのは、人間の感情と法律だけ。
    今後、お金に糸目をつけない人たちは、子供の容貌や能力さえも手に入る時代がきたら恐ろしい。

  • 一気読み!
    「生殖」や女性の体の「期限」問題だけではなく、色んな今の世の中の澱が描かれてる。本筋じゃないけど、男性の作家なら、絶対気づいてくれない銀チャリ男のエピソードとか、よくぞ拾ってくれました。
    桐野夏生は、私たちがかろうじて外に出さないようにしている常々抱えている不満や不穏な考えを、読み手にじわじわと思い起こさせる。そして、パチンと風船が割れるみたいに限界を迎えて振り切れてしまう人たちを描くのが、とても上手。
    「あっち側」に行ってしまった人たちは、もやもやを抱えつつも結局ぬるま湯から出はしない我が身の分身のように思えるから、引き込まれるのかな。
    今のところ非現実的な展開なのだろうけど、世の中の色んな立場の人の色んな考え方が描かれていて、特に裕福な人の視点の傲慢さと、若い上京組の経済的に八方塞がりの感じは、現実味があって迫力があった。

    自分のポリシーや立場に良くも悪くも固執するのではなく、色んな人と出会って色んな経験をして、考えが揺れ動きながら、人は生きていったらいいのかもしれない。ということを考えた、誰にも会わずに終えそうな週末。

  • 名前のセンス いいよ。

  • ノンストップディストピア小説とはよく言ったものだ。本当にノンストップで読んでしまった。主テーマは代理母、裏テーマは田舎から出てきた東京ワーキングプア女子だ。ワーキングプアとはまさにこのこと、という困窮っぷりで、それがリアルで、こんな作品が出てくるようになってしまった世の中では、安心して子どもなんて産めないなと思う。産み落とすまでも、肉体的・精神的に苦労が絶えずしんどいのに、その後の生活も保証されないのだから、そりゃ産めない。

    契約直後に契約違反をするリキ、蚊帳の外なのが嫌でペーパー離婚を本当の離縁にしようとする悠子、自分の遺伝子が残せて、可愛い我が子のまさに可愛いところだけもらえればなんでも良さそうな基、そしてめんどくさそうなプリマの姑・千味子。東京で限界生活をしているテルを頼りまくる貧しい日本人とタイ人とのハーフのソム太と鬱病のタイ人の母。はぁ〜ディストピア。

    最後、ぐらちゃんだけを連れていくのは、男尊女卑の社会への復讐だろうか。女は負けねえという、宣戦布告だろうか。解釈が難しいな。

    p.75 「ね、悠子は長いのと太いの、どっちが好きなの?なんかさ、太いと男根と言いたくなるけど、長いとペニスと呼びたくなる。そんなことない?」

    p.83 優子は口をつぐんだ。うまく説明できなかったが、自分は金額の多寡ではなく、自分たちが金を払って選ぶ、と言う行為がやるのだった。金を払うことになれば、結局はより良い卵子により良い子宮を選ぼうとするだろう。金額の大小は結果を生むからだ。それはどうせいである女の体を、金で切り刻むことにならないか。

    p.121 漠然と切りは、「間に合わない」とは、容色が衰える事かと考えていたのだが、ここにして、叔母は女の生殖能力の限界について言及していたのだ、と思い至った。生殖能力があることが、結局結婚可能の証だったんだ。叔母にとって結婚とは、すなわち、つまらない町からの脱出であり、経済的にも精神的にも貧困から逃れる術だった。そして、自分を期限切れになったから、姪のリキが無事に結婚して子を産み、幸せになるよう願って死んでいったのだ。今、自分は29歳だ。エッグドナーになるのは30歳未満だから、来年はもう「間に合わない」。確かに、女の人生には、「間に合わない」がついて回る。

    リキは、はす向かいに座る、悠子の穏やかな顔をそっと見遣った。佳子叔母をうんと垢抜けさせて、知的な眼差しにしたその人は、デザートのジェラート、1さじ口に運んでから、リキの視線を感じたのか、顔を上げた。この人も、「間に合わなかった」と断じられた人なのだ、とリキは思った。なのに、夫の基は、子供を育てあげるのにかかる時間のことを気にしている。女の限界と男の限界。なぜか悲しくなったリキは、青沼とバレエの話に興じている基を見た。まるで男根のような、長くて、太い首の上に小さな顔が載っている。

    p.210 しかし、期限付きとは言え、こうして結婚と言うものを経験してみると、独身女に対して、人妻と言う身分がどれほど楽で、恩恵を被っているのかが、よくわかったような気がする。夫がどんなに冴えない男だろうと、妻と言う身分を得れば、世間ではでかいことができるのだ。1人の男の所有物となった女に対して、世間が遠慮するからだ。もちろん、その遠慮は妻と言うよりは、その傍にいる夫に対して、である。リキの結婚指輪もどきをチラリと見た男たちが急に遠慮したり、あからさまにリキに一目置いたりするのには驚いたし、若い男が自分とは関係ない女だ、と知らん顔をすることも初めて気づいた。また、若い女の中には、そのくらいのことで威張るなよ、とむかついた顔をするものもいる。かつての自分もそうだった。結婚していて子供のいる女は、どこか上から目線で私たち独身女を見ているものだ、と言う憤懣(ふんまん)があった。しかし、今はむしろ、女の人生の完成が結婚によるものだと、世間がそう仕向けているのとわかる。独身女も人妻も未亡人も、男が中心となった位置づけなのであった。

    p.369 「私は子孫なんか作りたくないから。生物を生産したくないんだ。私はこの世にたった1人存在するだけでいい」「それで、私にお腹の中をすっきりきれいにするんだよ、と言ったんですね。でも、私、最近変わってきました。お腹の中で赤ん坊が動くと、不思議な気持ちになるんです。なんかかわいいんです。あと、危険かもしれないけど、子供を産める自分に酔ってる。何か自分がすごく価値のある、偉い人になった気分なんです」

  • 中盤から後半にかけてリキの心情や行動が胸糞悪かったので読み飛ばして読了。
    誰にも共感できなかったし、魅力的に思える人物が1人もいなかった。
    テーマとしては現代社会をとらえていて面白かったので、なんとか最後まで読めた感あります。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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